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163竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/07/08(日) 20:36:27 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 霧澤と真冬は勢いよく階段を駆け下りて行った。
 走りながら霧澤は、ポケットの中から携帯電話を取り出してある番号に電話をかける。
 とりあえず、玄関の方から出たら登校してくる生徒と鉢合わせになったら面倒なので、校舎裏に回って電話の相手が出るのを待つ。
 その様子を見た真冬が、小首を傾げながら問いかける。
「……夏樹くん? 誰にかけてるの?」
「協力してくれそうな奴だ。今からもう一回階段上って教室に行くのは面倒だしな。
 霧澤の言葉で、真冬は電話の相手が誰か分かったらしい。
 『教室に行く』ということは、ここの学校の生徒だ。
 ここの学校の生徒で、『ヴァンパイア』の事を話せる人物など、二人しかいない。

『もーしもーし』
 気だるげな少年の声が帰ってきた。
 霧澤は確認のため、少年の名前を訊ねる。
「……朧月か?」
『じゃなかったらお前は誰にかけたつもりなんだよ。大体この時間ならお前もう学校いるだろ。わざわざ電話なんざしなくても―――』
 途中で朧月の言葉は止まった。
 霧澤が学校にいるのに、わざわざ電話という手段を使った理由が思い当たったのだ。
 そう、『ヴァンパイア』に関係する事だから直接的な会話ではなく、電話にしたのだ。
『―――話せ』
 朧月の声に真剣さが篭る。
 霧澤は短く『ああ』と返し、話の本題に移る。
「朧月。今お前の傍に白波はいるか?」
『涙? 何だお前。涙に用なら電話かければいいだろ』
「生憎、白波の番号しらないからな」
 そうか、と朧月は納得したように言う。
 朧月は白波がいる方向に視線を移し、『同じ教室の中にいる』と返す。
「だったら、変わってほしいんだが……出来るか?」
 朧月は再度視線を白波へと転じた。
 朧月は数秒彼女を見やった後、電話の質問に答える。

『悪いが無理だ。今のところ、涙は取り込み中でな。何でも騎士団と連絡中だ』
 騎士団? と霧澤が聞き返したが、朧月は『詳しくは赤宮に聞け』と返す。
 とりあえず変わるのは無理だ、と答え、何を伝えたかったのか朧月は訊ねる。
「薫が偶然茜空に出会って、マモンと戦いに行くようなことを示唆する置手紙が残されてたんだ。もしかしたら、もう戦ってるかもしれないんだ!」
『……成る程な』
 朧月は納得した。
『分かった。その事は俺から涙に伝えておく。お前らは先に探しに行け』
 男二人は、かつての呼び名でそれぞれの仕事任せる言葉を贈る。

「頼んだぜ、ばるっち」
『任せとけ、なっちー』

 霧澤は携帯電話をポケットにしまい、真冬へと視線を転じる。
「赤宮。お前、悪魔の出現場所ってどうやって特定してんだ?」
「え? あ、えっとね、それは悪魔が持つ魔力を探査して……どんな弱い悪魔でも魔力は持ってるから」
 魔力は『ヴァンパイア』も持ってるけど、と真冬は付け足した。
 なら、と霧澤は続けて、
「魔力を探査してくれ。二つの大きな魔力を」
「うん。出来るけど……私は覚醒型だから覚醒状態に入らないと出来ないよ?」
 そう言う真冬に、霧澤はフッと笑みを浮かべる。
「久々だな!」
 霧澤は腕を出した。
 『血を吸え』という意味だろう、真冬はこくりと頷いて、僅かに頬を赤らめながらかぷっと霧澤の腕に噛み付く。
 鋭い赤い目、刺すような長く赤い髪、そして悠然とした立ち姿。
 
 赤宮真冬が覚醒した。

「魔力を探ればいいんだな?」
「ああ。頼んだぜ」
 ニィ、と笑みを浮かべて真冬は霧澤の腰に手を回す。
「飛ぶぞ、夏樹。振り落とされないように、しっかりと掴んでいろ!!」
「ああ!」
 真冬は地面を強く蹴り、空へと飛び立つ。
 真冬に抱えられながら、霧澤は心であること願っていた。

(間に合ってくれ! やられるんじゃねぇぞ、茜空!)

 たった一人の、幼馴染(かなでざき かおる)の笑顔を守るために。


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