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鏡の国、偽りの唄。
36
:
月峰 夜凪
◆XkPVI3useA
:2011/10/24(月) 16:33:46 HOST:softbank221085012009.bbtec.net
ギィ、という重々しい音と共に扉が開く。数え切れないほどのパソコンと奇妙な色の液体が入った培養機がやたらと目を引く、漫画の中から飛び出してきたかのような研究室。そこに響くのは無機質な機械の音だけで、人の姿は見当たらない。華魅は焦ったように周りを見渡しているが、碧は至って冷静だ。何故なら――
「あれー、きりさきくんー?」
のんびりとした幼い声が聞こえたかと思うと、色素の薄い茶髪をサイドで三つ編みにした10歳前後の少年が、大量に積まれている書類の陰から顔を出した。顔自体は幼いが、羽織っている白衣は不思議と彼に馴染んでおり、違和感をあまり覚えない。
「がみ、お前動物は専門外か?」
「わぁ、唐突だねー。まぁでも、何度も診てきたから大丈夫だよー」
『がみ』と呼ばれた少年は目を擦り、あっさりとそう言った。しかし、華魅にはその言葉の意味が理解できなかった。それもそのはず、見た目10歳前後の少年が「自分は医者で、今まで診察した事がある」と取れる事を言って、そのまま鵜呑みに出来る者がいる訳が無いのだから。
「あ、おねえちゃんの方は初めましてだったよね。ぼくは玄行 架神(ゲンギョウ カガミ)。――『ぼく』の前の『僕』の研究がやっと『上の人』に認めて貰えたから、一応記憶を引き継いでいるんだ」
『上の人』。それはクローンを生み出す際に記憶を引き継ぐか否か判断したり、住人達の情報を管理している『機関』の人々の事だ。碧だけでなく、この街の住人の殆どが『機関』どういった事をするのか詳しくは知らないが、取り合えず先ほど挙げた二つの事くらいは知っているらしい。
そして、今こそは研究員だが、架神の前のクローンは医者で、彼はその知識や技術を引き継いでいるという事だ。見た目は子供で、内面は大人なんて、まるで某名探偵のようだ、と碧は彼に会うたび思う。
――数分後、診察を終えた架神は、華魅の目を見ると、
「――大丈夫、すぐに良くなるよ」
にこり、と微笑みながら告げた。その表情は幼いものだが、どこか医者としての貫禄が垣間見えた。
「良かった……ありがとうございますっ……!」
安心した華魅は力が抜けたようにその場に座り込み、アメジスト色の瞳から涙を零した。
「お礼なんて良いよー、はなみちゃん。――でも、こんなに愛されてるなんて、この子も幸せ者だなぁ……、きりさきくんが嫉妬しちゃうよー?」
寝息を立てている子猫の頭を優しく撫でると、架神はいたずらっぽく笑って碧をちらりと見る。そんな架神に碧は、「……そんな訳あるか」と小さく呟いて呆れたように彼の頭を軽く小突く。
――――その刹那、研究室の奥の扉の向こうから、何かが倒れるような音が響いた。
「……きりさきくん、はなみちゃん。診察代はいらないから、一つ頼まれてくれないかな――」
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