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空色の箱と零の花
5
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紫闇 梨桜
◆ptZpvaYoVY
:2011/07/20(水) 14:33:44 HOST:i118-16-154-61.s10.a021.ap.plala.or.jp
これが私の“日常”なんだ。お兄ちゃんの気が良くなる方を選択し、お兄ちゃんのご機嫌をとる。そう心の奥底で呟いた。
「おす、リンがこんな時間に部屋にいるなんて珍しいな」
家が隣であるため、輪廻が自分の部屋の窓を開けたらすぐに時雨がそこにいる。
時雨が輪廻の視線に気付きジッと見ていたノートを閉じシャーペンをおき窓をあけて言った。
暗闇に浮かび上がる二つの部屋の電気。あたりは電気もついていなくてここだけがきらびやかな世界のように映っている。輪廻は時雨の顔をみて、あははは、と笑って見せる。
「何だか眠くなっちゃってさ。もう寝るね!お休みっ」
語尾に星でも付きそうなくらい、向日葵のような満面の夏の日差しのような笑顔で言った。時雨は困った顔をしつつ窓を締めると「バカ……か。俺」と呟いた。
「これが私の日常なんだ。何も分からない、本当の“幸い”がなんなのかも、嬉しいことも悲しいことも、イライラするということも。今の女の子なら普通に出来る“恋愛”さえも。きっと私は……いつでもそう」
輪廻は時雨が窓とカーテンを締めたあとにもう一度窓を開け星を観察しながら呟いた。優しく、可憐で今にも崩れ壊れそうな笑顔で。それでも笑顔を保たせながら「ギリシャ神話の英雄で……なのに星で現すとなかなか見えなくて悲しい存在………。きっと“アレ”は私だね」と小さく呟いた。
小鳥遊 輪廻。誰からも愛され、誰からも信用され、誰からも人気になった少女。彼女の日常をきっと、儚くて脆くて壊れやすく、綺麗なものなのだろう。
6
:
紫闇 梨桜
◆ptZpvaYoVY
:2011/07/20(水) 22:40:10 HOST:i118-16-154-61.s10.a021.ap.plala.or.jp
*第一章†僕と君と空色のもの*
肌寒くなった十一月の冬の季節。辺りは既に雪に埋まった所もあって銀世界が広がっている。
窓の外をジーッと見つめ、しんしんと降る雪を見て「寒い、な……」と小さく呟く。輪廻は基本的に冬と夏、極端に暑くなったり寒くなったりするのが苦手で体調を壊すことも多くある。ケホケホと小さく咳き込むと、白いチョークを黒板に向け書いていたのをピタリと止めふと振り返る教師が「り……小鳥遊、大丈夫か?」と問いかけてきた。それは黒淵眼鏡をかけた、優であり「ぇ……と、あ、はい。大丈夫、です」と小さく縦にコクコクと頷く。
はぁっと小さくため息をついただけで白い息が出てくる。黒板に書いてある言葉をササッとノートに写す。
チャイムがなって、数学の教科書やノートをしまうために立ち上がるとふらりと輪廻の体が揺れた。周りから微かに短い悲鳴が聞こえ、女子に囲まれていた優が慌てたように駆け寄ってくる。焦げ茶色の髪も輪廻の視界に映り時雨かと考える。時雨は優と何かを言い合ってるようで時雨の怒鳴ったような声が本当に少し聞こえ、止めに入る学級委員の声も聞こえた。黙りこくった時雨が、輪廻を見て声を掛けた途端に輪廻は意識が消えた。
* * * * * * * * * *
僕はもうきっと間に合わない。
もう、心も体を刻みこまれ、みじん切りにされたキャベツのようになってるから。
それは……、優兄や時雨、クラスメイトとか……私を優しくて可愛くて信頼出来ると言って言い寄る人達、全員が僕の“敵”だ。
やめて。お願い。僕に近づかないで。優しいと、信頼出来ると、可愛いと…………好き、と言わないで!!
それが、僕を、私を、あなたを!!
駄目にしているのだから。
二度と近付かないで欲しい、と。
さようなら、と。
お互い頑張ろう、と。
僕がそう言うと悲しそうに微笑し、そっか、と言ったけど……きっと君は僕の本当の気持ちを分かっていない!!
* * * * * * * * * *
「だ………れ?」
「良かった……リン、起きたか」
輪廻のことをリンと呼ぶ唯一の人物、時雨かと思い安堵した表情を見せると「リン、このまま保健室にいるか?それとも、教室に戻るか?」と問いかけられる。小さく、弱そうな声で「まだ……ここにいる。時雨は帰っても、いいよ。迷惑かけたくないから………」とケホケホと咳き込みつつ言った。時雨の表情は輪廻には分からなかったけど「そっ……か。じゃあ俺、教室行くからな」と言い残し、座っていた椅子を丁寧に戻しガラリと保健所のドアを開けて教室へ帰って行く。
「やれやれ。これで二万三千一回同じことを繰り返している。そろそろ俺も飽きてきたんだが?」
男っぽい口調の割には、少し高めの少女のような声がした。ゆっくりとその声の持ち主の方を見ると、どこかで見たようなことのあるキラキラと光る白銀の髪を太股より5cm程度長くしているが踝より短くなってていて、赤いヘアバンドをしていて、右目白色、左目藤紫色のオッドアイの瞳を宿し白いYシャツに黄色のネクタイをし、薄肌色っぽいブレザーをきて黒いミニスカートをはいた附属高校の一年と思われる少女、翡翠 衣純(ヒスイ イズミ)が無表情に立っていた。
「あ……の、先輩? 二万三千一回同じこと………って……?」
「………時に、君は叶えたい願い事はあるか?」
「へ……? まぁ……あるって言ったらあるし、ないって言うと無いですし………」
「………受けとるか?この願いの叶う箱を」
衣純は無表情に淡々と告げ、空色の可憐な箱を取り出し、輪廻の前に差し出した。
7
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紫闇 梨桜
◆ptZpvaYoVY
:2011/07/24(日) 17:55:50 HOST:i118-16-154-61.s10.a021.ap.plala.or.jp
「私、は………」
困ったように呟くと、スッと箱の方へ手をやり、箱に触れるか触れないか、というギリギリのところで手を引っ込め、衣純の顔を笑顔を見て「私は……受け取りません。だって、願いは自分で叶えるものでしょう?」とやんわりと衣純の言葉を否定した。衣純はふん、と鼻で笑うとニヤリと言う擬音が似合いそうな笑みを浮かべ「しかし……君は取りにくる。だって“叶えられなかった”のだもの」と微かに呟いた。
衣純が出て行って数分、ふとここが保健室であることを思い出した。微かに漂う薬品、薬の匂いと、独特な全体的に真っ白な部屋。そろそろ帰ろう、と思い輪廻がスッと立ち上がったとほぼ同時に勢い良く扉は開いた。
金色の瞳をギラギラを光らせ、血のように赤く、赤黒い髪が何かで濡れたようになっていて全体的に真っ黒な服、真っ黒なコート、真っ黒なズボン、真っ黒な帽子……唯一言うなら手袋だけは真っ白、しかしどこか赤い部分があった。少年、と言うよりも二十歳前半の青年は低い声で「お前………所有者、だな?」と言った。輪廻が慌てたようにして質問に答えず後ずさりしていると、廊下の方面から「大丈夫か!?おい、一ノ瀬!?っ、小鳥遊先生も!!」と言う鬼風の叫ぶ声が聞こえる。輪廻は保健室の扉から真っ黒な青年に視線を写し「な……んなの?あなたが、やった……の?」となるべく冷静を装って言う。
「ああ、アイツらか。俺にどこ行くか聞いてきたから保健室つったら色々五月蠅くってな。殺っちまった。まあ半分くらい、だけどな?」
「あ、そうそう。俺、一ノ宮 如月(イチノミヤ キツキ)つーの」
如月と名乗った青年を輪廻はただただぼんやりと見つめる。何もかもを失った、と言うよりも最初から何もなかった、感情のない人形のような無表情で「すいません、どいて下さい」と告げ、スッと廊下に出た。鬼風と校医が時雨と優を見ていて廊下には血の酸っぱい臭いが漂っている。生徒と教師がザワザワと集まって来て、ひそひそと喋っている。
ゆっくりと、ゆっくりと倒れている優と時雨に近付いて行き、鬼風が止めるのを無視して近付く。目の前にきたらストン、とその場に座り「ね……ぇ、先生?」と輪廻が鬼風に問いかける。
「人間って……脆いものですね。私も、貴方も、時雨もお兄ちゃんも……。すぐ、死んじゃって、二度と生き返らない。だったら………人間なんて存在しはければ良いんじゃないですか」
その場に落ちていたナイフ二本を見つめて言う。鬼風は驚いたように目を見開いたとき、シュッ、と言う素早い音と共にホラー映画でありそうな程大量の真っ赤で紅黒い血が飛びでてくる。生徒の間では短い悲鳴が多く聞こえ、叫びながら逃げていく人もいる。
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