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鏡の国、偽りの唄。
93
:
月峰 夜凪
◆XkPVI3useA
:2012/04/07(土) 12:36:58 HOST:p24060-ipngn100102matsue.shimane.ocn.ne.jp
墜落。転落。落下。急降下……そう、なるはずだった。
「良いわけ、ないだろ」
晴間 輝が、潤の手を握っていなければ。
なんで、あんたが。そう驚いた表情の潤が言おうとしたのを遮って、輝はこう言った。
「君がいない街(セカイ)なんて、僕にとって何の意味も無い」
――君がいない学校なんて、行く意味が無い。
以前輝が口にした言葉と似たものだった。冗談としか聞こえなかったあの時の言葉だが、彼からすれば真面目な、そして素直なだったのだろう。
「なんでそこまで……あたしはッ! あんたの人生まで狂わせてたってのに!! それなのに、なんでッ……、」
「なんで、って?……決まってるじゃないか」
輝は握っていた潤の手を引き、彼女の震える身体を引き寄せ、抱きしめる。強く、壊れないように。
「君を――誰よりも愛しているからさ」
そして、輝は何百回、何千回と紡いできた愛の言葉を唄った。
潤は何も言わない。ただ、彼女の息を吸う音だけが彼の耳に入った。
「僕が憎ければ、今すぐここから突き落としてくれて構わないよ――それで君が幸せになれるなら、僕は本望だからさ」
同時に、
僕の役目も終わる、と。そう言って輝は、潤から離れ、手を広げる。笑顔のまま――金色の瞳から、一筋の涙を流しながら。
「……なれない、」
潤の口から、微かな声が漏れる。
「あたしはあんたから何もかもを奪った。それをあんたに全部返さないと、あたしは幸せになんかなれない。なっちゃいけないんだよ。――あんたを殺すなんて、もっての外(ほか)だ」
だからあたしは、と続けようとした潤に、輝は「いらないよ」と言った。
「僕の今までの人生なんていらない。奪ったとか、返そうとか君はそんなこと考えなくていい。……僕は充分幸せだよ。君が生きていれば、それで」
冷えきった潤の頬に輝は自身の手を当てると、優しく微笑んだ。
「ただ、一つ欲しいものがあるんだ」
そして、輝は。
最愛の人に、最初にして最大の『願い』を言った。
「明日、僕の隣にいてほしい。明後日も、明明後日も、その次の日も――そんな、君の隣で過ごす『日常(これから)』が、僕は欲しい」
――潤は驚き、目を見開く。さらにこみ上げてきた涙に耐えるように、目元を手の甲で擦ると、右手を差し出した。
「……カラコン、」
こっちに渡せ、という意味なのだろう。予想外の言葉に輝は目を丸くしつつも、カラーコンタクトを彼女に渡す。
「――――!?」
びゅん、と。
彼女は振りかぶり――それを、街の方へと投げ捨てた。
「――それなら、輝。あたしに嘘は絶対つくな。明日も、明後日も、明明後日も、その次の日も。ありのままの『晴間 輝(あんた)』でいろ」
屋上から落ちていく彼の『嘘』。そして、それが見えなくなった所で、潤は輝に向き直った。
「それが――あたしの答えだ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
結論で言うと、潤さんは不器用なんでs((
ちなみに次は『潤&輝編 後日談(エピローグ)』です。
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