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係争の異能力者(アビリター)

268ライナー:2012/01/07(土) 22:46:36 HOST:222-151-086-019.jp.fiberbit.net

 この関西弁を聞くのは久々だった。と言っても、良い思い出があるわけではない。ユニオンに潜り込み、チームメンバーを騙すどころかメンバーの1人「城嶋 煉(じょうじま れん)」を殺した少年なのだ。
「熱也……お前……」
 啓助は、これ以上言葉が出なかった。こんな微妙な関係の人間にどう接すればいいのか、分かるはずもなかった。
「お互いお知り合いだしサー」
「どうせ来ちゃったんだからサー」
 双子は、1人の人間が喋るように軽やかに声を繋ぎ言った。
「「君達で組んで、僕(私)らと戦わない?」」
 その言葉は、恐怖に満ちていた。
「ゲーム感覚で戦闘語ってんじゃねーよ! 絶対にぶっ倒す!!」
 剣の柄を握り締め、気迫のある声で啓助は叫ぶ。
 そんな言葉は怖くない、双子はそう言うように目付きで表現してきた。
「そりゃ、ゲーム感覚だよ」
「だって僕達、ここにランダムに人連れて来て―――」
 そして、双子は同時に言い放つ。
「「ぶっ殺してるんだもん!」」
 これが、外見小学校中学年の双子が言う台詞だろうか。あまりにも血に飢えすぎている。いや、<キルブラック>陣位総司令隊長補佐の双子だから言える台詞なのだろう。
「ま、大体は下っ端スカウトだけど」
「実力のない奴は殺すだけだし」
 この2人の言っている言葉は、家庭内暴力を言動で引っ繰り返す力があるように思えた。何とも、平和を偽ったような瞳をしている。
「にしてもさー、「陣位装(ジェネラルサークル)」の4人打ち破ってくれたよね、ま、来待ちゃんはさっき見て貰った通りだし、赤羽ちゃんも生きてるけどね」
「ナッ……!」
 赤羽はまだ<キルブラック>にいたのか、啓助は正直驚いた。2回も作戦を失敗したくせによく居たものだ、啓助は同時にそう思う。
 それよりも、「陣位装(ジェネラルサークル)」がこれまで戦ってきた赤羽、来待、沙斬、遠尾の4人を差すものだと啓助はすぐに感付いた。
「ま、どれもこれも道具に過ぎないけどね」
 黒明は呟く。
 すると、それを訊いた啓助は自然と青筋が立つのを覚えた。
 赤羽、来待、沙斬、遠尾。どの人物とも、その戦いは苦しいもの。啓助は戦いの常と知りながら、殺したことに後悔もした。
「(なのに、それなのに、ど、道具だと……!)」
 啓助の中で、怒りが込み上げた。
 戦闘にとって、兵などは確かに消耗品に過ぎない。しかし、それを仲間と呼んでやらないのは、絶対に許せることでなかった。死んだ者の事を思えば尚更だ。
「だったら、熱也と組んでテメェらをぶっ倒す!!」
 啓助は思わず声に出していた。
 許し切れていない柿村熱也と組むなんて。しかし、啓助に悔いはなかった。
「辻、ワイは……!」
 熱也は、顔を俯かせながら言う。
「ワイはお前と戦えへん。組んで戦う権利なんて……ないんや」
「んな事ねーよ」
 啓助は、熱也の言葉を引っくるめるように言った。
「お前が煉の代りをやってくれりゃ、それでいい。死んだ奴の事、いつまでも引き摺ってんじゃねーよ! 俺らを繋ぐモンはそんな湿気たモンじゃねえだろーが!!」
 そう、煉の代りを務めてくれればそれで良い。
 これ以上、人を苦しめたくない。だから、熱也の苦しみを捨てて、煉の苦しみを償ってくれればそれで良い。
「戦おうぜ、明るい未来のためにな」
 ベタだ、そう分かりつつも啓助は言った。

 ドーム外。紫色の空の下で、麻衣は呟いていた。
「うーん、アイスどーしよーかなー? やっぱ王道を貫いて、バニラかなー」
 戦う相手そっちのけで、麻衣は思考に耽(ふけ)っている。
「油断をすると、痛い目を見マスよ」
 返事は無い。
「デハ、行きマス」
 やはり返事はない、来る気配すらない。
 流石の来待も呆れを見せて、空手に近い構えが少し緩んだ。
「ッ!」
 その時だった、来待の頭上に畳まれた扇の骨が振り下ろされた。
 来待はそれを機械化した左腕で、扇の骨を受け止める。
 途端、巨大な鈍い金属音が辺りを包んだ。
「ありゃりゃん? 油断は禁物じゃなかったのー?」
 扇の上には、何とも可愛らしい表情を浮かべた神宮寺 麻衣の姿がある。
「………」
 来待のコンピューター頭脳に刻まれた。
 この少女、侮り難し―――


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