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MAGIC MASTER

19竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2011/08/06(土) 01:04:06 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第7話「友」

 ギルの怒りの矛先はカンナに向けられる。
 ギルは口から正体不明の液体をカンナへと飛ばす、突然の攻撃に身体が固まって動けないカンナ。しかしカンナがその攻撃を受けることはなかった。
 コウヤがカンナの前に立ち、背中でその液体を受けたからだ。
「ッ!?」
 コウヤの突然の行動にカンナは驚きで固まってしまう。ギルも同じだ。
 液体を受けた背中に軽い火傷を負う、濃度が低い硫酸だろうか。コウヤは僅かに顔を顰めるが、すぐに表情を元に戻す。
「こ……コウヤ、どうして…」
 カンナの声は震えている。
 自分のせいでコウヤが傷ついたからだ。
 そもそもコウヤが自分を庇うことが信じられなかった。普通なら、この状況でコウヤはカンナを蹴飛ばして回避させればいいものを、何故わざと攻撃を受けたのだろう。カンナは労わるような目でコウヤを見つめる。
 対してコウヤは気にもせず、
「いいか、カンナ。お前はとっととここから出ろ」
「コウヤは?」
 俺は、と呟いて変わり果ててしまった自分の友を見る。
「ギルを止める」
 カンナは自分も残る、と言いたかったが、その言葉を発することは出来なかった。
 それほどコウヤの目に覚悟があり、自分が干渉できるような領域ではなかった。これはコウヤとギルの『友達』同士の戦い。間違ってもカンナが混じっていい戦いではない。
 それでも、まだ踏ん切りがつかないカンナは、最後に確認するようにコウヤに問いかける。
「……ちゃんと、終わらせてね」
「たりめーだ」
 コウヤの返事を聞いて、カンナは小屋から出る。
 他人を護る、という今までになかったコウヤの行動にギルは不満の声を漏らす。
「何故ダッ!?何故アノ女ヲ護ル?ソコマデシテ、オ前ニ何カ利益ガアルノカ!?」
「損得の問題じゃねーよ」
 コウヤは腰に挿してある刀の柄に手を伸ばす。刃のない、刀の柄に。
「ただ見られたくないだけだ。俺が人を殺すのを…俺はアイツにだけは見られたくない」
「フン!!クダラン!!アンナ何処ニデモイルヨウナ女ニオ前ハ惚レタト言ウノカ!アノオ前ガ!!」
 ギルはコウヤのことを知っている。
 間違っても恋をするような人間ではないし、あんな馬鹿みたいな女を好きになるなど、絶対にないことだと知っていた。だからこそ不可解だった。
 対してコウヤは告げる。
「はは、かもな。アイツと会ってから、何故か俺は変わったと自分で思う。一人でいる時より自然に笑うことが出来るし、自然にイラッとすることもある。俺がアイツに抱く感情は、好きとか簡単なモンじゃねぇ」
 ただ、とコウヤは区切って、
「信頼だ。俺はアイツに裏切られたくない。人を殺して、それでアイツに遠ざかられたくない。ただそんだけだ」
 コウヤは刃のない刀を引き抜く。
 しかし、刃は既にコウヤの魔力によって作られていた。彼の『思念魔法(しねんまほう)』によって。
「終わらせてやるよ、ギル。俺が、お前という『友』を」


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