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鏡の国、偽りの唄。

25月峰 夜凪 ◆XkPVI3useA:2011/08/05(金) 13:50:39 HOST:softbank221085012009.bbtec.net

 「……いや、俺は知らんな」

 服に付いた桜の花弁を取ると、碧はそう答えた。風と共に花弁は碧の指から離れ、宙へと舞う。そんな様子を見ながら歌留多は「知ってるとか知らないって言う前に予想ぐらい立ててくれてもいいんじゃないかしら。 90%とか100%とか」とどこか不服そうに言った。それなら、とでも言うように「じゃあ、100%?」と碧は首を傾げた。

 「残念、不正解よ。一般的には80%……八分咲きね。つまり今日よ」

 スッ、と歌留多は向こう側を指差す。碧が彼女の指差した方向を見てみると、見事なまでに咲き誇る薄紅色の桜並木が瞳に映った。――ああ、たしか昨日祀木が言っていたな、今日辺りが満開だと。そんな事を考えながら、碧は桜を見つめる。と彼は歌留多の方へ向き直ると「お前なら花言葉とかも知ってそうだよな」ひとりごとのように呟いた。そんな女子が知りたがるような事をいつも冷めている彼が言ったのが意外だったのか、彼女は驚いたように目を一瞬見開くと、クスリ、と微かに笑みを零した。実際碧はそこまで知りたい訳では無かっただろう。ただ、完全でありながらも、どこか儚げな印象を与える桜が、華魅と妙に似ているように感じたのだ。何故こんな事を思うのか彼には分からないが、昨日の彼女の優しく綺麗な笑顔が忘れられなかった。

 「ええ。ただ、種類は覚えていないのだけれど、取り合えず覚えているのなら……『優れた美人』『しとやか』『清純』と言った所かしら」

 驚くほど彼女に当てはまっていた。いや、碧が知っているのは彼女のほんの一部に過ぎないのだろうが、それに見事に当てはまったいた。すると歌留多が何か思い出したらしく、「ああ、後もう一つあったわね」と続けた。

 
 「『あなたにほほえむ』、ね」

 
 一瞬、碧は時間が止まったような錯覚を覚えた。確かに歌留多が最初に言った花言葉も当てはまっていたが、何よりこれが一番当てはまっている気がしたのだ。
 目を閉じると思い浮かぶ、華魅の笑顔。俺の目はカメラか何かか? そもそも俺ストーカーじゃないですか? と誰かに聞きたくなるほどはっきりと覚えている彼女の笑顔。

 「……全く、馬鹿げてるな」

 碧は頭に手を当てると、はは、と自虐的に笑う。

 
 どうやら碧は、祀木 華魅の事を――――になってしまったようだった。

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理由があってPCが使えるのは今日までなので、明日から暫く更新できないかと思います。
いつになるかはわかりませんが、また使えるようになったら戻ってくる予定です。ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。
そして、ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございました。


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