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剣―TURUGI―
329
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/09/14(金) 19:19:11 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
河川敷で金属と金属がぶつかり合うような、ずっと聞いていたら耳が痛くなるような音が響いている。
いるのは二人。
一人はメルトイーア、通称メルティ。彼女は十六歳の姿で、身長よりも長いハルバートを両手で軽々と振り回している。
もう一人は切原魁斗。彼は二本の刀『祓魔の爪牙(ふつまのそうが)』で、メルティに必死に対抗している。
すると魁斗が押し負け、後方へと飛ばされてしまう。地面を数回バウンドし彼は呻きのような声を漏らした。普通なら相手を休ませるためにここで止めてもいいのだが、メルティはそんな甘い考えをしてなどいなかった。
「ほら、立て! カイトくん『十二星徒(じゅうにせいと)』を倒すんでしょ!? 奴らならここで止まらない、さらに追い討ちをかけてくる! 死ぬ気でいかなきゃ本当に死ぬよ!?」
魁斗は今自分の守りたいものを思い浮かべる。
たくさん出てくるが、まず出てきたのは仲間だ。
レナ、ハクア、桐生、藤崎、メルティ、フォレスト、沢木、そしてエリザやザンザ、カテリーナ達元『死を司る人形(デスパペット)』のメンバー。魁斗は彼らを思い浮かべ、ポツリと、
「……負けらんねぇよな……」
彼は呟く。
きつい言葉を浴びせるメルティも、相手を思っているからこそ口から出る言葉だった。
魁斗は一本の刀を杖のようにして身体を支えながら立ち上がる。彼女の言葉が励みになったのか、彼の瞳に再び闘志が宿る。
その表情に満足したのか、メルティは再びゆったりとした動きでハルバートを構える。
しかしそこへ、
「あ、見つけました! 天子さん、メルティさん!」
僅かに聞き覚えのある控えめそうな少女の声が聞こえてきた。
魁斗を『天子』と呼ぶのは天界の人間。天界出身で控えめそうな顔馴染みの人物。一人しかいないのだが、魁斗には名前が思い出せなかった。
振り返ると、そこにいたのは肩までの赤髪にアホ毛が真下に垂れ下がっている、十歳前後に見える少女。
魁斗が名前を思い出そうとしていると、名前を覚えていたメルティが彼女の名前を呼んだ。
「ありゃ、ルミーナちゃんじゃん。人間界に来るなんて、一体どしたの?」
ああ、そんな名前だった、と魁斗が納得し、ルミーナの言葉に耳を傾ける。
彼女は息を切らしており、急いでこっちに来たことは一目瞭然だ。一体どうしたんだろう、と魁斗とメルティが思っているとルミーナの口からとんでもないことを告げられた。
「い、今すぐ天界に来てくれませんか? ザンザさんとエリザさんが敵に襲われて重傷なんですっ!!」
「な……っ!?」
その言葉に魁斗とメルティは目を大きく見開き驚愕した。とりあえず、彼女の言うとおり二人は一度天界へと向かうことにした。
ルミーナの先導に従い、二人は目的地へと走っていく。
魁斗とメルティは走りながらルミーナの言葉を聞いていた。
「……実は、天子さんが葛城獅郎と戦うまでの七日間を無駄にしないために、私達は私達で敵のアジトを掴もうと手分けして探そうとしたんです。それで、二人の帰りが遅かったから探しに行くと、ゲインさんが傷だらけの二人を見つけて……」
なるほど、とメルティが納得したように言う。
魁斗は走りながら、ルミーナに質問した。
「二人が襲われたのって、二人でいたからって理由なのか?」
「……真偽は定かではありませんが、直結はしてると思います。あと、エリザさんが仮にも私達の司令塔だから、とも考えられます」
理由を聞いたメルティは、
「理由としてはそっちが大きそうね。このことを他の人間界の人達には?」
「伝えに行ってもらってます。桐生さんと藤崎さんのところへはカテリーナさん、沢木さん達のところへはゲインさんとクリスタさんが。必ず戻ってきたら皆を連れて、フォレストさんの家に集まってと言ってありますから、大丈夫です」
そう言っている間に、見覚えのある家が見えてきた。
目的地である、フォレストの家だ。
330
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/10/12(金) 22:57:41 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
「ザンザ!!」
魁斗はフォレストの家の扉を勢いよく開けた。
そこには身体に包帯を巻いて、無理矢理に身体を動かそうとしているのを止めているフォレストがいた。
魁斗の到着に気付いたフォレストはほっとしたような、安心した表情を浮かべ、それに反してザンザは小さく舌打ちをした。
全快ではないだろうが、とりあえず無事でよかった。魁斗は心から安心すると、
「おはようの挨拶は、必要か?」
「見りゃ分かんだろォが、馬鹿」
とりあえず、いつものザンザでよかった。
とりあえずザンザを上の階でエリザと一緒に寝かせ、魁斗とメルティはフォレストの話を聞くことにした。
しかし、彼女自身も他人から話を聞いたので、詳しくは分かっていないらしい。こういう時に第一発見者であるゲインがいればいいのだが、彼は現在人間界のメンバーを呼んできているところだ。まだ帰ってはこないだろう。時間を無駄にしないために、とフォレストが説明役をしてくれた。
彼女は二人の前にお茶を出し、向かいに座ると話を始めた。
「まず犯人の方ですが、当然というか……まだ情報は掴めていません。ザンザさんとエリザさんの傷口を調べたんですけど……」
フォレストが言いにくそうに言葉を切る。
その様子にメルティは眉をひそめて、
「……けど、何よ」
「はい。二人の傷口は全くの別のもの。つまり、二人は違う人間にやられたということです」
「ッ!?」
魁斗とメルティが言葉を失った。
フォレストは続ける。
「ザンザさんからはエリザさんと同じ傷口が見られましたが、彼は他にも違う傷口がありまして。それはおかしなことに、エリザさんの『剣(つるぎ)』と一致していたんです」
「……どういうことだよ?」
「こういうことよ」
よく理解できていない魁斗に、メルティが説明する。
「エリザとザンザを倒したのは、恐らく同一人物。あの二人を一人で相手取るのは相当難しいだろうけど、同じ傷口があるってことはそう考えるのが妥当。そしてあの二人がやられるってことは、仲間割れでもした……とか?」
ザンザにはエリザの『剣(つるぎ)』で傷つけられたと思われる傷がある。しかし、フォレストは捜索に向かう前は仲が悪いようには見えなかったと語っている。真相は謎のままだ。
すると、フォレストが思い出したように手紙を差し出す。
その紙に書かれていたのは英文だ。英語が全く出来ない魁斗には読めず、メルティも首を傾げていた。フォレストも読めなかったようだ。
すると、後ろから声がかかる。
「『約束は破るためにある』って書かれてるんだよ、それ」
後ろから言ったのは桐生仙一だ。
やはり、彼にかかれば英文の解読など楽勝だったのか。
「これは挑戦状だよね?」
桐生の後ろにいた藤崎がそう言う。
彼は小さく頷くと、
「切原くん。もう時間はない。彼らは、七日も待ってくれないかもしれない」
331
:
一護/泪/恭弥/当麻/高塚凛/亜梨子/安心院紅羽/疾風やみゆ
◆u7pJ1aUXto
:2012/11/09(金) 21:45:18 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第七十八閃「鬼再び」
魁斗とメルティはゲインとクリスタが呼びに行ったレナ達が来るより早く、人間界へと戻り修行を再開していた。
敵がエリザとザンザに重傷を負わせ、挑発的なメッセージを残した。これ以上誰にも傷ついて欲しくない魁斗は一刻も早く強くなる必要があった。しかし、強さとはそう簡単に手に入るものではない。彼が今まで戦ってきたザンザやエリザ、ディルティールだって血の滲むような努力をしてきたに違いない。
こういう時に思い知らされる。
自分は本当にまぐれのみで勝ってきたのだと。
今魁斗の目の前にいるのは修行の相手であるメルトイーア。彼女は伸びをしながら軽く体操のような動きもしている。
彼女はハルバートを軽く片手で振りながら、
「カイトくん、再開するけど準備はおっけー? ダメでもやるけど」
魁斗は二本の刀を真っ直ぐに構えて、
「ああ、来い!」
瞬間、メルティの姿が視界から消える。
自分の目を疑った刹那、メルティが背後に忽然と現れ、鋭い膝蹴りを魁斗のこめかみにヒットさせる。
魁斗の身体は横向きのまま三メートル程飛ばされ、彼のこめかみから頬にかけて一筋の血が伝っている。
彼は苦しい表情をしたまま刀を杖代わりに立ち上がる。
再び視界に移したメルティは腰まで銀髪を伸ばした、まだ見たことの無い年齢のメルティだった。
「二五歳。今私がなれる年齢の上限だよ。気ィ抜くと『アイツ』がまた出てくるから、本当は使いたくなかったんだけどな。カイトくんに『アイツ』の私見られるの嫌だし」
アイツ? と魁斗は首を傾げる。
彼が知らないのも無理はない。彼女の言う『アイツ』とはキルティーアとの戦いで『時の皇帝(タイムエンペラー)』の暴走により出現した、なれる年齢の上限を超えた二八歳のメルティのことだ。
彼女はあの時の、二八歳の自分の出現に恐れ、年齢を上げるのにかなり抵抗していた。だが、
(今までに無い以上に向上心を見せてる。だったら私も協力しなくちゃね! 私が気を抜かなければいいだけだもん! きっと、カイトくんなら大丈夫!)
魁斗とメルティの修行が再開した。
一方で、ゲイン達が連れてきたレナ達もエリザとザンザの容態を見るなり、ホッと一安心して帰ってしまった。
ザンザは面倒くさそうに溜息をつきながら、
「チッ。何で怪我人なのにアイツらは容赦っつーモンがねェんだ!! これじゃ回復しようにも出来ねェぞ!!」
「まーまー、大勢でお見舞いに来てくれたんだし。私はよくなる気がしてきたよ」
ザンザはもう一度舌打ちをした。
エリザは子供を見てるような親のように笑って見せた。
その様子を見ていたフォレストは壁に背を預けながら、
「とか悪態ついて、実は超嬉しかったりするんでしょ? あー、もういいです。その面倒くせぇツンデレは」
「ざっけんなッ! 何で俺がアイツらが来た程度で喜ばなきゃ―――ッ!」
叫んだザンザは傷口が開いたのか、腹を押さえながらベッドの上で悶える。
「怪我人は大人しくしててください。ちっとはエリザさんを見習えです」
エリザはきちんと布団をかぶって寝ている。怪我人というよりは病人に見えてきた。
ザンザはもう一度舌打ちをした。
「……逆に安心は出来たがな。アイツらの顔見てよ」
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