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羊の戸惑い

119 ◆uXwG1DBdXY:2011/09/22(木) 15:23:04 HOST:KD027082037068.ppp-bb.dion.ne.jp

< *白い病室の中/side*千佳 >


真っ白な病院、ざわめく話し声を耳に入れながらゆっくりと足を動かす。
震える体を抑えつけ、目を覚ました先輩の病室までの道のりを歩く。けれど心の中では、行きたくないと拒みたかった。

何時までも隠しきれる話じゃない。
恭子が落ち着いたらきっと先生や家族は先輩のことを話すはず、離さなきゃならない、それは私にだって分かってる。
けれどそれはあまりにも、残酷だと思う。

目の前を歩いていたナースの足が止まり、病室についたことが分かり震えが強まる。


「……せ、せん、ぱい…?」

病室の扉を開くと音に気がついて男の子が振り向いた。部屋にはその男の子しか居なかったからその男の子が先輩であるのは当たり前だけど、私の口から出た言葉には疑問符がついていた。
なぜならその男の子は先輩とはあまりにも似ていない姿をしていたから。

ぼさっとした短めの赤い髪、その一部は白く染められ他の髪よりも少し長く方を過ぎるぐらいまであった。
瞳は先輩と同じ釣り目だったけれど色は髪よりも少し濃い赤色で、何時も付けている筈の眼鏡も無い。
だけど、男の子の浮かべる微笑には何処かで見たことがあると感じた。

「はは、ばれちゃったなあ…。いつものあれ、作ったキャラなんだよ」

へらりと笑う男の子の声はやはり聞いたことのあるもので、それは確かに先輩の声だった。
作ったキャラと聞いたときは一瞬驚いたが、一度か二度、恭子とこの男の子の容姿と似たような容姿をしている男の子が一緒にいたのを見かけたことがある気がする。
何時もの先輩からはあまり考えられない明るくて、少し悪戯好きというような少し子供っぽい、でも頼りがいのありそうな印象のある男の子で、納得ができた。


「……あ、あの、私のこと、知ってるんですよ、ね」
「少しなら。ええっと、花巻千佳さんだよな?」
「はい…じゃ、じゃあ、私の友達の…恭子、って言う子…は」

「詳しくは知らないな、名前と、後そこの白花さんの後輩ってことぐらいしか…」


その言葉を聞いた瞬間、涙が溢れそうになった。

やっぱりそうなんだ、記憶が、無いんだ。
そう痛いほどに実感して、自分のことでもないのにどうしようもなく胸が締め付けられるように痛みを感じて、息をするのさえ忘れてしまいそうなぐらいにいたくて、


「…そう、ですか、…ご、ごめんなさい、変な事聞いちゃって」

泣かないように意識して笑うしかできなかった。
涙をこらえるのが精一杯で震える声を何とかして誤魔化すしかなかった。

「いや…他に何か用は?」
「あ、え、えと」

確かめたかった。
記憶が本当になくなってしまったのか、どうしても信じられなくて確かめようと思っていたから、他に何かあるわけじゃなくて、でも素直に記憶が無いのか確かめたくて来たなんていえるわけでもなくて言葉が詰まる。


「あとどれぐらいで授業に出れるの?」

戸惑っていた私の肩を軽くぽんと叩くと先ほどまで黙っていた部長が喋りだす。
安心した小さく溜息を吐き、自然な仕草で一歩後ろへ下がる。

「あと一週間はかかんじゃねぇの?」
「そう、これ以上頭が悪くなってたらまた一年からやり直しかしら」
「ひっでー…」


「あ、あの、私用事思い出しちゃって…先、戻ります」
「あ、ああ、そう、分かったわ」


病室のドアを閉め、廊下を早歩きで抜けていく。
騒がしさは先ほどと変わらず、変わったのは、私のココロだけ。



私だけ、


-

(中途半端で申し訳ない…!次の次辺りに恭子と咲夜兄さんを会わせられたらいいなあ、)


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