したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

VaMPiRe

167竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/07/15(日) 23:31:02 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 茜空の右目の眼帯を外したマモンは、思わずそのまま動きを止めてしまい、茜空の右目をじっと見つめている。
 信じられないものでも見るかのようなそんな瞳で。
「……オイオイ」
 マモンの声が僅かに震える。
 それは恐怖でも。悲しみでも。怒りでもない。
 ただたった一つの、簡単に言って済ませることの出来る『驚愕』だ。
 マモンが見つめている、茜空の右目は、

 ―――澄んだ紅い瞳だった。

 茜空の左目はオレンジに近い赤い瞳をしており、眼帯で隠された右目は紅に近い赤色だった。
 つまり、茜空が眼帯で隠していたのは『金瞳』ではなく、自分がオッドアイだという事実を隠していただけだ。
「……どういうことだ……ッ!? 何で、何でお前の右目は『金瞳』じャないんだよ……ッ!」
「……知りませんよ」
 すると、今まで戦意を失い抜け殻のように無反応だった茜空が口を開いた。
 赤と紅の瞳に生気が宿り、キッとマモンを睨みつけている。
「貴方が、勝手に僕が『金瞳』の所有者だと勘違いしただけでしょう? バーカ」

 グキッ、と茜空の肩が嫌な音を立てる。

「―――ッ!?」
 突然の痛みに茜空は声にならない悲鳴を上げた。
 マモンが、茜空が動かないようにとほとんど力を入れず踏んでいた肩に、今度は潰す勢いでマモンは体重を掛けていく。
「……ッたくよォ、これじャ時間を無駄にしただけじャねェか……ふざけんじャねーよ」
 更にゴキッ、と茜空の骨が悲鳴を上げる。
 既に外れているか、折れているかしているはずだ。そうでなくとも確実にヒビは入っている。
 茜空は量目に涙を溜めて、弱弱しい赤い瞳でマモンを睨みつける。
「あー、ダメダメ。そんな顔しても全然怖くねーよ。さて、と。さッきは殺さないッて言ッたけど……狸寝入りなんて臭ェ芝居しやがッて……俺様が燃やしてやるよ」
 マモンの右の手の平に碧の炎が球体として現れる。
 恐らくはこれで燃やそうという、そういう魂胆だろう。
「最後に、お前が生きるか死ぬかのチャンスを与えてやる」
 マモンが炎の球体を維持したまま、茜空に疑問を投げかける。

「『金瞳』はどこだ? 場所を教えれば、今回は見逃してやるぜ?」

 ―――見逃す。
 茜空はその言葉に、思わず釣られてしまいそうになった。
 だが、それじゃいけない。
 ここで自分が『金瞳』の在り処を教えてしまえば、『あの人』が危険に晒されてしまう。『あの人』だけは自分が守らなければいけない。
 自分の命と『あの人』の命。秤に掛ければ、どちらが勝つかなど考える事さえも無駄だ。
 茜空は、血が垂れている口を必死に動かし、言葉を紡ぐ。

「……知るかよ……! 自分で探しやがれ、薄汚ぇ欲望の塊が……ッ!」

「あー、成る程ネ」
 マモンは納得したように頷いた。
 そして、
「遺言ゴクローでしたッてなァッ!!」
 マモンの緑色の炎が茜空に向かって放たれる。
 ―――いいんだ。
 静かに、薄れゆく意識の中で彼女は小さく思った。
 ―――『あの人』が無事なら、僕はそれで―――。

 しかし、茜空の身体が緑の炎に焼かれる事はなかった。
 見上げれば、マモンは横合いから伸びている脚(もとい蹴り)を腕で防いでいた。
「……似合わないものだな、茜空九羅々。お前は―――」
 茜空に一度だけ聞き覚えのある凛とした声。
 赤く長い髪を靡かせた彼女は、続けざまにこう言った。

「電柱の上に張り付いているのが一番似合っているよ」
 凛としていて、しっかりと芯が通った声で。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板