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係争の異能力者(アビリター)
133
:
ライナー
:2011/09/09(金) 23:41:28 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
竜野翔太さん≫
来待さんの強さは後に分かりますよ……!
スピード感はありすぎてバトル展開が早い原因かも知れません^^;
擬音ですか、擬音は本来使う場合はギャグ以外にはあり得ません。
やはり、チープに感じてしまうので、ギャグ入ってるときは使用可と言っておきましょう。
100歩譲ったとして、擬音絡めという裏技があります。
それは、擬音を無い擬音とある擬音で混合してしまうと言う技です。
この寒さは何だろう、まるでキンキンとする頭で、絶えずかき氷でもずっと口に含んだ状態と言えようか。
これが例ですね、キンキンは実際に出ている音ではありませんが、その場を凍らせるような心境を感じさせます^^
ですが、もう一度注意しておきます。多使用は禁止です!あくまで伝えづらいところで使うこと、それに限ります。
では、ご参考までに^^
134
:
ライナー
:2011/09/10(土) 00:18:05 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
啓助は微かに光の中で意識を保っていた。
「………」
しかし、体の節々に痛みが走る。
光の外からは、小さく恵が叫ぶ声が聞こえた。
小さく聞こえるのは、多分、レーザーの中にいるからだろう。
「………」
啓助は心中で呟いた。
「(俺は、俺は、俺の力は……)」
途切れる心の呟きは、次第に啓助の体力を奪っていった。
しかし、無力過ぎた。啓助は自ら思う。
せっかく恵が与えてくれたチャンスをものにすることが出来なかった。
仲間として、人間として、諦めきれない。しかし、体はもはや言うことを聞かなかった。
力は出せない、そう、力は。肉体的な力だけは……
啓助には、有力なミクロアビリティがあった。『フリーズ』という異能力が……
微かな意識を保ちながら、啓助はオーラを放った。
恐らく、啓助自身が今までで一番力強くオーラを出していただろう。
「僕は、頭脳コンピューターでこのユニットを9機バラバラに動かすことが出来マス。関原恵さんは動いたら狙い打ちできる状況デスからね」
来待は、恵の周りに6機のリモートユニットを浮かばせていた。
「啓助君……」
恵は青白い光に包まれた啓助を見て、泣きそうになっていた。
「では、そろそろ毒ガスを蒔かせて貰いマスかね」
リモートユニットを操り、来待は恵の意識を飛ばす。
恵には倒れた後、青白い発光が残った。
来待は、恵から啓助に視線を移す。
「君は、今は殺せマセンね。アビリティを抜かなケレバいけマセンので……」
応答のない啓助に、来待は語った。これも独り言の分類に入るのだろうか。
「まあ、死ぬことは変わりアリマセンガ」
来待は、既に仕事が終わったように振る舞う。
「これでも、あの黒翼(カラス)の赤羽を追い詰めた人間なのでショウカ?まあ、勘の鋭さだけの問題だったようデスが」
来待は、操るリモートユニットと、恵を背に靴の音を鳴らしながらゆっくりと去っていく。
すると、突然。来待の背後から爆発音が聞こえた。
驚いて振り向いてみると、群青色の光に包まれた啓助がその場に立ち、リモートユニットの3機が潰れ、煙を上げていた。
「システムを凍結させて毒ガスの放出を止めマシタね?その『フリーズ』のオーラで分かりマスよ」
来待はリモートユニット6機を引き寄せ、戦闘態勢に入った。
「アビリティに呑まれマシタか……」
135
:
ライナー
:2011/09/10(土) 00:56:34 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
来待を睨む啓助の目は、完全に人の目をしていなかった。
例えるなら、獣の目だろう。目の前の敵を、必然的に狩る獣の目。
「僕の勝率は82%と大幅に下がりマシタ。戦闘は放棄シマス……と、言いたいところですがそうもいかないようですね」
啓助はただ、何も言わずに来待を睨んでいる。
浮遊するリモートユニットを、来待はボーリングの球のように指を差し込んで握った。
「では、特別に君の行動から読み取る『気合い』でカバーさせて貰いマスかね」
来待は足にもリモートユニットを両足に3機ずつ取り付け、光でブーストさせた。
群青色の光に包まれた啓助に来待は接近するが、凍てつくほどの冷たいオーラに後退る。
すると、啓助はオーラを広げ、来待をリモートユニットごと凍らせた。
「負けられマセンヨ」
来待は負けじと体に付いた氷を弾き、啓助に殴り掛ける。
しかし、啓助の身体に近付けば近付くほど、冷気の気流は寄せ付けない力を生み出した。
「白青光(ムーンライト)」
来待がそう言うと、右手のリモートユニットは青白く光り、オーラを突き抜けた。
「まだデスよ、白赤光(サンライト)」
今度の発言は、左手のリモートユニットを赤白く光らせ、突き抜いたオーラの中の啓助の身体に突きを繰り出した。
啓助は、獣のような咆哮を上げ、唸った。
「キルブラック右陣隊長の力はこれで終わらないデス」
「(俺は……仲間のためだけに……力を……)」
互いに距離を取り、同時に次の一歩を踏み出した。
「これで……」
「……最後デス」
赤白い光と群青色の光は混じるようにぶつかり合った。
啓助の目には、倒れた恵と機械の部品に取り囲まれ倒れた来待があった。
「……?」
すると、第一番隊隊長堂本が後ろから歩いてくる音がした。
「またもやってくれたか、辻……」
啓助の頭には疑問符が浮かぶ。
「お前は、一角を何回も崩す。そんな大物に成るんだろうな……」
136
:
ライナー
:2011/09/10(土) 10:30:05 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
訂正です^^;
135≫の28行目の堂本ですが、苑寺です。
と、ついでに作者通信もお送りします。レスもったいないので(笑)
〜 作 者 通 信 〜
段々といろんな人が動き出していて、最近では小説書いてないと頭がボーッとして、イライラします(中毒か)
今回は、キャラクターのネーミングについて語ろうかと。
えー、ハッキリ言って名付けは適当です(笑)
一つ考慮したと言えば、乃恵琉君の名前ですかね。ハーフの名前なので、ちょっと良いものを探してきました^^
実を言うと、ラスボスの所まで全て名前は決まっていて、後は話しの動かし方だけなんです。
まあ、話しは本編を御覧頂ければ分かるかと……
137
:
ライナー
:2011/09/10(土) 11:15:20 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
「にしてもキルブラックの行動は読めんな……」
苑寺は、首の骨を鳴らしながら言った。
「帰ってみれば、この有様。そんでシステムは誤作動起きるわ、何か面倒くさい奴いるわで大変なこっちゃ」
「俺……勝ったのか?」
啓助は半信半疑になり、自分の両手の手のひらを見つめる。
「ああ、良くやったぜ、本当に」
苑寺の声が届いていないのか、啓助はまだ手のひらを見つめていた。
「……信じられないなら、監視カメラのビデオでも見るか?壊れてるけどな」
鼻で笑う苑寺の冗談は、無論啓助には聞こえていなかった。
「99,8%は何のためにあると思いマスか?」
突然、来待の声が苑寺と啓助の耳に入った。
しかし、来待は倒れているはず。2人の視界にはしっかりと入っていた。
だが聞こえる、確かに来待の声が。
「ここデスよ」
その声に2人は振り向いた。
すると、そこにはもう1人来待がいたのだ。
「お、お前……何で……?」
驚く啓助の前に、苑寺が立ち塞がる。
「辻、お前は隊員の救出に当たれ。ここは俺がやる」
苑寺の両手は、来待に向かって炎を吹き上げていた。
「『フレイム』のアビリターデスか。精々時間稼ぎに成ればよいデスが」
来待は、周りに浮かぶリモートユニットを苑寺の方へ向かわせる。
苑寺は咄嗟に両手の炎を強め、リモートユニットを軽く突き飛ばし、来待に向かって拳を振り上げた。
炎の拳は当たるかと思いきや、直撃寸前に来待の姿が消える。
「辻!早く行け!」
叫ぶ苑寺の声は、戸惑いが重なる啓助に届いていない。
「余所見は禁物、デスよ」
現れた来待は両手に青白い光を放っていた。何と、来待の手はリモートユニットと化していたのだ。
それは両手に留まらず、両足までもがロボットだった。
歯を食いしばって躱す苑寺に、来待は足を青白く光らせ、ブーストするように加速する。
苑寺の両手の炎は、来待の青白い光に力負けし、空しく散った。
「何ィッ……!!」
「あなたの、負けデス」
青白い光は、来待の拳から広がり苑寺を包んだ。
その時、啓助の目に映ったのは、息を引き取った苑寺の姿だった。
138
:
ライナー
:2011/09/10(土) 14:17:57 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
「次は、辻啓助。あなたデス」
来待は、機械と化した両手両足にリモートユニットを近づけた。
「てめェ……!!」
啓助は亡くなった苑寺の姿を見て拳に力を入れる。
リモートユニットを両手両足に付着させた来待は、操るように機械本体を身体に取り込んだ。
取り込まれたリモートユニットは、もはや来待の身体を人間の体にはしていない。
来待の両手両足は棘のように鋭く、そして全てを飲み込むような黒に変色していた。
「ここで問題デス。何故僕は2人いるか分かりマスか?」
来待の言葉を聞かない内に、啓助は両手に氷を纏わせ殴りかかった。
氷の拳が来待の鼻先で止まる。
またも青白い光で攻撃を防がれていたのだ。
「時間切れデス。正解は……」
氷の拳を止めた光は段々と広がり、啓助を押し出していく。
「50%程機械で出来ているノデ、向こうとこっちで50%真の体を持っていマス。だから、本来は1人だったのデス」
そう言って、鋭く尖った右手を啓助に向かって突き出した。
啓助は尖った右手を紙一重で躱すと、氷のように凍てつく目で来待を睨む。
「そう言うの、もう飽きたぜ」
再び啓助は両手に氷を纏わせると、来待を狙った。
「100%とか100%じゃないとか、そんなのただ、失敗を恐れてるだけだろ」
そう言うと、氷の拳は一直線に来待の頬に伸びる。そして、ユニオン通路には氷が砕ける音が響いた。
来待はその勢いで吹き飛ばされ、壁に背をぶつける。
しかし、煙が立ちこめる中からは来待が浮かび上がりながらゆっくりと現れた。
「その言葉には、あなたもそうでしょうと、返しておきマス。白赤光(サンライト)!」
機械化した来待の鋭い左手は、赤白い光を上げ、啓助を襲う。
啓助は頬に擦りながらも、直撃を避けるように躱した。
「俺だって失敗は避けたいさ、仲間に迷惑掛けてばっかりだしな、でも……」
来待は啓助の言葉を無視して、攻撃に移る。
「白青光(ムーンライト)!」
今度は、右手の青白い光が啓助を襲った。
啓助は先程と同じように躱そうとするが、今度の攻撃は素早さが増していた。相手も相当力が入っている。
右腕に負傷してしまった啓助は、左手で溢れる赤を抑えている。
「俺はだからこそ頑張ろうとなれるんだっ!!」
全身に『フリーズ』のオーラを力一杯出し始めた。
来待は啓助の言葉に眉を微かに寄せた後、両手を合わせ攻撃態勢に入った。合わせた両手は白青と白赤が混じり、白の入った紫へと光の色を変化させていった。
「白紫光(コスモライト)!!」
「氷結ッ!!」
2つの技はぶつかり合い、スピーカーが壊れたときのような高い音を響かせた。
139
:
ライナー
:2011/09/10(土) 15:48:56 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
両者、互いの技を受け合った。
しかし、互いに技をぶつけたまま固まっている。
「や、やるじゃねーか!」
「そちら……コソ」
そして、技同士は打ち消し合い雪のように白い光で力を失った。
両者は力を出し切り、足下をふらつかせる。
間を開けた2人は、足のふらつきを抑えることが出来ず、尻餅をついてしまった。
「やばいな、もう力がでねェや……」
「100%戦うことが出来マセンね。辻啓助、データに狂いを出し、侮り難し」
すると、来待と啓助の間に影のようにボォッと誰かが現れた。
「……こ、黒明(こくめい)様」
現れたのは小学生くらいの男の子で、黒の中に白が混ざった髪を持ち、モノクロのコートを身に纏っていた。
「駄目じゃん、負けちゃ。僕は君を推薦してあげてるんだけど、こんなんじゃ白闇(はくあん)に負けちゃうよ」
「も、申し訳ありません!!」
来待はボロボロの体でぎこちなく土下座をした。
「いいよ、もう。叔父さんに役に立たないときは殺しておけって言われてるし」
すると、黒明となぞられた少年はコートのポケットから黒い紐のようなものを取り出した。
驚いて声も出ない来待に、黒明は黒い紐を振り下ろした。
黒い紐が来待の背中にゴムを叩く様な音を響かせると、来待はその黒い紐に引き寄せられるように吸い込まれていった。
「これで、君の失態はチャラにするよ」
黒明は、啓助のことなんか目にも留めず、ゆっくりと歩き去っていった。
140
:
ライナー
:2011/09/11(日) 11:22:15 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
20、剣を求めて三千里
「まあ、今回はユニオンの一件がありましたし、大目に見ましょう」
第3番隊B班チームルームで乃恵琉が苦い顔で言った。
「それじゃあ、今日から剣を使わせてくれるんだな!!」
啓助はユニオンに攻めてきた来待撃退で、実力を表彰されたのだ。
そして、表彰と同時に単位得点まで上げて貰い、一番に評価されたのが、乃恵琉が以前否定した諦めない精神だそうだ。現に恵が証人となっている。
「しかし、以前より厳しい修行となります。そのつもりで気を引き締めて貰わなければ」
「分かってるって!お前だって父親説得したいんだろ?」
啓助の言い方は、お世辞にも気を引き締めているとは言えなかったが、乃恵琉はただ冷静に「行きましょう」と一言言った。
啓助達はユニオンの転送ルームを使用し、乃恵琉の言うある場所へと向かっていた。
転送による光が啓助達の目の前から消えると、見るからに落ち着きのない世界が広がっている。
そこは360度辺りを見回しても鉄ばかり見え、鋼の建物は所々スチームを上げていた。
「ここは、鉄という資源が豊富な綱板町(こうはんちょう)。生活のほとんどを機械で賄っている、そんな街です」
乃恵琉の説明通り、ある意味での『銀世界』が広がっていた。唯一自然があるとしたら、頭上に見える雲の掛かった青空だろうか。
それにしても、かなり国というのは世界観が変わってものだなと、啓助は思う。
「にしても、啓助君。昨日のこと覚えていないんですか?」
啓助は頭を抱えるようにして言った。
「ああ、来待以外にも誰かいたような気はしたんだが、近くにいた恵だったかな?それともドッペルゲンガーか?」
「……まあ、別に思い出せなくても問題はありませんが」
乃恵琉は啓助から顔を逸らし、黒鉄(くろがね)の地面を音を立てながら歩いていく。
暫く2人は無言で歩き続け、乃恵琉が突然足を止めた。
「着きました。ここがかの有名な刀鍛冶、鉄幹門四十郎(てっかんもん しじゅうろう)のいる家です」
威厳そうな名前を乃恵琉から聞いた啓助は、表情からして疑問符がいくつも浮かんでいる。
「……誰だそれ?」
乃恵琉は呆れた顔でため息を吐いた。
「あれだけ剣、剣とうるさいから、自分で何らかの予習をしてきているのか、と思いきや何にも知らないんですね」
笑ってごまかそうとする啓助を見て、再び大きなため息を吐く。
そして、鉄の引き戸を軽く3回程ノックし、ゆっくりと開き始めた。
引き戸の中からは、啓助達を押し返すように熱風が襲う。
中では汗を掻きながら、赤く熱の籠もった鉄の塊を金槌で打つ老人がいた。
「御邪魔いたします、鉄幹門四十郎さんですよね」
乃恵琉の挨拶を余所に、老人はただひたすらに鉄を打ち続けている。
待つことに痺れを切らした啓助は、老人に怒鳴り掛けようとした。
力強く一歩を踏みしめ、怒りを込めて次の一歩を踏み出そうとする。
しかし、その一歩を踏みしめる前に、乃恵琉の平手が啓助の胸部に飛び、途端に立ち止まる。
老人はまた暫くして手を止めた。
「で、何のようじゃい」
金槌を床に置き、老人は問いた。
「(このジジィ、人をまた上に……)」
「鉄幹門四十郎さんに剣を作って頂きたく……」
乃恵琉の発言は、鉄幹門の「駄目じゃ」という言葉に遮られる。
「剣と言えば、洋刀のこと。わしは洋刀は作らん」
鉄幹門の言葉を最後に、啓助達は家内から追い出されてしまった。
「……どういう事だよ」
「剣も打てると聞いたのですが、これは何かありそうですね……」
141
:
ライナー
:2011/09/11(日) 14:10:23 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
啓助達は、それから何件もの刀鍛冶を訪ねた。
しかし、その全ては洋刀を作らないと言ったのだ。
「やはり、何かがあるようですね」
「何か?もしかして、冷蔵庫に取っておいた最後のアイスクリーム取られて意地張ってるとかか?」
「いや、そんな子供っぽい理由な分けないでしょう。とりあえず、この辺りの住人に聞き込みしてみましょう」
乃恵琉はそう言うと、1人の通行人に声を掛けた。
「済みません、お訪ねしますがここでは何故洋刀を打つ刀鍛冶がいないのですか?」
乃恵琉の問いに、通行人は驚いた顔をしている。
「君、こんなところでそんな事言っちゃ駄目だよ……!」
「失礼しました。何分ここには不慣れなので」
通行人は、少し周りを気にしながら話した。
「ここ、綱板町でもちょっと前までは洋刀を打つ刀鍛冶がいたんだ。でも、新たな鉄素材を見つけるために、金属探知機が反応している鍾乳洞に入ったらしいんだ。しかし、そこで探知機の指す方向へ向かうと……」
そこまで言うと、通行人は息が止まりそうな勢いで言う。
「巨大な獣に襲われたそうなんだ……!何でも、洋刀を持っていた人には過剰に反応し、洋刀と命を奪った。それで洋刀は不吉の象徴とされているんだ」
乃恵琉は通行人から話を聞き終わると、頭を下げた。
去っていく通行人を見ながら啓助は思った。また面倒くさいことが始まりそうだと。
「啓助君、今の話しに矛盾を感じませんか?」
乃恵琉が不意に啓助に話しかける。
啓助は、乃恵琉の言う「矛盾」に疑問符を浮かべた。
「あの通行人の話しでは、鍾乳洞で金属探知機が反応した、と言いましたよね?ですが、鍾乳洞の中には自然物で金属は含みません」
そう言われて、啓助は何となく異変に気付く。
「……誰かが、金属を持ち込んだ以外にはあり得ないって事か」
「正解です」
乃恵琉は指を鳴らして、涼しく笑った。そして言葉を続ける。
「ですので、人工的に作られた何かを、獣が守っている。そういう推理が出来ます」
その言葉に啓助は再び悪寒が走る。
それに感づいたように、乃恵琉は言った。
「困っている市民を助ける事も、僕達ユニオン隊員の役目です」
「お、俺、今日から困った市民になろっと……」
啓助は強引にも乃恵琉に連れていかれ、噂の鍾乳洞に到着する。
初めて来た場所のはずだったが、啓助には見覚えのある場所だった。
何故ならそこは、キルブラック後陣隊長の沙斬と一戦を交え、煉が殺されたあの鍾乳洞だった。
突然、来ることが嫌だった啓助は、真剣な表情になる。
鍾乳洞に入っていくと、以前入った時とはほとんど変わりない。相変わらず足下が水浸しになっている。
足音の替わりに、足で水を蹴飛ばしながら啓助達は先へ進んでいった。
暫く啓助を先頭にして歩いて行くと、ある場所へとたどり着いた。それは、煉が殺されたというあの鍾乳洞の広間だった。
「啓助君、君の気持ちも分から無くは無いですが、ちゃんと真相を確かめなければいけませんよ」
すると、啓助は軽く息を吐いて言った。
「満更、ここでも良さそうだぜ」
微妙に光の差す広間で、乃恵琉は目を凝らした。すると、辺りには人間の死体と洋刀が散蒔くように倒れている。
142
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/09/11(日) 20:38:42 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
どうも^^コメントさせてもらいますね。
来待強ぇ!って思った途端に……アレって死んじゃったってことでしょうか?
にしても最近麗華が出ないのがちょっと残念です…。もっとも洋の方が出てない気が…。
恵も結構出てきましたね!
やっぱ惠は啓助が好きなのだろうか。キュンキュンします((殴
これからも頑張ってくださいね^^
143
:
とよに
:2011/09/13(火) 09:00:11 HOST:bc31.ed.home.ne.jp
いつも読ませていただいています。
主人公かっこよさすぎて、もうキュンキュンです。
とても面白いと思うので、これからもがんばってください。
144
:
槙
◆uXwG1DBdXY
:2011/09/13(火) 13:37:59 HOST:KD027082037068.ppp-bb.dion.ne.jp
コメント失礼します、槙といいます。
以前自分の短編集にコメントしていただき有難う御座いました。ライナー様の作品は何度か見かけた事はあったのですが、長編だったので読む時間がなく断念してしまっていました。
ですが今回少し拝見させて頂いたのですが、とても興味がそそられるもので全部読んでしまいました。
個人的には主人公の啓助君、乃絵琉君、恵ちゃんが特に好きです。
続きがとても気になり次の更新が待ち遠しいです。
これからも頑張って下さい
それでは、乱文失礼いたしました
145
:
ライナー
:2011/09/17(土) 13:31:21 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
コメントがいつの間にか沢山……もうホント嬉しい限りです(涙目)
竜野翔太さん≫
その事につては……続きは未来で(オイっ!)
主人公が好きな女の子って良いんです!!主人公って作者の分身だから自分がそういう状況に成ってみたかったり何かしたりして……^^;
とよにさん≫
コメントありがとうございます。
リア友なんでレイ@ヴァルガさんなのは分かりますけど、これからも見て下さい!
槙さん≫
前から読んで頂いたなんて、本当に嬉しいです!!
主人公は作者の分身と言いながらも、自分は洋が大好きです。何故か^^;
頑張って更新しますので、これからも応援宜しくお願いします!!
皆さんコメントありがとうございました!
146
:
ライナー
:2011/09/17(土) 15:59:24 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
「ここに……スゲぇ鉄があるんだろ?」
啓助は所々光の差す鍾乳洞で、微かに呟いた。
「君は、このような任務でも随分暢気ですね。もう、知らないふりをするのは疲れましたよ」
乃恵琉は啓助の背に向かって声を上げる。
「戦闘以外のことは忘れた、と言いましたよね?本当は苑寺さんが亡くなった覚えているのではないのですか?」
乃恵琉の問いに、啓助は耳を傾けたのか微量に震えた。
「……ああ、覚えてるぜ。だけど、ずっと落ち込んでるわけにもいかないだろ?役に立たなくて、仲間だって守れねェけど、今必死に頑張るしかないんだ」
啓助の発言に、乃恵琉は思った。心は強くなっていると。
「君は強くなることだけが目標ですか、情けないです」
ため息を吐いて言う乃恵琉だったが、その表情は笑っているように見えた。
すると突然、夕日の光が差す鍾乳洞に、咆哮が響く。
そうかと思うと、今度は夕日の光を全て塞いでしまうような、巨大な影が立ち塞がった。
「何だよ……コイツ……」
立ち塞がった影は、夕日の光で段々とその姿を現す。
その姿は、一見すると亀のような姿をしており、その甲羅は天空に向かうように螺旋を描いた形をしていた。
「この獣は甲水亀(こうすいき)ですね。『アクア』の能力を持っています。しかし、この大きさは今まで発見されたものより遥かに巨大なようですね」
甲水亀は螺旋状になった甲羅を強く発光させると、再び咆哮を上げた。叫び、口を開けた状態で、口から物凄い勢いの水泡を放つ。その勢いは、滝が地面と平行に落ちていくかのようだった。
啓助は咄嗟に手のひらを水泡に向け、凍結させる。
しかし、水泡の水圧が強く今にも氷の壁は砕けそうになっていた。
「くっ……乃恵琉も手伝ってくれ!俺1人じゃどうにも仕切れないっ!」
乃恵琉は、啓助の言葉を腕組みしながら聞き流した。
「今度やる試合の相手は麗華ですからね、これくらいはどうにかお願いします」
「今までに発見されてない大きさの獣をどうにかしろとぉ〜!!無理だっつの!!」
全力の否定にも、乃恵琉は動く気配はない。
「いざ、という時は僕も参戦しますので、ご心配なく。では、僕は外に行って缶コーヒーでも飲んできますので」
「それじゃ、いざという時が分かんないだろ!」
乃恵琉に大声で叫びつつも、啓助は必死に水泡を防いでいる。
甲水亀の水泡は、時間が経つ度に威力が増し、啓助を苦しめた。
啓助は水泡を防ぐことに精一杯で、その場を動くことが出来ない。しかし、攻撃をしなければこちらがやられてしまう。
埒の明かない1人と1匹を見て、乃恵琉はため息を吐いた。
「仕方がありませんね、少しだけ力を貸すとしましょう」
すると乃恵琉は、ベルトにしまった黄色の珠から深緑の槍身を伸ばす。
黄色い球から伸ばされたナチュラルランスの槍身を掴み、乃恵琉は甲水亀に向かって走り出した。
ナチュラルランスの槍先を、水の張った地面に擦りながら走ると、傷の付いた部分からはいつもの棘の付いた蔓とは違う植物が勢いよく生えてきている。
乃恵琉は水泡に向かって、ナチュラルランスの3本の槍先を振るうと、それに同調して植物は水泡の方へと伸びていった。
「行きますよ!『リーフライド』!!」
147
:
ライナー
:2011/09/17(土) 17:20:02 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
乃恵琉がそう唱えるように言うと、赤紫の花を咲かせた茎はナチュラルランスの槍身に、根まで巻き付き一体化していった。
植物と一体化したナチュラルランスは、水泡を弾くように防いでいる。
「この植物はミソハギといって、水辺に咲く花です。だから撥水(はっすい)効果は勿論、『リーフライド』で槍の特殊攻撃まで強めます!」
乃恵琉は啓助が技を聞くことを見越し、涼しい顔で説明を終えると、水泡を弾き退けた。
啓助にとっては、別に聞く気もなかったが絶対に言ってくるだろうと見越して敢えて言わなかった。出会って半年ばかりでわかり合えるのは、以心伝心と言ったところだろう。
甲水亀の水泡を弾いた乃恵琉は、ナチュラルランスの槍先を甲水亀に向け走り始めた。
次の水泡を放とうと、甲水亀が咆哮を上げる。
しかし、咆哮を上げたときにはもう乃恵琉がその頭上に跳び上がっていた。
乃恵琉はしっかりと標的を見定め、ナチュラルランスの3本に分かれた槍先を甲水亀に目掛けて振り下ろす。
地面に乃恵琉が着地すると、それと同時に水の張った地面に赤が染まった。
甲水亀が水を跳ね上がらして、蹲(うずくま)るようにして倒れる。
「おっと、弱すぎて倒してしまいました」
乃恵琉はナチュラルランスの槍身を黄色い球に込め、呟く。
そして黄色い球をベルトにしまうと、啓助の方を振り向いて言った。
「このくらい倒せるじゃないですか、僕みたいに」
余裕な表情で言ってくる乃恵琉に、引きつった顔で啓助は「お、おう」とぎこちなく言う。
「君の課題は、敵の攻撃の受け方ですね。真正面から受けて全てを防ごうなんて、防御主体のカウンタータイプの戦い方じゃないと死にます」
啓助は先程から、乃恵琉の「死にます」という言葉をとても気になっていた。幾つ自分が死ぬような戦い方をしていたのか、分かったもんじゃない。
「物の流れを、いかに抵抗を少なく受け流せるかが重要ですよ。今回は特殊攻撃でしたが、打撃の場合受け流して攻撃を打ち込めなければ話しになりません。時によっては、耐え切って自分のペ−スに持ち込む人もいますしね」
自分もだいぶ戦闘経験は積んでいるが、まだまだ戦闘術とは奥が深い、そう思う啓助だった。
啓助は曖昧に返事をし、本来の目的、特別な金属を見つけ出す事に集中していった。
場所的には事件が起こった場所に間違いは無いのだが、特別な金属が見つかりそうにない。
乃恵琉を見てみると、倒れた人々の剣に紛れていないか探りを入れている。乃恵琉の推理だと、特別な金属は剣だという推理だろう。
「はぁ〜、どこだよ鉄」
どこか諦め半分の啓助は、ポケットに手を突っ込んで辺りを忙しなく見回していた。
すると、鍾乳洞の広間に続く空洞に、夕日の光が当たり何かが見える。
「おい、乃恵琉!何かあっちにあるぜ?」
一方、こちらはユニオン自主トレーニングルーム。
恵と麗華が練習試合を行っていた。
「ちょっとちょっとぉ〜!!真面目にやってるの恵?」
麗華が何か物足りないように恵に言った。
「あ、ちゃ、ちゃんとやってるよっ!」
恵は銃を持つ両手を微かに振るわせながら言う。
麗華はため息を吐いて、指に握るように挟んだナイフの刃を折りたたむように持ち手部分にしまった。
「辻の奴とアツアツだったのは分かるけど、少しはマシな戦い方してよ」
麗華の発言に、恵は赤面させて大声で言った。
「だ、だから違うよォ〜!!そんな事言うんだったら、井上君と練習すればいいよォ〜!!」
恵は麗華の返事を聞く前に、顔を隠してトレーニングルームを走りながら出て行った。
「……洋は張り合い無いしなー。そういえば辻、アイツ大丈夫かしら?」
148
:
ライナー
:2011/09/18(日) 10:54:38 HOST:222-151-086-019.jp.fiberbit.net
21、凍界の剣
啓助は乃恵琉を連れ、広間に続く空洞へ一歩一歩進んでいく。
その空洞は光が全く差さず、広間からの光が頼りだった。
「ここに……ですか?」
乃恵琉は半信半疑で啓助に問う。
「確かに夕日の光に反射して、見えたんだ」
啓助は乃恵琉を背に、足下に張っている水を蹴飛ばすように歩いていった。
空洞に入っていった2人は、広間の光を頼りに辺りを見渡す。
しかし、空洞の奥までは光が届かず、手探りの作業以外方法がなかった。2人は同時にため息を吐き、姿勢を低くして探り始める。
作業は何時間かに渡り、辺りは暗くなった。もはや夕日の光も差してこない。
低い姿勢を保ち続けた2人は、腰をさすりながら姿勢を戻すとほんの僅かに月明かりが見える広間の方へと戻った。
「ありませんでしたね」
乃恵琉が何か恨めしそうな声で啓助に呟く。
「暗いからな、見つからないだけだろ……」
啓助は何か後ろめたそうな声で乃恵琉に呟いた。
先程からため息の同調が途絶えない2人は、またも同時にため息を吐くと星空を見上げる。
「そういえば、今何時だっけ?」
乃恵琉は啓助に言われ、携帯を取り出す。
「22時ですね」
「任務以外で外出してる時って、門限何時だっけ?」
すると、乃恵琉は少しためらって言った。
「22時ですね」
乃恵琉の言葉が寂しく、鍾乳洞の広間に反響する。
「「………」」
啓助は咄嗟に、行き先が分からぬまま走っていく。一方乃恵琉も同じように走りの一歩を踏み出した。
「うおー!!ヤベー!!」
「僕も気が付きませんでした。甲水亀を倒したらすぐに街の人々に報告すればいいものの……」
走って行く2人は、僅かな月明かりを頼りに来た道を進もうとする。
しかし、その僅かな月明かりは突然と消え、聞き覚えのある咆哮が響いた。
「……まさか」
啓助はその瞬間言葉を失う。
「そのまさか、のようですね」
乃恵琉は状況に動じず、冷静に言っている。
そう、その咆哮とは、先程乃恵琉が倒した甲水亀だったのだ。
「では、僕は外で缶コーヒーを買ってきます」
「いや、それ門限が大事なだけだろ!!てか、それさっきも聞いた!!」
「大丈夫です、君のためにコーラも買ってきますから」
啓助達が遣り取りしている間に、甲水亀は闇の中で水泡を放つ。
「そー言う事じゃねー!!」
その発言は、水泡の勢いに掻き消されるように途絶えていった。
149
:
ライナー
:2011/09/18(日) 14:06:05 HOST:222-151-086-019.jp.fiberbit.net
大きく水の弾け飛ぶ音が鳴る。それは、もう水なんてレベルではない程の衝撃音だった。
啓助はその音と同時に身が飛ばされ、壁に窪みが出来てしまった。
窪みの出来た壁を背に、啓助はゆっくりと立ち上がった。
「啓助君、大丈夫ですか?」
乃恵琉が真顔で啓助に呼びかける。
啓助は背筋を伸ばし、指の骨と肩の骨を荒々しく鳴らすと、暗闇に僅かに見える甲水亀に向かって構えた。
「……大、丈夫な、訳ねェだろ!お前の眼鏡は伊達眼鏡か!」
啓助の安否が確認できた乃恵琉は、先程よりも冷静に言う。
「いや、『お前の目は節穴か』みたいに言われましても……」
乃恵琉の言葉に、啓助は舌打ちをして甲水亀の方を見据えた。
助走を付けて跳び上がった啓助は月光に影を生み、甲水亀の前頭部目掛けて、力一杯氷を纏った突きを繰り出す。
甲水亀は、それを読んでいたかのように啓助の方に目線を向け、水泡を放った。
啓助の突きは、甲水亀の水砲を凍結させ、次々と砕いていく。
「なめんなよ!!」
啓助はそのまま甲水亀の前頭部に突きを繰り出そうと勢いを付ける。
しかし、水砲の勢いは段々と増していき、今度は逆に水砲が氷を砕いていった。
氷、冷気共に無効化された啓助は、再び空洞の奥へと吹き飛ばされいく。
黒い景色しか広がらない空洞は、啓助に不安を与えた。まるで、怯えて檻に閉じこめられる小動物のように。
広間に続く通路が、月明かりを失った。甲水亀がそこに立ち塞がったのだ。
「では、啓助君。僕は甲水亀を一度弱らせたので、これにて失礼します」
甲水亀の後ろから、微かに乃恵琉の声が聞こえる。
「お、オイっ!門限と仲間で、門限取りやがったな!!」
啓助の無謀な呼びかけは、空洞に大きく響き渡るだけだった。
甲水亀はそれでも容赦なく、水砲を放つ。
啓助は音しか聞こえない水砲に、為すすべもなく攻撃を受けた。
「クッ……!!」
水泡の勢いで、啓助はまたも壁に体をぶつける。鈍い音を上げた壁は、落石の雪崩を起こすように崩れていった。
啓助は足を蹌踉(よろ)めかせながらも、深呼吸しながら立ち上がる。
「これで死んだら、乃恵琉の奴を呪い殺してやる……!」
両手に冷気を込め、闇雲に冷気を放った。
放たれた冷気は甲水亀に当たる様子はなく、地面に張られた水が凍る音が反響する。
焦る啓助に、甲水亀は大きく咆哮を上げた。そうかと思うと、暗闇に啓助に向かって水砲が飛び、啓助を襲った。
その水砲は先程のものより威力は弱化していたが、インファイトを打ち込む拳ように啓助の身体を傷つける。
「(何でこんなに暗いってのに、俺の居場所が……!)」
そして啓助は、その理由が分かった。甲水亀は地面に張っている僅かな水の波紋を感じ取っていることを。それ以外には考えられない。
さらに、啓助は電撃が走ったように思い出した。
最初に甲水亀の水砲を受けた時と、先程の水砲の威力を。
水砲の威力は、打ち込む度に弱化している。それは恐らく、乃恵琉の攻撃が当たったときからの弱りによるものだろう。
そう考えた啓助は、闇雲に闇の中を走る。
「(最初は、確か甲羅を発光させてやがったな。それなら、力を上げさせるには……)」
走る波紋に気付いたのか、甲水亀は細かい水砲を辺りにはなっている。
反響して、ハッキリ音の場所が分からないものの、啓助は水砲を自ら受けた。
そして、その時乃恵琉の言葉を思い出す。
「(『時によっては耐え切って自分のペースに持ち込む』か……)」
啓助は水砲を受けながらも、その発信源を読み取り、そこに向かって走り出した。
150
:
美々
:2011/09/18(日) 15:11:48 HOST:101-143-57-221f1.hyg2.eonet.ne.jp
小説書くんでよろしくお願いします。
151
:
美々
:2011/09/18(日) 15:12:23 HOST:101-143-57-221f1.hyg2.eonet.ne.jp
小説書くんでよろしくお願いします。
152
:
ライナー
:2011/09/18(日) 16:35:32 HOST:222-151-086-019.jp.fiberbit.net
走り出した啓助は、再び両手に冷気を込める。
「(要は怒らせれば良いんだ……!!)」
甲水亀に接近し、目が慣れほんの僅かに姿が見えると、啓助は水の張った地面を、跳ねる魚のように跳び上がった。
そして、高く跳び上がると、冷気を込めた両手から無数の氷柱を放つ。
今度は、水に落ちる音はせず、打撲音や切傷音が響いた。技が甲水亀に命中したのだ。
傷つけられた甲水亀は、啓助の目論見(もくろみ)通りに咆哮を上げ螺旋状の甲羅を輝かせた。
「(掛かった……!)」
甲羅の光で少しばかり明るくなった鍾乳洞の空洞は、プリズムの光を帯びたように美しかった。
しかし、そうも言っていられない。甲水亀は再び激しい勢いの水砲を放つ。
啓助はそれを受け流すように、凍結させ水の進行方向を屈折させた。
「(いかに物の流れを、抵抗少なく受け流せるかってな!)」
乃恵琉の言葉は啓助の頭に焼き付いていた。
何故なら、啓助は同僚に教えられるのが恥ずかしいと思わなくなり、ただ強くなりたいと願っていたからだ。
そして水砲を受け流すと同時に、啓助の目にある物が留まった。それは、岩に挟まっている剣だった。
甲水亀の水砲を全て受け流した啓助は、隙を見て剣の方へと走る。
「これが、噂の金属か……?」
手にした剣は、鞘越しにでもその刀身がハッキリしていた。
刀身は適当な横幅に長さが1メートル程と、いかにも重量がありそうだった。しかし、持ってみると案外軽く、刀身の付け根から短い刃が突き出ているのが見える。
すると、辺りがほんの少し暗くなった。
甲水亀に気付かれたのか、啓助はそう思い振り返る。しかし、そこには甲水亀の姿は無く、広い空間が広がっている。
咄嗟に目を見張り上を見上げると、そこには甲水亀の姿の腹部が景色のように広がった。
「(跳んだのか!?)」
状況を見ながらも、少し半信半疑に成る啓助。しかし、それを余所に甲水亀は少しの間も与えずのし掛かろうとしている。
啓助はそれを防ごうと、無意識に剣を鞘から抜いた。
啓助は気が付いた。
いつの間にか意識を失っていたのだ。
啓助は意識が戻り、ゆっくりと目を開ける。
途端に痛みが背中を襲う。壁にぶち当てられ、しゃがみ込んだ状況だったのだ。
手元には、剣と、その鞘が握られていた。
剣の剣先は赤く染まっている。
今度は前方を見てみる。甲水亀は甲羅を地面に付け、仰向けに倒れていた。その姿は先程の迫力を無くし、浦島太郎に出てくる亀のようにか弱く感じた。
何故こんな状態になっているのか、これで分かった。
剣で受け止めたのは良いが、重量に負け啓助も吹き飛ばされたのだろう。
啓助は剣を杖代わりにして、ゆっくりと立ち上がった。暫くして、足がやっと言うことを聞くと、剣を鞘にしまう。
微かに震える手で、啓助はポケットの携帯を取り出すと時間を見た。0時30分、日付がいつの間にか変わっている。
力が出ない足を一所懸命に歩かせるが、またも言うことが聞かなくなった。
足が効かないだけなら良いが、意識まで朦朧(もうろう)としてきた。
そのうち、立っていられなくなり水の張った地面に膝をついた。そして意識がどこかへ吹っ飛び、そのまま倒れ込んでしまった―――。
暗闇で何かが聞こえる。
「……貴様は、この私を上手く使いこなせるというか。ーーー様よりも強く、鋭く、素早く、しなやかに」
暗闇で聞こえる声は、姿が見えない。
「だ、誰かいるのか……?」
啓助はその声に呼びかける。すると、光が目に飛び込んできた。
「大丈夫ですか?」
気が付くと啓助は畳の上に寝っ転がっていた。
隣で聞こえる声は、着物を着た20代前半の女性だった。
「……夢か」
「は?」
「あ、いや、こっちの話しなんで……ってここは?」
すると、隣の部屋から老人が現れた。
「あの怪物を倒し、まだ生きておるとは……運の良い小僧じゃ」
153
:
ライナー
:2011/09/18(日) 16:47:49 HOST:222-151-086-019.jp.fiberbit.net
〜 作 者 通 信 〜
おなじみの作者通信です^^こんなの書いて無事に物語が終わるか不安ですが^^;
今のところ全体の2割程度終わっています(たぶん)
まだ3章の途中ですが、早く終わると良いです……
さて、実は本日、本作のキャラクター井上洋(いのうえよう)君の誕生日であります!パチパチ〜(暇人勃発)
これからも登場が増えるように願って下さい(洋のファンがいるかどうかですが^^;)
特に話すこともないので、次回予告予納な物を……
・剣を手にした啓助ですが、麗華とのバトルに勝つことは出来るのか!?(麗華ファンには麗華が勝てるかどうか!?)
・啓助にライバル出現!?
・奴が啓助達の元に返ってくる!?
こんな感じです^^;
まあ、これを見て楽しみにしていただけたらと(変更する恐れもあります)
154
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/09/18(日) 19:01:59 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
うお、新キャラですね!
にしてもいいですね、着物の女性ってw
乃恵琉は仲間意識があるのかどうか、よく分からない奴ですね。
もしかして麗華よ同じくツンデレだったり…。
啓助VS麗華が楽しみです!
155
:
ライナー
:2011/09/18(日) 22:46:45 HOST:222-151-086-020.jp.fiberbit.net
竜野翔太さん≫
コメントありがとうございます!
新キャラの人は、キャラ的にサブの中のサブに入るので、これからはあまり登場しないと思います^^;
まあ、乃恵琉はスパルタ指導だと考えてください(笑)
ツンデレ……結構あり得る可能性が(笑)
啓助、体ボロボロですが頑張らせます^^(スパルタ指導者か)
156
:
白井俊介
:2011/09/22(木) 16:16:52 HOST:bc31.ed.home.ne.jp
読ませていただきました。とても面白い作品で、文体も好きです。
麗華のツンデレ具合がとても大好きです!!
やっぱりかわいいですよね〜ww
これからも応援させていただきますのでがんばってください。
157
:
KIKKOMAN
:2011/09/23(金) 10:35:26 HOST:pw126198146188.42.tik.panda-world.ne.jp
白井俊介って実名ですかwww
158
:
ライナー
:2011/09/23(金) 10:52:08 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
白井俊介さん≫
コメントありがとうございます!
やっぱツンデレ好きな人多いんですね、もっと麗華のシーン増やそうかな。
ご期待に添えて頑張りたいと思いますので、応援宜しくお願いします^^
159
:
ライナー
:2011/09/23(金) 11:56:06 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
呆れ顔でため息を吐いている老人は、昼間訪ねた鉄幹門四十郎だった。
「あ、昼間のジジイ」
「ジジイとはなんじゃい!言葉には気を付けい!……しかし小僧、とんでもない物持ってきたな。いや、正確には駒子が持ってきたという方が正しいか」
鉄幹門の言う『駒子』という名前は、隣にいる着物の若い女性だろう。歳からして孫か娘かどちらかと言ったところだろう。
それともう一つ、『とんでもない物』も見当は付いていた。啓助の唯一の持ち物が、左手にしっかりと鞘に入った剣だったからだ。
「じーさん、この剣知ってんの?」
啓助の問いに、鉄幹門は当たり前のように言う。
「わしは刀鍛冶じゃぞ、有名な物なら一目で分かる。小僧が持っているその剣は『凍界裂剣(とうかいれっけん)』と言うて、寒さが厳しい地方である騎士が使っていた剣じゃ。その能力は冷えれば冷える程に鉄の粒子が引き締まり、切れ味が増すもんじゃて」
鉄の粒子が引き締まるとはどのようなことなのか、ほとんど知識のない啓助は質問しておきたかったが、そうもいかない。麗華との勝負は刻一刻と迫ってきているのだ。
それに、自分のアビリティに合った武器を手に入れたのだ、使わずにはいられない。
「それじゃ、ちょこっと使ってみっかな!」
啓助がその場で剣を抜こうとする。が、素早く鉄幹門にストップを入れられた。
「おい、小僧!剣はお前の拾得物じゃから何も言わんが、どこかへ用があるんじゃないのか?」
鉄幹門の言葉に、啓助は青ざめる。
慌てて携帯で時間を確認すると、既に時は6時30分と完全に朝方になっていた。
そして、同時に着信履歴の方にも目を通す。
するとユニオンからは10件以上の着信があったことが判明した。
焦りに焦る啓助は、急いでユニオンに電話を掛ける。
暫くユニオンの受付と言葉を交わし、通話を切った。転送帰還を願ったところ、転送システムが誤作動を起こしていて、帰還方法は徒歩かシステム復旧を待つしかないようだ。
「30分程度の短い間だったが、どーも」
啓助は携帯を閉じ、剣を左手に持って立ち上がった。
「もう行くんですか?」
呼びかける駒子に、啓助は背を向けたまま言う。
「とりあえず何処か泊まれる所探さないといけないんで」
「だったらここを使えばええ」
鉄幹門は腕組みしながら啓助に言った。
啓助はその発言に、思わず振り返る。
「マジ!?じーさんホントはいい人なんだな!ジジイって言ってごめんなさい」
「だがその代わり、家のことは手伝って貰う。いいな!」
「ハイ!」
「まだなんですか……?」
「もうちょっとですね」
啓助は駒子の手伝いで山に来ていた。
何故山なんかに来たかというと、綱板町では定食屋などはあるのだが、自分達で料理を作るとなると、街に買い出しに行くか近くの山で収穫するかのどちらかのようらしい。
現在は火を起こすための薪集めをしている。
ただ集めさせられるのならまだ良いのだが、朝から12時現在までやらされ、背中に登山リュックでも背負うように薪が乗せられている。その姿は差し詰め『二宮金次郎』と言ったところだろうか。
一方駒子の方は、近くの川で魚を釣ったり、山菜などを集めていた。
啓助はその光景を見据えながら、現代でこんな姿を拝めるとは思いもしなかった。
「そろそろ良いですよ、もうすぐお昼ですし」
駒子の言葉で、啓助は一安心する。しかし、気を抜くと薪に押しつぶされそうになるので少し戸惑った。
その後、啓助は鉄幹門の家で昼食をご馳走となった。
食べるものは全て田舎料理だったが、とても美味しく感じる。栄養配分だけ考えられたユニオンの食料とは大違いだ。
そして途端に、ユニオンに属する前の事を思い出した。家族や友人のことを今思うと、少し涙が溢れそうになる。
鉄幹門達はその姿を見ていただろうが、きっと啓助に気を利かせたのだろう。ただ静かに昼食にありついていた。
160
:
PANDORA
:2011/09/23(金) 13:38:20 HOST:pw126198014032.42.tik.panda-world.ne.jp
こんにちわ
この小説の隠れファンな私ですwww
それにしても面白いです!!
自分は麗華と恵のガールズトークが
もう少しみてみたっかた!
麗華が恵をいじってる雰囲気が笑えました
長くなってすいません
今後も頑張って下さい。
楽しみにしてます!!
161
:
ライナー
:2011/09/23(金) 14:09:35 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
22、路地裏の戦域
「ごちそーさんでした」
啓助は昼食を食べ終え一息吐くと、剣を持って外へ出かけた。
街の大通りに出ると、時間はまだ昼時で定食屋の方からは賑やかな声が聞こえる。
賑やかな声に紛れ、昼酒を呑み泥酔している中年の男などの風景が見えた。
そんな風景を見て、啓助は視線を前方に戻す。
すると前方に見えたのは、キルブラックの下っ端が身に纏うマントのような黒装束だった。
「……!!」
黒装束を着た人物は啓助の姿を見つけると、逃げるようにビルの路地裏に去って行く。
啓助もその姿を見ると、慌てて黒装束を追った。
路地裏に入って行くとそこには、ビルの壁と換気扇くらいしか見あたらない。
啓助は自分の目を疑いながら、キョロキョロと辺りを見渡す。
すると突然、啓助の身体に矢が刺さる勢いで電流が流れた。
「グッ……!!」
電流は啓助を縄で縛り付けるように身体に巻き付いている。
苦しみながらも、啓助は流れる電流の発信源を目で追う。
目で追った先には、ビルの壁に2匹の蜘蛛が糸を吐くように電流を啓助に流していた。
そうかと思うと、今度は上空から何者かが舞い降りてくる。3人いる中の2人は先程の黒装束だ、そしてもう1人は裏切りを果たした堂本の姿だった。
「て、テメェ……!」
「ヨォ辻……随分と元気そうじゃねぇか。雷蜘蛛(らいぐも)の電気は気持ちいいか?」
電気の磔(はりつけ)を受けている啓助に、堂本は笑って言う。
「雷蜘蛛はコイツで操られてんだ。スゲェだろ?」
堂本は啓助の顔の前に、碁石でも挟むような持ち方で紙の札を差し出す。
それは随分前、麗華救出の時に麗華のアビリティを遮っていたあの札だった。
「覚えてそうな顔してんじゃねぇか。じゃあコイツはどうだ?」
次に差し出されたのは錠剤のような物。啓助はこれにも見覚えがあった。
同じく麗華救出の時、赤羽との一戦で赤羽が服用した薬だ。
「札はお前が知っている通り、人間に付けりゃアビリティを封じ、獣に付けりゃ意のままに操ることが出来る代物。そしてこの錠剤は、服用すればアビリティの能力を短時間だけ強化するという薬だ」
堂本は錠剤と札をコートのポケットにしまうと、話を続ける。
「これで分かるように、俺らキルブラックの科学力、戦闘力はとても優れている。これ以上刃向かうようなら次に使者を送り殺すことになる。ついでに雷蜘蛛の相手をしてやってくれ、辻」
堂本はそう言い残すと、黒装束達を残して去っていった。
堂本が去った途端、それが合図だったかのように黒装束は雷蜘蛛に命令を出す。
雷蜘蛛の出す電流の電圧は段々と増し、突き刺さった矢が身体を剔(えぐ)るような痛みを啓助に感じさせた。
啓助は痛みのあまり、獣のような咆哮を上げる。
そしてその咆哮は、啓助の意識を掻き消していった。
辺りは黒色に染まっていた、鍾乳洞の時と同じように。
闇の中にはあの時と同じ声が響いていた。
「お前……中々に面白い力を持っているようだな。今回だけはその力を借りて助けてやろう。だが、次この力を使うにはお前がこの力を使いこなせるようになってからだ……」
啓助は自分が意識を失っていることに気付いた。
目が覚めた途端、剣を握り、前方の黒装束を切り裂いている。無意識にも戦っていたのだ。
上を見上げると、雷蜘蛛が一目散に逃げていく姿が見えた。
啓助は来待戦での疲れと同じ物を感じる。
記憶を一部失っていた、あの来待戦と同じような感じだ。
疲れを残しながらも、啓助は剣を鞘にしまう。
「ヒューヒュー!格好良いね啓助!」
後ろから囃(はや)し立てるように声が聞こえてくる。
何となく聞き覚えのある声に振り向くと、ヒロシ状態と化した洋の姿があった。
「お前……!何でここに!?」
「キルブラックの処理で派遣されたのさ。でも、君が処理っちゃったみたいだね」
啓助は少し気がかりになることを、洋に問いてみる。
「じゃあ、転送システムで来たんだよな……?」
「いや、歩きさ。歩きじゃないとナンパ出来ないじゃないか」
聞くんじゃなかった、啓助はそう思う。
そう思い、拍子抜けした瞬間、それを狙っていたかのように矢が啓助の足下に降りた。
162
:
ライナー
:2011/09/23(金) 14:14:22 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
PANDORAさん≫
コメントありがとうございます!
良いですよね、二人のガールズトーク^^
やっぱり麗華の票が多いな、麗華の出番を増やそう。
これからも頑張りますので、応援宜しくお願いいたします!!
163
:
PANDORA
:2011/09/23(金) 15:26:03 HOST:pw126198014032.42.tik.panda-world.ne.jp
もう一人の洋のキャラと普段の大食いの洋キャラのギャップに
はまりましたwww
ライナーさんのキャラ設定が面白いです!!
164
:
ライナー
:2011/09/24(土) 18:38:23 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
PANDORAさん≫
またのコメントありがとうございます!
キャラ設定は結構気を遣っている方なので、嬉しいです!
ではではwww
165
:
ライナー
:2011/09/25(日) 12:48:29 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
「だ、誰だ!」
啓助の声に、颯爽(さっそう)と何者かが舞い降りてくる。
「ご機嫌よう」
降りてきた人物は鉄幹門の娘、駒子の姿だった。
駒子は背に矢を背負い、片手には弓を握っている。
「と言っても、私駒子じゃないんです」
いきなり現れて何を言い出すんだ、啓助はそう思ったが、後ろでは筋肉質で女好きな洋(ひろし)が鼻息を荒くしてそれどころではなかった。
啓助は、洋の居る背後からとても嫌な予感がする。
「お嬢さん、ボクと一緒にお茶しませんか?」
案の定、洋は駒子の手を握ってナンパを仕掛けている。
「お、おい。洋……」
啓助が呆れながら洋を止めようとしている。すると、駒子の姿が段々と光を帯びて姿形が変わっていった。
「これでも良いと申されますか?」
「……!!」
次に言葉を発したときは、駒子の姿ではなくなっていた。
着物姿は変わりなかったが、水色に輝く髪と、同じ色の瞳、そして整った顔つきに凜とした口元が見える。
「はい、良いですお姉さん」
洋はそれでも動じなかった。年上でも、年下でも、相手から攻撃を仕掛けてきても女好きは変わらないらしい。にしても、洋の女好きには呆れた。
「では、妾を愛すと申しますなら、あの童をお消しになって下さい」
女は啓助の方を指差す。
焦った啓助は、洋を一瞬疑い一歩後退る。しかし、洋は女からソッと手を離し、クールな笑みを浮かべた。
「そう言うワイルドな女性は嫌いじゃないけど、仲間を傷つけることは絶対に出来ないな」
この時、啓助は一瞬でも洋を疑ったことを反省した。どんなに女好きでも仲間は仲間なのだ。
その言葉を聞いた女は、少し不機嫌そうな表情を浮かべて名乗りだした。
「妾はキルブラック左陣隊長、遠尾(えんび)。悲しゅうて仕方ありませんが、命令なので殺させて頂きまする」
「待て!じゃあ、本物の駒子さんはどうした!」
啓助の問いに、遠尾は表情を変えずに言う。
「甲水亀を操って、人を殺したとき、その時……」
言い方からして相手はあまり戦意がないようだ、しかし何かしら隠し持っているのも確か。
「それから妾が代わりを務めようと、変装して……」
遠尾の言葉はそこで止まった。洋が一直線に金槌を打ったからだ。
「あんな綺麗な女性を、こ、殺しただと!!」
「(……女好きにも程があるだろ)」
啓助は、洋が怒りを見せる趣旨が間違っているような気がする。
そしてあまりの女への執着心に、先程の『仲間』という言葉を前言撤回したくなった。
すると遠尾は途端に姿を消す。
「!!『ファスト』か!?」
あまりの速さに、啓助はそう呟く。
「いや、啓助。走り出す様子がなかった事から推測すれば、これは……時を操る『タイム』」
そう言っている間にも、様々な方向から矢が飛んで来た。
直線上に伸びた矢は、勢いよく洋の背に刺さる。だが、いつものように平然な顔で矢の金属部分を身体へと取り込む。
「今回の鉄は、油の使い方が荒いね。刃物の武器を使うときは切れ味が落ちないように、適量の油を使わないと」
洋は平然と鉄の批評をしているが、『メター』の能力者の鉄を取り込む部分を見るのは、あまり良い気持ちはしない。
気が付くと、先程と同じ場所に遠尾が立っている。
しかし今度は遠尾だけでなく、先程逃げていった雷蜘蛛も一緒だった。
恐らく、先程の雷蜘蛛は時を戻して呼び出した物だろう。そうすると、『タイム』のアビリターはかなり厄介だ。
「啓助!考えていても始まらない、ボクは雷蜘蛛の方を担当させて貰うよ!」
悩む啓助を余所に、洋は両腕を鎖へと変化させ、雷蜘蛛の体を縛り付けた。
そうすると、啓助の敵は絞られる。『タイム』を使う遠尾だ。
啓助は素早く剣を抜き、遠尾に向かって振り下ろす。
だが、やはり『タイム』のせいで軽々と躱されてしまった。
そして、啓助が呆気に取られていると、今度は四方八方から無数の矢が飛んでくる。
矢の攻撃は何とか冷気によって凍らせられたが、これでは攻撃の隙が出来ない。
「さ、どうしまするか?童よ」
先程よりも余裕の見える声が啓助の耳に入って来る、ただそれだけだった。
「啓助、洋刀の使い方が違うよ!」
洋は縛り付けている雷蜘蛛に電流を流されている。
「いや、お前大丈夫なの?」
電撃を受けながらも、洋は雷蜘蛛を叩き付け応戦していた。
「うん、脚が電流を流すアース代わりになっているからね。そのくらい啓助も分かるだろ?」
啓助は少し痛いところを突かれた、が、話しを戻し紛らわす。
「で、洋刀の使い方って?」
「ああ、それは……」
166
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/09/25(日) 13:45:36 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
コメントさせてもらいますね^^
ああ、駒子さんが……結構好きだったのに…。
最近出番無いなー、と思ってたら洋くん出てきましたねw
それにしてもスパルタ少年とツンデ麗華はいつ出るのか((
続きが楽しみですw
頑張ってくださいね!
167
:
ライナー
:2011/09/25(日) 14:45:01 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
竜野翔太さん≫
コメントありがとうございます!
駒子さんは確かに急な展開となりました……^^;
洋はあまりにも出番ないんで、出させて頂きました。これからも出番が増えると良いですが(笑)
乃恵琉と麗華の登場はもうすぐです!
是非、啓助と麗華の戦闘シーンを楽しみにして下さい!
168
:
ライナー
:2011/09/25(日) 17:38:21 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
「洋刀って言うのは、切れ味を重視する日本刀とは違い、突き技が重視されるんだ。だから切っ先で斬りつけたり、そのまま突いたり、するのさ!」
「ああ、そうなんだ……」
啓助は曖昧な返事を返す。
何故かというと、洋はアドバイスをしただけで、全く助けようとする動きを見せなかったからだ。
やはり、敵は敵でも女には手が出せないと言うことだろうか。
そう考えている間にも、啓助の周りからは無数の矢が飛ぶ。
「(またか……!)」
啓助は剣を真上に振り上げ、刀身に巨大な花を咲かせるように氷を作り出した。
巨大な氷の花は、矢の全てを弾くと同時に消される。なるべくアビリティを節約しなくては、いつまで戦闘が続くか分からないのだ。
剣をゆっくり下ろすと、今度は背後からオーラによる気配を感じる。
気配に向かって気付かれないように、剣をゆっくりと持ち上げる。そして剣の切っ先を後ろに向けた。
「(切っ先で斬りつけ、突き技を重視………)」
心の中でそう呟き、切っ先を徐々に上げて行く。
剣の目測と、気配の感測を頭の中で計っていった。
よく見てみると、剣の切っ先は刀身全体の3分の1ほどあり、戦闘方法は洋の言うとおり突きが主流らしい。流石『メター』の能力者と言うべきだろうか、伊達に鉄を扱っているだけのことだけはある。
気配は気を反らせる為だったのか、前方に何十本かの矢が啓助に向かって来た。
啓助は、冷気で矢を全て薙ぎ払うと視線を背後に向けた。
それと同時に、剣の切っ先が遠尾の方へ伸びる。
剣の突きは神速を思わせるような速さだったが、既に遠尾の姿はなかった。相手も状況に応じられるように、相当な反射神経を鍛え持ち合わせているようだ。
「(アイツ倒すには、相手が時間を止められない隙を作り、それを突く……)」
再び啓助は心の中で呟く。
すると、またも同じように辺りから矢の雨が降って来た。
「(……!同じ戦法なのに、面倒臭いな)」
啓助の体力は、アビリティを使うごとに減っていく。
そして段々と使う力を増していかなければいけないのだ。来待、甲水亀戦と同じように、多くのオーラを。
黒い景色が浮かび上がった。
その中で、青く丸い光が薄らかに見える。
「……お前は力をここまでも制御できないとはな」
「おい、どういう事だ?話しが読めねェよ!」
啓助は声の相手に呼びかける。
「お前は自分の力を制御できなければ、いつか死ぬ」
「誰だよ、誰なんだよ一体!!」
啓助の問いに、声の相手は最後に呟いた。
「……ただのしがない騎士剣だ」
次の瞬間、啓助はもう啓助ではなかった。
獣のように目をひん剥き、噛み締めた歯を見せながら物凄い量の冷気を纏っている。その冷気は本物の獣を思わせるような勢いだった。
「あ、アビリティに呑まれた……!?」
今まで平然とした表情を見せていた洋は、ここで初めて驚きの表情を浮かべる。
「グオオオオオオォォォォォッ!!」
獣のように咆哮を上げた啓助は、剣を片手に物凄い跳躍力で跳び上がった。
人からすれば何故跳び上がったのかは不明だ。しかし、獣のようになった啓助は違った。跳び上がり剣を構えた先には、遠尾が現れたのだ。
「何っ!?」
遠尾も驚きの表情を見せている。どうやら時間を止めて移動したものの、時間を戻した瞬間に啓助が立ちはだかったのだろう。
啓助の持つ剣の切っ先には、強い冷気が込められいた。そして啓助が切っ先を遠尾の方へと突き出すと、大量のガラスが破片の破片まで割れるような音が裏路地を突き抜けて響き渡った。
そこからは悲惨な光景が広がった。
遠尾の着物には赤や、赤に染まった氷が取り巻き、アスファルトの地面にまるで流星のように落ちて行く。
墜落した遠尾の体はアスファルトを削り取り、アスファルトの割れ目にその体を転がした。
「グオオオオオオオォォォォォッ!!」
啓助は咆哮を上げ、地面に着地してもなお斬撃を遠尾に食らわせる。
遠尾の体はバラバラになり、生きているかとかどうかではない。
「止めろ啓助!これ以上やって何の意味がある!」
洋は啓助の方へと駆け寄って、その行動を止めようとする。しかし、啓助の纏っている冷気はとんでもない圧力で、近付けば近付く程身体が凍り付けになっていく。
今、啓助を止められる者は誰もいなかった。
169
:
ライナー
:2011/10/01(土) 16:49:35 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
洋は悲惨な光景の向こうに、何者かが歩いてくるのを察した。
足音が徐々に近付いてくると、洋は悲惨な光景を余所に足音の方を振り向く。
ゆっくりと路地の影から姿を現したのは、モノクロのコートを身に纏い、白と黒が混ざった髪をツインテールに結んだ小さな少女だった。
少女は沈黙して人の原形を失った遠尾と、暴れ狂う啓助を見た。
「あーあ、オモチャじゃないんだからさー!」
そう言うと、少女はコートの懐から白い紐を取り出す。
「白闇ちゃんの正義のテッツイ食らえー!」
少女は羽のように軽そうな紐を、鞭のように大きく撓(しな)らせ啓助に向かって叩き付けた。
叩き付けた白い紐は、啓助の体に吸盤のように張り付き、強大な冷気を吸い取っていく。
「フー、遠尾はいいや死体だし。せっかく黒明と差を付ける大チャンスだったのに〜!ま、『タイム』のアビリティは時間を戻しても使用回数少ないし、戻る前の時間の記憶がたまに残ってる人とかいるし、しょーがないか」
独り言を立て続けに言う少女は、洋の方に視線を向けて言った。
「ねーねーそこのバンダナのお兄ちゃん、あの『フリーズ』のお兄ちゃんのお友達?」
洋は戸惑いながら曖昧に返事を返す。
「だったら危ないかもね、あのお兄ちゃんのアビリティは頭脳を持っちゃったみたい」
少女の言葉に、洋の顔がさらに曇る。
「……君は一体誰なんだい?」
少女は、洋の問いに自信ありげに言った。
「私は、キルブラック陣位総司令隊長補佐(じんいそうしれいたいちょうほさ)の白闇(はくあん)ちゃんでーす!」
洋はその返答を聞くと、右腕をハンマーに変え踏み出そうとする。
「今動いて大丈夫?沙斬を倒した井上洋君ってのは確認済みだけど、隊長補佐は一瞬で倒されないよ?」
余裕の表情を見せる白闇に、洋は汗を掻き歯を強く噛み締めながらハンマーを右腕の形へと戻した。
「それじゃー、次戦う時を楽しみにしているから、その時は一緒に遊んでね、おにーいちゃん!」
黒い世界に、電灯の白い光が降り注いでくる。
気が付いて目をカッと開くと、啓助はカプセルのような物の中に入れられ、何本ものコードに繋がれていた。
暫くして電子音がすると、啓助に繋がれたコードは外れ、カプセルが開く。
啓助はカプセルから出ると、3番隊隊長矢杉がカルテを持って近付いてきた。
「やあ、お早う。良い睡眠は取れたかな?」
「あ、ええ、まあ……」
矢杉はいつもと何ら変わりはない啓助を見て、カルテの方へ目を移す。
「で、気を失う前は何があったんだい?」
「え?えーと……」
頭を掻きながら考える啓助に、矢杉は言った。
「ハハ、まだ疲れが溜まっているようだね。医務室で休んでくるといいよ」
啓助は曖昧に返事をして、医務室へと足をヨタヨタさせながら向かっていく。
医務室でベッドを借り、すぐさま潜ると暗闇の声のことを考えていた。
すると、ベッドのカーテンの向こうから声が聞こえて来る。
「おーい、辻!大丈夫?」
啓助の耳にそう言葉が届くと、暖簾(のれん)くぐりをするように麗華と乃恵琉が入って来た。
「洋から聞きましたよ、何やら大変だったようですね」
2人はベッドの近くに備え付けてある椅子を、自分の側まで持ってきて腰掛ける。
「いや、そうにはそうなんだが、記憶がハッキリしてねぇんだ……」
乃恵琉は持参した缶コーヒーのフタを開け、一口飲んで言った。
「洋からの話しだと、キルブラックの幹部との戦闘中にアビリティに呑まれたみたいですね。あ、コーラ入ります?」
乃恵琉は、啓助にまだ冷え切っているコーラを差し出す。
「いや、いい……(この眼鏡マジでコーラ買って来やがったよオイ!)」
啓助はそれを断った。
「話を戻しますが、アビリティに呑まれるということは滅多にありません」
乃恵琉は近くのテーブルにコーラを置いて言った。
「んじゃ、どうやってアビリティに呑まれるんだよ」
「それは「それは、アビリティが頭脳を持って行動しようとするからよ」
乃恵琉の言葉を、麗華が断ち切るように話しを持って行く。
話しを持って行かれた乃恵琉は、目ならぬ眼鏡を曇らせ言葉を失っていた。
「アビリティは、頭脳を持つとドンドン強くなっていくけど、宿っている体の免疫や、身体能力よりも強くなるとその体を乗っ取ろうとするのよ。まあ、アンタは弱いからすぐに殺されるだろうけど、明日の試合楽しみにしてるから。じゃ」
麗華はそう言うと、カーテンをもう一度暖簾(のれん)くぐりをし、去っていく。
もう前日か、啓助はそう呆気に取られているが、ベッドの側には落ち込んだ乃恵琉がまだ座っている。
啓助は、慰めようとテーブルに置かれたコーラを乃恵琉に差し出した。
「コーラ、いるか?」
「いえ、遠慮しておきます……」
170
:
ライナー
:2011/10/02(日) 17:46:23 HOST:222-151-086-020.jp.fiberbit.net
23、気強いあの娘は六刀流
試合当日、午前5時と早朝だったが啓助と麗華は既に同情へと来ていた。
東側の位置には、麗華が折り畳み式のナイフを出し入れし、慣れた手つきでジャグリングしている。
西側では、啓助が丁寧に剣を磨いていた。
「あーら、今更になってメンテナンス?そんなの昨日のうちに終わらせておくのが普通でしょ。今の時間はウォーミングアップを優先するべきよ」
余裕そうに麗華は言う。
啓助は少しムスッとして、剣の付け根に付いた2本の刃を拭いて、素振りを始めた。
「昨日は体休めるだけで精一杯だったんだよ!」
道場の端では沢山の門下生が並び、差し詰め野球観戦のような賑わいを見せている。
その観客席のような端で、道場師範の英治が座り、その隣には睨み合うように乃恵琉が座っていた。
「いよいよですねー」
英治は乃恵琉の隣で、相変わらずの笑みを浮かべ言う。
「本当、長かったですよ、この期間」
一方、乃恵琉は英治に似ず、顔を顰(しか)めていった。
そんな静かに火花を散らす隣で、洋はいつものようにロールパンを頬張り、さらにその隣では恵が可愛らしく座っている。
しかし、恵は心なしか啓助の方へ微かに目線が寄っていた。
「ウィーッス!それじゃそろそろ時間なんで、両方とも定位置へお願いするッス」
どうやら審判は、門下生と言うことで健二らしい。道場にいる面々は久しかったが、啓助はそのようなことは考えている暇もなかった。
「んじゃ、ヨーイ……」
健二の右腕が振り上げられ、啓助は剣を片手に持ったまま唾を呑む。
「始めっ!」
その途端、麗華は片手に3本ずつ握ったナイフを柄から突き出し、啓助に向かって走り出す。
その合計6本の刃は白く輝き、まるで白鳥の翼を思わせるようだった。
輝かしい光景も束の間、咄嗟に啓助は剣の新刀を向け、攻撃を防ぐ。
ワイングラスを合わせたような高い金属音は、麗華の意気込みを表示していた。
「(当たりが軽い……なめて掛かりやがってる!)」
「麗華は本気を出していないようですね……」
乃恵琉の言葉に、洋はロールパンを食べる手を止め聞いた。
「え〜、何でさ〜?」
「いくら刃物同士だからといって、あそこまで高い音を出すには力を抜くしかありませんから」
今度は、恵が乃恵琉の言葉に反応する。
「それじゃあ、啓助君不利なんだ……」
金属音と一緒に跳ね上げられた麗華の片手は、防御した啓助の目を一瞬奪った。
そして、その一瞬の隙を狙い、もう片方の手で追撃を行う。
白鳥の翼撃のような一発は、素早く啓助の懐を剔(えぐ)り込んだ。
「グッ……!!」
「詰めが甘いわね、辻! まあ、作戦に面白い具合で引っ掛かるから楽しいけど!」
一撃を食らい後方に飛んだ啓助は、足に踏ん張りを入れ、飛ばされる勢いを止める。
麗華と距離を取った啓助は、剣に冷気を込め、刀身に氷を纏わせた。
その剣は、巨大な氷柱を思わせるほどの大きさを持っていた。
「良い物持ってるんじゃない!あの『凍界裂剣(とうかいれっけん)』ね!」
「『凍界裂剣(とうかいれっけん)』は騎士が持っていたときの名前、俺の手にあるときは本名で呼んで貰うぜ!」
啓助は剣の切っ先を前方に向けた構えで、麗華に急接近する。
麗華に氷を纏った切っ先が近付くに連れ、剣全体が氷の上からさらに冷気を帯び始めた。
「本当の名は……」
氷と冷気の二重の威力を持った切っ先は麗華を襲った。
「『氷柱牙斬(つららげざん)』だ!」
切っ先が襲った瞬間、結晶の吹雪が吹き荒れるような轟音を響かせると、2人は土煙ならぬ雪煙の中へ消えていった。
171
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/10/02(日) 19:11:05 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
コメントさせてもらいますね^^
啓助って結構暴走しますよね…何かそこが不安なんですけど…
そしていよいよ啓助VS麗華だー!
個人的には麗華に勝ってほしいけど、ストーリー的には啓助だろうな。うん。
この戦いで、麗華→啓助←惠
みたいになってくれたらいいな〜w
172
:
ライナー
:2011/10/06(木) 22:57:09 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
竜野翔太さん≫
コメントありがとうございます!!
啓助暴走ですか、それはまた色々あってから解決させてやりたいですね(笑)
やっと啓助VS麗華になりましたね。ここまで来るの長かったー!
どうですかねー?分かりませんよ〜?ま、次の更新を楽しみにしていただけたらと思います。
おお!啓助両手に花!まさにウハウハじゃないでs((殴
作者なのに変な次元に飛び込んでしまいました(笑)
麗華→啓助←惠はリア友にも言われました^^;
どうなりますかね〜?恋愛風刺はそこまで考えていませんが、啓助ウハウハも良いk((殴
とりあえず、そちらも参考にさせていただきます^^
ではでは,コメントありがとうございましたwww
173
:
ライナー
:2011/10/07(金) 23:23:39 HOST:222-151-086-019.jp.fiberbit.net
訂正です。
≫170の3行目
同情→道場です
174
:
ライナー
:2011/10/08(土) 00:35:10 HOST:222-151-086-019.jp.fiberbit.net
暫くして雪煙が晴れると、麗華は『氷柱牙斬(つららげざん)』の切っ先を片手に握った3本のナイフで抑えている。
「辻……アンタにしては、積極的に攻撃して来るじゃない……!」
麗華はそう言い、抑えた剣を弾くと一緒に弾かれた啓助の身体に向かって、ナイフの刃先を迫らせた。
咄嗟に啓助は刀身を前に突き出し、攻撃を防ぐ。
「それじゃ、丁寧に武器の名前教えてもらったし、私の武器も紹介しようかしら!」
再び交わる刀身を弾き、麗華は言った。
「私の六刀ナイフは『白鳥夢掻(しらとりむそう)』よ!」
弾かれた衝撃で、啓助は先程よりも後ろに飛ばされると、麗華は両手に持った6本のナイフを交差させた。
「おや、水野さんはもう必殺技ですか」
英治は乃恵琉に微(かす)かに笑みを見せながら言った。
「もう……ですか」
麗華の交差させたナイフは白い光を帯びて行き、まるで湖に住む白鳥を思わせるかのように美しかった。
「{白羽刈剔(しらはがいてつ)}!!」
その言葉が麗華の口から放たれると、素早く啓助の剣を通り越し、交差したナイフを引き裂くように斬りつける。
啓助の身体に白い×状のラインを付けて、その部分から剔り込まれるような痛みを痛感させられた。
「グァッ!!」
啓助は痛みを耳で感じさせるような声を上げる。
一方麗華は啓助に背中を見せるように着地し、白鳥が翼を休めるようにナイフの刃先を斜め下に向けていた。
そして、その状態から動かない様子を見ると、勝ちを確定しているようだった。
痛みのあまり、啓助は片手に握った剣を落石のように鈍い音を立てて落とす。
さらにそこから膝を突き、攻撃された胸部の部分を必死に抑えていた。
「こ、これは……」
乃恵琉が額に汗を浮かべ、眼鏡を掛け直す。
「この{白羽刈剔(しらはがいてつ)}という技は、腕を内から外に動かす力を利用した物です。腕を外から内へ動かすよりも効率的な上に、念動の威力も加わっている必殺技なんですよ。啓助君立てますかね、どうです乃恵琉?」
笑って余裕そうにしている英治をチラッと見て、乃恵琉は言った。
「大丈夫ですよ、父さん」
啓助は、微量に震えながらも剣を杖代わりにして立ち上がる。
啓助が立ち上がったのを察したのか、麗華は振り向き強気な笑みを見せた。
「そう来なくっちゃね!これで終わりは悲しいわよね!」
ゆっくりと啓助が立ってみせると、麗華は再び『白鳥夢掻(しらとりむそう)』を構え急接近してくる。
白い念動を纏った刀身は、再び啓助の胸部に剔り込んだ。
啓助は弱った体でダメージを受けながらも、攻撃の衝撃を利用し、幾らか距離を取る。
「どう?私の『白鳥夢掻(しらとりむそう)』の威力は……ってもう元気ないみたいね。そろそろ終わりにしましょうか」
それもそのはず、{白羽刈剔(しらはがいてつ)}の威力は計り知れない物で、啓助のほとんどの体力を奪っていた。
すると、麗華は指の間で握ったナイフを交差させ、白い念動を送り込む。{白羽刈剔(しらはがいてつ)}の構えだ。
それを察した啓助は、力を振り絞り、剣に強い冷気を込めた。
「(こんなんでくたばれるか……!)」
175
:
ライナー
:2011/10/08(土) 16:17:51 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
啓助は冷気を込めた剣を前に構える。
麗華の攻撃{白羽刈剔(しらはがいてつ)}を予想していたが、それは啓助の思いこみだった。
{白羽刈剔(しらはがいてつ)}の交差させる構えから、麗華は大きく両腕を開き、翼のようなナイフを広げる。
「{白鳥飛術(しらとりひじゅつ)}!!」
麗華の口からそう発せられると、翼を羽ばたかせるようにナイフの刀身を振り下ろした。
「………!!」
啓助はその瞬間目を疑った。
まるで、では無く、本当に白鳥の如(ごと)く飛んでいるのだ。
観客席では、乃恵琉が苛立(いらだ)ちを見せ微(かす)かな貧乏揺すりをしている。
「ここまで技を教え込んでいるとは、流石ですね父さん……」
見るからにも余裕の無い乃恵琉に、英治は笑みを見せ言った。
「ええ、彼女はとても筋が良いので技を伝授しやすかったですよ」
「今度は私の番よ、覚悟しときなさい!」
麗華は広い道場内を巧(たく)みに利用し、急降下しては啓助の体を切り裂いていった。
斬撃を受け、怯むに怯む啓助に、容赦なく麗華の『白鳥夢掻(しらとりむそう)』が剔り込む。
「(くそっ……!攻撃を食らえばまた攻撃、全く隙がない……!)」
力強く握っている剣は、その役割も空しく斬撃一つ防いでいない。
何故なら、『氷柱牙斬(つららげざん)』は洋剣、つまり片手剣のため柄が短く、両手で扱うよりも難しく防ぐことが出来ないのだ。
そんな絶対不利的状況で、啓助の思考に電撃のようにひらめきが浮かぶ。
「(確か、洋剣は騎士などが使った物、片手剣ならもう片方の手を使うためには……!!)」
麗華は啓助に空中で斬撃を与えると、再びターンして攻撃態勢に入った。
斬撃の痛みを堪(こら)えると、剣を持たない左手に冷気を集める。
その事を知らず、麗華は白い翼のような念動を纏うナイフを下ろし、啓助に急接近していた。
そして、次の斬撃の瞬間、麗華の予想していなかった感覚が刃を下ろした片手を襲う。
「……!!」
「へっ、残念だったな!」
啓助の身体へ剔り込むのとは違う、甲(かん)高い金属音を立てて、麗華は床に着地した。
そして麗華はある状況に不意を突かれた。
麗華の片手からは、2本の『白鳥夢掻(しらとりむそう)』が消えている。
ゆっくりと立ち上がり、啓助に強気な笑顔を見せる麗華だったが、再び不意を突かれ表情が硬直した。
「ホント、しぶといわね、辻って……!」
麗華の視線が向く方向には、左手に氷の盾を持った啓助がある。
さらに麗華の視線をズームしてみると、啓助の氷の盾に麗華の『白鳥夢掻(しらとりむそう)』があるではないか。
「しぶとさだけが自慢だってな!」
「ほう、やりますねー、啓助君も」
英治は意外な展開に歓声を上げる。
そして、乃恵琉も同様に、歓声の声を上げた。
「これは僕にも予想外でしたよ、父さん。にしても普段は足遅い人が逃げ足だけ早いように、啓助君は機動力が備わっているようですね」
しかし、性格なのか歓声を上げても、どことなくクールな雰囲気が乃恵琉を包んでいるような気がする。
「ハハハハ、面白いことを言いますね、乃恵琉。この勝負、差し詰め 念動の白鳥(サイキスワン)VS 氷の騎士(アイスナイト)と言ったところですかねー」
英治も父の威厳を見せんとしているのか、冗談で張り合っている。
そして、その光景を見て惠は思っていた。
「(本当は凄く仲良しなんだなぁ)」と。
啓助は、自慢げな顔をしてから、氷の盾に刺さった『白鳥夢掻(しらとりむそう)』を抜き取り、麗華に向かって投げた。
一直線に投げられた『白鳥夢掻(しらとりむそう)』は麗華の手の中に戻り、ナイフとして光を輝かせる。
「返してくれるの?随分と優しいのね」
「勝負はフェアじゃないとな!」
啓助の一言に、2人は武器を構え直し、睨み合った。
まるでこれからが勝負だと言うように。
176
:
ライナー
:2011/10/08(土) 16:45:39 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
〜 作 者 通 信 〜
随分と久々な作者通信です^^;
最近はバトル一辺倒になってしまい、そろそろ読者のことも考えなければと焦っております。
とりあえず、啓助VS麗華が終わったらコメディー、恋愛路線を走っていこうかと(笑)
では、今回はキャラクターの個性について語りましょうか……
啓助の個性をストーリーを作る前に考えていたのですが、何かごく普通の少年になってしまいました……^^;逆にそれが個性になっていれば幸いなのですが。
照れ性の恵、大食いの洋(よう)と変化後の女好きな洋(ひろし)、秀才几帳面な乃恵琉、姉御肌(ツンデレ)な麗華。
笑顔のさわやかなで乃恵琉の父親英治、何かと軽々しい健二……などなど、個性を作るのは非情に大変です。
仲間でこんなに性格があると敵はさらに考えるのが大変です^^;
しかし、これからも新たな個性を見いだしたりして、読者様を楽しませていきたいので、宜しくお願いします!
あ、コメントも……(オイッ)
177
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/10/08(土) 17:48:33 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
コメントさせていただきます。
まずは一言。
麗華ちゃんカワユス((死
何か武器の名前とか技名とかカッコよすぎて、惚れちゃいました!
恵も可愛いと思うけど、やっぱり。
麗華ちゃんカワユs((
とりあえず、啓助VS麗華と、この話の後に入るらしい恋愛路線に期待しています!
頑張ってくださいね^^
178
:
ライナー
:2011/10/08(土) 22:15:00 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
竜野翔太さん≫
コメントありがとうございます!!
な、何か凄い熱狂ぶりですね!ここまで受けが良いとは……麗華の魅力恐るべし(笑)
武器名ですか?結構竜野さんと似た感じの作りになっていたので、少々焦っていたのですが、気に入って貰えて良かったです。
恵も可愛いですよね、もちろん麗華も……^^;
この後の恋愛路線はただいま試行錯誤中です!
麗華ちゃんだそうかな(笑)
ではではwww
179
:
ライナー
:2011/10/08(土) 23:40:44 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
24、念動の白鳥(サイキスワン)VS氷の騎士(アイスナイト)
睨み合った状態で、麗華は{白羽刈剔(しらはがいてつ)}の構えに入る。
「(………あ)」
この時啓助はあることに気付いた。
麗華には{白羽刈剔(しらはがいてつ)}、{白鳥飛術(しらとりひじゅつ)}という必殺技を持っている。しかし、啓助は今までに基礎体力作りや、剣術を1から学んだため必殺技を持ち合わせていない。
真正面から当たるのはかなり危険だ、そう考えた啓助だったが、2つの技はどちらも攻撃範囲が広く躱すことが出来な事が言えた。
「(クッ……体力的にも次を受けるのは痛いな、どうすれば……)」
考えている間にも、着々と麗華のパワーチャージは溜っていく。
「{白羽刈剔(しらはがいてつ)}!!」
そしてついに技は解き放たれ、急接近した。
遣り場のない啓助は、氷の盾に冷気を込め麗華にそれを向ける。
それと同時に×状の白いラインは、氷の盾の中で光を多方に反射させた。
「(うぅっ……!!)」
光が反射することとは余所に、技の威力は盾を通じて啓助に襲いかかった。
足で踏ん張りを効かせ、左手には精一杯の冷気を盾に送っている。
冷気は盾を修復しようとするが、それよりも先に{白羽刈剔(しらはがいてつ)}の威力が盾にヒビを入れて行く。
ヒビが入っていった氷の盾は、次第に全体にヒビが通り、形を砕かれていった。
「んじゃ、オシオキされて貰うわよ!」
氷の盾が完全に消え去ると、その衝撃で啓助は中に低く飛ばされる。
そして、啓助のほんの少しの隙を見逃さなかった麗華は、攻撃のため下に下ろした刃をアッパーするように追撃した。
さらに追撃された啓助は、顎(あご)を上げて高く宙を舞う。
「この試合の楽しみ様……僕達の目的忘れていますねー」
観客席では、英治が絶えない笑みを見せて言う。
「あ、でも良いんじゃないですか?利用されてるって感じたら、麗華怒って止めちゃいそうだし……」
恵は、啓助の無惨な姿から目をそらすように会話に参加する。
「そうですよ、こんなところで止められては困ります。僕が勝てば父さんは帰宅、父さんが勝てば引き延ばしという大切な試合なんですから」
啓助は頭から床に落ちると、口から吐血し、掠(かす)れた呻(うめ)き声を発した。
「……吐血しちゃったし、この試合、私が勝ちよね?審判判定は?」
「!!」
麗華の呼びかけに、健二は目を奪われた。一瞬で啓助をダウンに持ち込んだのだ、無理はない。
「どうやら僕の勝ちかなー」
英治は満足そうに言う。
「あ、ああ、あああぁぁぁぁ……あれ大丈夫なのかな!?」
恵は全身を振るわせて、半分涙目になっている。
「……母さんに何て言えばいいのか」
乃恵琉は目線を下に向け、悔しそうな叫び声を上げた。
「うーん、ここで食べるパンも美味しかったんだけど、ってあれ血じゃないよね?」
洋は吐血した姿に気付いていないのか、能天気な言葉を発している。
「ちょっと待って下さい、父さん。あの赤い液体……」
「待てよ、まだ終わっちゃいねぇ……」
啓助は剣を杖にしてゆっくりと立ち上がる。
「何言ってんのよ!吐血は流石にまずいに決まってんでしょーが!」
麗華は『白鳥夢掻(しらとりむそう)』の刃を柄の部分に折りたたみ、遠回しな勝ちを宣言していた。
その宣言に啓助はフッと嘲(あざ)笑いを見せた。
「この赤い液体をよく見てみろ!」
手に付いた赤い液体を、審判の健二に見せる。
「こ、この赤い液体は……」
啓助がそう言い掛けると、道場内は一気に静まりかえった。
180
:
ライナー
:2011/10/09(日) 14:14:51 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
「これは、試合前の朝飯に食ってきたオムライスのケチャップだ!」
確かによく見てみると、血というには少しドロドロした感じがある。
その瞬間、道場内は凍り付くように静まりかえった。
流石は『フリーズ』のアビリターと言うべきか。
「ケチャップだ!」
周りの静けさに、啓助は再度言い放つ。
「いや、聞こえてるわよ! って言うか試合前に何重たそうな食べ物食べて来てんのよ! それに汚いし!」
「それがさー、ユニオン入ってから一度もオムライス食ってなかったなーって思ったら急に食いたくなっちゃってさー」
「『急に食いたくなっちゃってさー』じゃないでしょーが!! どんだけ私のことなめて掛かってんのよ! てかもう拭きなさい!」
啓助は服の裾で適当に拭くと、健二に試合続行を志願した。
「あー、じゃ試合続行でー……」
「焦りましたよ全く……というか、むしろ負けて貰った方が清々(すがすが)しく終れた気がします」
乃恵琉が呆れ顔でため息を吐く。
「オムライスかー、ボクも食べに行こっと」
自前のパンを食べ終わったにも関わらず、洋は試合を余所に道場を出て行った。
「参りましたよ、全く……」
そして、再び乃恵琉はため息を吐いた。
「……まあ、いいわ。その方が倒し甲斐があるわよね」
麗華が、言葉を発する度に悪魔のような笑みを浮かべる。
啓助はこの瞬間、負けた方が良かったと垣間見た。
とにもかくにも試合は続行、麗華は『白鳥夢掻(しらとりむそう)』を握り直し戦闘態勢に入る。
「行くわよ!」
刃をナイフの柄から素早く出すと、麗華は啓助目掛けて『白鳥夢掻(しらとりむそう)』の刃を薙ぎ払った。
啓助は、それを見越したかのようにバク転して攻撃を躱す。
「でっかい剣持ってるくせに、身軽なんだから……!」
麗華は『白鳥夢掻(しらとりむそう)』の刀身に念動を纏わせて、追撃を試みる。
しかし、啓助は剣を背中に刺した鞘に戻し、挑発をするように紙一重で躱していった。
「なるほどなるほど、啓助君も考えましたね」
英治は、いつもの笑顔と腕組みをしながら感心している。
乃恵琉は、英治の言葉を分かっているとでも言うように黙って試合に目を向けていた。
それとは裏腹に、恵は英治の顔を覗き込むようにしてクエスチョンマークを浮かべている。
「説明しましょうか?」
恵がぎこちなく「ハイ」と言うと、再び試合に目を向けながら説明しだした。
「彼が今使っているのは『怒車(どしゃ)の術』という実際に使われていた忍術を使っています。その効果は相手を挑発させ、冷静な判断力を失わせる物なんですよ」
恵は英治の説明で状況を理解し、感心していると、乃恵琉が今日何度目かの呆れ顔を見せて言う。
「まあ、啓助君は『怒車(どしゃ)の術』と分かって使っているとは思えませんがね」
翼撃のような連続攻撃を軽々と躱されると、麗華は急にその行動を止めた。
「どうした、もう諦めたか?」
啓助が声を掛けると、先程まで余裕を見せていたとは思えない息の荒い麗華がいる。
「フゥ……違うわよ。{白鳥飛術(しらとりひじゅつ)}!!」
麗華は体勢を立て直し、両手を大きく開くと、ナイフを翼のように羽ばたかせた。
飛び上がった麗華に啓助は剣を構え、視線をロックオンする。
水を空中で切るように、麗華は片手のナイフを下ろし急接近する。ここまでは前回見せてきた攻撃方法とは同じだ。
つまり、啓助は躱せないと判断し同じ方法で攻撃していると言うことだ。
「氷の盾を忘れちゃ困るぜ!」
啓助はやはり前回と同じように、左手に冷気を込めて氷の盾を作り出す。
そして、麗華の攻撃を見計らって氷の盾を『白鳥夢掻(しらとりむそう)』に突き出した。
その瞬間、氷の盾に触れた『白鳥夢掻(しらとりむそう)』は、低く強く響いた金属音を鳴らし、まるで砂山を崩すように砕いていく。
「何ッ!?」
咄嗟に『氷柱牙斬(つららげざん)』を構えた啓助は刀身に冷気を込め、柄の握りを強めて3本のナイフへとぶち当てた。
181
:
ライナー
:2011/10/09(日) 18:28:05 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
互いにぶつかり合った武器は激しい金属の加音を響かせると、道場内に竜巻のような衝撃波を生み出した。
両者はそこで武器を離し、試合直前と同じ幅で距離を取る。
そして、両者は同時に武器を構え直した。
「ハァ……やるじゃねーか!」
「フゥ……当たり前でしょ、アンタより弱い奴なんて見たこともないわ!」
しかし2人ともすでに息は荒く、激しく肩を上下させている。
互いにその状況を確認すると、それと同時に同じ事を心の中で呟いた。
「「(最後の一撃で……決まる!)」」
「もう2人は体力が限界そうですねー」
英治は笑みを浮かべながら言う。
「そうですね、しかし啓助君はよく麗華にここまで戦えましたよ」
乃恵琉はここまで来て、少し弱気な言葉が出た。
「お、乃恵琉ギブアップさせますか?」
乃恵琉の言葉に英治は問い質(ただ)す。
「ここまで出来たんです、もう後には引けないこと、啓助君が是が非でも引かない事は父さんもご存じでしょう?」
両者は構えた武器にゆっくりとオーラを纏わせていた。
「(私をここまで追い詰めるなんて、辻の奴結構マシな修行したんだ。でも、今回も譲らせない!)」
麗華は交差させた6本の『白鳥夢掻(しらとりむそう)』を段々と白い念動に包んで行く。
「(……正直ここまで出来るとは思ってなかったが、これが最後ならやるしかない! 思いつきの必殺技をなめんなよ!)」
一方、啓助は剣の切っ先を前に出した構えで刀身全体に冷気を込めた。
「2人とも怪我しなければいいけど……」
恵は試合を見つめながら握りしめた手を振るわせている。
「関原さん、これは真剣勝負ですから……多少の怪我はあると思いますよ」
乃恵琉は何か言いづらそうに言葉を放った。
この場で「もしかしたら大けがをし兼(か)ねない」なんて言えないからだ。
にしても、洋は未(いま)だにオムライスを食べに行ってから返ってきていない。
両者の持つ光り輝く武器は、互いを「試合終了」に持ち込ませるような鋭さがあった。
そして、2人はアイコンタクトを交わすと同時に足を踏み出した。
「{白羽刈剔(しらはがいてつ)}!!」
麗華の『白鳥夢掻(しらとりむそう)』は6本全てが強い白光に包まれ、白鳥のような翼を再び現し、啓助に接近して行く。
「{凍突冷波(とうとつりょうは)}!!」
一方、啓助の持つ『氷柱牙斬(つららげざん)』には纏われるだけの冷気が纏わり、月のような青白い光が放たれる。
互いの刃と刃がぶつかり合い、激しい金属音と念動と冷気による吃音が響き渡った。
過ぎ去るように攻撃し合い冷気と念動は、互いを弾き合い道場内を光で包んだ。
道場内を包む光が少しずつ消えていくと、2人は距離を取って背を向けている。
ここからが問題だ。必殺技をぶつけ合ったは良いが、その威力に耐え相手を倒したのはどちらか一方になるのだから。
道場の観客席では、見ている者全てが緊張感で息を呑む。
そして、その静けさが漂った後、床に膝を突く音が鳴った。
182
:
ライナー
:2011/10/10(月) 16:51:25 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
膝を突く音の後には身体が倒れる音が響く。
そして、決着が付いた。
勝ったのは―――
「う、ウィナー水野麗華!」
健二の判定が道場内に響き渡る。
その瞬間、観客席からは麗華を称(たた)える歓声がドッと沸き上がった。
倒れたのは、啓助だったのだ。
「あ、啓助君、負けちゃった……」
恵は悲しそうに呟く。しかし、一番悲しいのは乃恵琉だろう。拳をグッと強く握り、唇を噛み締めている。
「………」
乃恵琉は暫く沈黙し、啓助の倒れた姿を見て呆れたようなため息をまた一つ吐いた。
そのため息は、試合中の啓助を貶(けな)すようなため息ではなく、笑みが溢れているため息だった。
「乃恵琉君、僕の勝ちのようですね」
英治は満足そうな笑み浮かべて、乃恵琉に言う。
「ええ、完敗ですよ、父さん」
そう言う乃恵琉の表情に、勝負に負けた『悔しさ』はどこにも現れていなかった。
一言父親と言葉を交わした乃恵琉は、ベルトから黄色い球を取り出し、『ナチュラルランス』へと変化させる。
そして、『ナチュラルランス』の3本の巨大な槍先で啓助の服の襟(えり)を掴み、啓助ごと『ナチュラルランス』を肩に担いだ。そのぞんざいな扱い方は、試合の最後までもスパルタだった。
「では、敗者は去るとしますか」
ゆっくりと道場の外へ足を歩ませる乃恵琉を見て、英治は呼び止める。
「待って下さい、乃恵琉君」
麗華への歓声が響く道場内で、英治の言葉は掻き消されたが、乃恵琉はそれを聞き取ったのか立ち止まった。
立ち止まった乃恵琉に英治は近付くと、その真後ろで呟く。
「僕は、明日帰宅します」
「……!!」
あまりの衝撃的な言葉に、乃恵琉は素早く振り向いた。
「な、何故……」
「本当は明日帰ることになっていたのです。しかし、家はフランスですからね。暫く乃恵琉君にも会えなくなりますし、それに……」
そう言いかけて、英治は初めて乃恵琉に笑み以外の真剣な表情を見せた。
「息子の実力、成長を親として確かめたかったんです」
「!」
「今回のことは、アンドレにも仕掛け人になって貰いました。お母さんの迫真の演技はどうでしたか、乃恵琉?」
「か、母さんが仕掛け人ですって!?」
乃恵琉は自分の母、アンドレまでもが仕掛け人だと知ると、乃恵琉には珍しくフニャッとした気の抜けた表情を浮かべた。
「そして、このことは水野さん達には秘密ですよ。もちろん啓助君も」
言葉を失った乃恵琉に、英治は続けて言う。
「本当に良かったですよー、乃恵琉君。これで安心して帰れます。こんな親のためにここまで成長してくれるなんて、僕の自慢の息子ですよ」
「家族と積極的に向き合わない人間に言われても嬉しくありませんよ。それに僕はあなたの息子なんかという格付けされた人間ではなく、1人の人間。自立が早かった1人の人間です」
乃恵琉は体の向きを道場の外に向け、足を歩ませた。
そして、英治はその姿を見送りながら、心の中で言う。
「(はいはい、分かってますよ。一人の人間、乃恵琉君)」
家族という者は、離れていても関係は壊れない、そしていつでも通じ合える機会がある。乃恵琉の辞書にまた1つ、新たな項目が埋まっていった。
183
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/10/10(月) 17:16:37 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
コメントさせてもらいますね!
麗華勝ったー!!
ってちょっと意外なんですけど…。
思えば啓助君って暴走した時以外印象に残る勝ちがないような…いや、気のせいですよね
にしても乃恵琉と英治が仲良く(?)なって良かったですw
こういう家族との関係を表すようなストーリーは僕は出来ない分野なので…
戦い後の麗華の啓助に対する感情に変化があってほしいですね〜
続きが楽しみです^^
184
:
ライナー
:2011/10/10(月) 17:50:30 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
竜野翔太さん≫
コメントありがとうございます!!
以外でしたか?
まあ、啓助は基本40%のひらめきと50%の努力、後は雑念なので麗華さんには勝てないようです^^;
啓助の勝率は、赤羽のマグレの時を含まなければ一度も勝っておりません(笑)
乃恵琉は少しは父親の威厳を分かってくれたと思います(作者だろ)
家族ストーリーはあまり取り組んだ分野ではありませんでしたが、そう言って貰えると嬉しいです!
〜 作 者 通 信 〜(プチ)
少しは麗華も啓助の実力を認めたと思うので、もしかすると進展が……!?
ご期待に添えて、書きながら恋愛を楽しみまs((殴
ちなみに書込めるか分からないので、今日言っておきます。
明後日、10/12(水)は乃恵琉君の誕生日でーす!パチパチ〜(二度目の拍手)
が、残念ながら乃恵琉君はこれからあまり出番無いと思います(今まで散々出まくったし……^^;)
乃恵琉推しの読者(槙さんなど)には乃恵琉のようにコーヒーでも飲んで気長に待って貰えればと思います。
ではではwww
185
:
燐
:2011/10/12(水) 16:23:05 HOST:zaq3dc00753.zaq.ne.jp
ライナーs>>
コメさせて貰います!!!
まだ少ししか読んでませんけど・・・。
何か冒険系?とかでテンションがあがりますw←
グロ入るんですよね・・。
覚悟しておきます(p_-)
1日では読まれないんで・・1週間前後で読んでいきます!!!
その時はまたコメさせてください!!!
186
:
ライナー
:2011/10/12(水) 21:01:47 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
燐さん≫
コメントありがとうございます!
どの辺まで読んでくれたでしょうか?
とりあえず、気長に待ちますよ^^
冒険と言っても、同じ場所に戻って来ちゃいますけどね。
グロ表現は、流血くらいはあるかもなのでそれなりに覚悟を(笑)
次のコメントお待ちしてます!
187
:
燐
:2011/10/12(水) 21:06:18 HOST:zaq3dc00753.zaq.ne.jp
ライナーs>>まだ全体の半分も読んでませんよ。
初任務の所で今日は終わって明日はその続きです。
流血ですか。それぐらいなら大丈夫です。
こう、目が抉り取られるとかは無理ですけど・・。
ではでは頑張ってください(@^^)/~~~
188
:
ライナー
:2011/10/15(土) 14:10:28 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
燐さん≫
目が抉り取られるは無いと思います^^;
あったら自分が嫌になるかも(笑)
ハイ、コメントありがとうございました。
189
:
ライナー
:2011/10/15(土) 16:31:43 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
25、ラブロマンス in ミッドナイト
休日のチームルーム。
恵と麗華のガールズトークが久々に繰り広げられていた。
「最近さー、異能防壁とか使った建物多いからオシャレなカフェとかなかなか無いわよねー」
麗華が椅子に座り、テーブルに頬杖を付きながら呟く。
「あ、でも、服とかは異能減力加工してても可愛いのあるよ? でも私達休日以外は隊服着用だけど」
缶ジュースを片手に恵は言った。
しかし、2人では妙に静かだ。第3番隊B班の男3人組は、チームルームにいなかったのだ。
「っていうかあの男共はどこ行ったのよ!」
麗華の大声に恵は少し驚きながらも、さりげなく呟く。
「多分……黒沢君は、自分の部屋でいつものように分厚い本を広げて、井上君はいつものように食べ放題に行って、啓助君は……いつものようにまだ寝てる」
恵の言葉は、最後の方だけ妙に照れのあるアクセントが残った。
そのアクセントを聞き逃さなかった麗華は、ふと悪戯(いたずら)心が芽生える。
「アッレー? 何でかなぁ、辻だけ名前呼びだよぉ? 教えて貰えますかねぇ恵お嬢さん……」
「い、いや、本人がそう呼んでくれって言ったから!!」
途端に恵の白い肌は、果実が色付くように赤くなり、紫の澄んだ瞳は、何か隠し事をするように濁(にご)り、その目を泳がせた。
両手の手のひらを出し目を泳がせている恵は、目が泳ぐと言うよりも回っているように見えた。
「私の記憶だと前は『さん』を付けていただけで、名前呼びが変わっていないような気がするんだけどぉ?」
恵は言葉に詰まり、蒸気でも噴き出してきそうなくらいに赤面し、それは顔だけに収まらず、指の先まで真っ赤になっている。
「ええ、え、えーと、それは、やっぱりチームメートだし、仲の良いことは悪い事じゃないし、お互いこんな職業柄だから励まし合えたらいいなと思ったし……!!」
すると、間が良いのか悪いのか、啓助が眠たそうな顔でチームルームに入って来た。
「はよーっす……ふぁ〜」
「何が『はよーっす』よ! もう十時過ぎでしょーが!」
寝惚け眼の啓助の耳に、痛々しい声量が襲う。
「……! うっせーよ! 耳が壊れる、お口チャックしとけ!」
「私は男子小学生扱い!?」
「いや、麗華お前男みたいなも…「{白羽刈剔(しらはがいてつ)}!!」
啓助が言い切る前に、麗華は腰に下げた『白鳥夢掻(しらとりむそう)』の刃を取り出し、白い念動をぶつけた。
激しい打撃音が響き渡り、体をチームルームに接する廊下に飛ばした。
「ちょ、ちょっとー!! 麗華何やってるの、啓助君が!!」
「ゴメンゴメン、ついカッとなっちゃてー」
麗華は少し申し訳なさそうに『白鳥夢掻(しらとりむそう)』の刃を柄に折り畳んだ。
「でも大丈夫、キスで目覚め…「いや目覚めないよ! 白雪姫じゃないんだから、それに男女逆!」
そう突っ込む恵は、『キス』という言葉を聞いてから頬がまた赤くなっている。
暫くして……
「痛たー! 死ぬかと思った……」
チームルームの椅子に腰掛けている啓助は、きょうぶに包帯を巻いている。
「平気平気、次に辻が「男みたい」とか言わなければ死なないから!」
「「………」」
微妙な沈黙に、麗華は再び言葉を発した。
「…何か3人ってのも暇よね〜。今日は休日だし、どっかあそびに行かない?」
「ああ、たまには修行を忘れて思いっきり遊ぶのも良いよな」
啓助は、休日にはチームメイトとの差を埋めるために修行をしていたが、何やら少々乗り気だった。
横目でそれを見ていた恵は、「じゃ、じゃあ私も」と静かな声で同意した。
「それじゃ、今日は思いっきり遊び倒すわよー!!」
「って何で僕まで来なければいけないんですか……」
カラオケボックスの個室で乃恵琉が呟く。
「良いじゃないの、乃恵琉も勉強ばっかりしないでたまには遊びなさいよ!」
麗華はコップに注がれたジュースを勢いよく飲み干していく。
テレビ画面の近くでは、啓助が流行(はやり)の歌を歌い、その隣で座っている恵は備え付けであったタンバリンを片手に盛り上げていた。
そして、洋はカラオケに来ても食べ物を注文している。
「……そう言えば、最近は忙し過ぎて全員で集まって遊ぶなんてしていませんでしたからね」
「そーそー、キルブラックの行動原理とか今調べてるらしいけど、そんなの関係ない!」
そう言うと、麗華はジュースを注ぎに個室を出て行く。
乃恵琉はこの時、麗華が大人になったら酒癖が悪くなりそうだと思った。
すると今度は啓助が歌い終わり、ソファに腰掛ける。
「フー、次は誰が歌う?」
「じゃ、じゃあ私が……」
恵がもじもじしながらマイクを受け取った。
「乃恵琉も歌えよ」
「え、僕は……いいですよ」
190
:
ライナー
:2011/10/15(土) 18:52:49 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
夜、啓助達はカラオケを1時間延長した後ボーリングに行き、最後に映画を見るというかなり満喫した休日を送った。
「「「「「 ハァ〜…… 」」」」」
5人のため息が第3番隊B班のチームルームにこだました。
「何で洋までため息吐いてんのよ、アンタボーリングの時も何か食べてたし、映画の時もポップコーン3つも食べてたじゃない」
「ポップコーンは4つだけどね。胃もたれで苦しいんだ」
「……あっそ」
麗華が呆れた声を出すと、乃恵琉がゆっくり立ち上がった。
「皆さん疲れが溜っているようなので、明日のため早めに寝ましょうか」
乃恵琉の言葉を掛け声に、4人は重たい足を引きずって自分の部屋へと戻っていく。
「ハァ〜!本当に疲れたな……」
啓助は自分の部屋に蹌踉(よろ)めきながら入り、ダイブするようにベッドに横たわった。
「疲れた、疲れた……でも、眠れねぇ」
疲労感が溜った体があるにも関わらず、啓助は全く眠気が差して来なかった。
その後、啓助は眠るために様々な努力を試みた。
まず最初にホットミルクを飲んでみる。
「……美味い、けど眠れねぇ」
次に大嫌いな勉強をしてみる。
「x=……えーと、って何か逆に目が覚めた」
今度はベッドに潜り、羊を数えてみる。
「……ひ、羊が402匹……って無理だろこれ」
啓助は仕方なく気晴らしにユニオンを出歩くことにした。
出歩くと言っても、ちゃんと目的地はあった。戦闘を主とした職業だからか、ユニオンにはヒーリングのための施設が充実しているのだ。
そして、啓助が辿(たど)り着いたのは、眺めの良い展望台だった。
その展望台は木造建築で建てられており、見た目にも香りにも癒される空間だ。さらに親切心か、ベンチと自販機が備え付けてある。
「辻も来たんだ」
展望台という空間で、綺麗な声が耳に届く。
星などの明かりがあるものの、啓助は周りの暗さに少し目を慣らした。
麗華だ。
隊服の上にはシャレた赤いコートを羽織っている。
季節的にも防寒と言うことだろう。啓助も防寒用にシンプルな青いコートを羽織っていた。
「ああ、お前も眠れねぇの?」
「まあ……ね」
2人の頭上には晴れた夜空が広がり、星々が幾つもの輝きを見せている。
「あのさ……」
麗華にしては穏やかな聞き方だ。
「ん?」
「辻って、好きな女子とかいるの?」
意外な質問が啓助を混乱させる。
「何だよ急に」
「別に辻の事が好きとかそう言うんじゃないんだからね!」
「はいはい、分かってるって」
夜空に雲を掛けるように、麗華の息が白く曇った。
喋っている間は、2人は目を合わせなかった。ずっと夜空の星を見上げている。
「……好きな奴がいるってどんな気持ちなんだ?」
言葉を発するごとに白い息が宙に浮かぶ。
「うーん、じゃ自販機でコーンポタージュおごってくれたら教えてあげる」
啓助は渋々自販機の前に立った。
本来ならば断ればいい話を、何故か聞いてみたくなったのだ。
小銭を入れ、ボタンを指で押し付ける。
取り出し口から聞こえる缶の落ちる音は、やけに騒がしく聞こえた。
「ホラ、んじゃ教えてくれよ」
啓助が缶を麗華に差し出す。
「焦らない、焦らない」
麗華はそう言って缶を受け取る。
その瞬間、麗華の指がほんの少し啓助の指に触れた。
191
:
ライナー
:2011/10/23(日) 12:47:52 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
何だか良い場面でストップしてしまいましたが、お知らせです。
最近こちらの方へ来づらくなっているので、更新は遅れるかと思います。
別サイト様の方でも更新をしている都合上もあります^^;
御了承下さい m(_ _)m
192
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/10/23(日) 13:21:39 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
めっちゃ良い場面で続きが気になります!
お知らせ、とか書いてるからドキッとしましたが…。
啓助と麗華がかなり良い感じになってるので、この二人がどうなるのか気になります!
そこに恵が入って三角関係、というのも面白そうですし!
色々妄想が膨らんで続きが待ち遠しいです。
別サイトの方も頑張ってくださいね!
193
:
ライナー
:2011/10/23(日) 14:07:52 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
竜野翔太さん≫
コメントありがとうございます!!
面白い恋愛状況を作り出せるよう頑張りたいと思います!
別サイトではレベルの高い人たちがいて結構大変ですが、頑張りたいと思います^^;
ありがとうございました!
194
:
ライナー
:2011/10/23(日) 15:57:56 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
瞬間、麗華の手が微量に震えた。
慌てて手から滑り落ちそうになる缶を両手で掴むと、啓助から目を逸(そ)らす。
「何やってんだよ」
半分呆れた声で、啓助は言った。
麗華は言われて猛烈に恥ずかしくなり、目だけでなく今度は体も半回転させて啓助に背を向ける。
「缶が予想以上に熱かっただけよ」
そうは言うものの、現在麗華はしっかりと両手で缶を掴んでいた。
そんな場面に啓助は笑いを堪(こら)えて、再び問いかける。
「んで、好きな奴がいるとどうなるんだ?」
麗華はひたすら背を向けたまま、言った。
自分の顔が熱いのが分かり、それをバレたく無かったからだ。
「その人に会えるだけで1日幸せな気分になれるものよ」
震えた声で啓助に返答する。
へぇ、と聞いた本人のくせにお粗末な返事を返した。
そして暫く沈黙が続く。
「……お前、泣いてる?」
啓助が沈黙の中にそう言葉を切り出した。
後ろを向いている麗華はそれを聞き、カッとなって啓助の方を振り向く。そして啓助の胸ぐらを掴み、その顔を自分の目の前まで持ってくる。
「べっつに泣いてなんか無いわよ! アンタ私に蹴り入れられたいの!?」
実はこの時、麗華は涙目になっていた。
先程の失態に恥ずかしい気持ちは勿論だが、それ以上に啓助の前で失態を犯したのが悔しくてたまらなかった。それ故、物々しい震えた声が出たのも同様だ。
その姿は顔を近づけたせいで完全にバレた。もしバレなくても啜(すす)り泣きをするような時の声でしっかり伝わってしまっただろう。
「ウッ……!」
これで2つの失態を犯してしまったわけだが、今度は失態ではなく失敗だ。
この失態を免(まぬが)れようと麗華は背負い投げの要領で啓助を投げようとする。
しかしこれが間違いで、目測を誤ったせいで自ら啓助の頬に唇を触れさせてしまったのだ。
「……っ!!」
「イィッ!?」
突然麗華の手からは力が抜け、啓助の足は軽く着地するように降りた。
2人とも状況に混乱し、驚いた表情を残して硬直する。
そして最初に動き出したのは麗華だった。硬直した表情を怒りの表情へと変え、勢いよく右の足で啓助の左腹部を薙ぐように蹴りを入れた。
啓助はその次に動き出す……と言うより動かされる。
蹴りを食らった啓助は勢いよく飛ばされ、木の床に転がるように倒れた。
「ちょ、何だよ……!」
言いかけて再び麗華の蹴りが顔面へと飛ぶ。
口内が切れて口から血が出る。そして同じ状態で床に倒れた。
急いで上体を起こそうとすると、今度は顔面に麗華の拳が襲いかかる。
「や、止めて下さ……」
思わず言葉遣いが敬語になる啓助を余所に、インファイトを嚼(か)ますように麗華の拳が連続で殴りかかった。
「あーっもうっ! 今日は何なのよォ〜!!」
麗華は涙を流し頬を赤めながら、倒れる啓助の腹に腰を下ろし連続パンチをお見舞いする。
夜空の下は再び静けさを取り戻した。
その夜空の下の展望台には、体を丸めながらコーンポタージュを舐(な)めるように飲む麗華と、どっかのパン工場で作られたヒーローのように顔がボコボコになった啓助が倒れている。
「………」
麗華は缶の中のコーンポタージュを飲み終わると、自販機の隣にある缶捨てに缶を捨てた。
すると、麗華は啓助の倒れている姿の前で立ち止まる。
「ご、ゴメン」
聞こえもしないがそう呟いて、重たい啓助の体をゆっくりと担ぐ。
「結構重いわね、コイツ……!」
息を荒くしてゆっくりと1歩を踏み出すと、あることに気付いた。
「……『サイコキネシス』使えばいっか」
195
:
ライナー
:2011/10/23(日) 16:14:43 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
〜 作 者 通 信 〜
はい、作者通信ですね(笑)
最後が変な形でしたが、第三章終了しました!いやー長かったですね。
次はついに第四章! 啓助はこの章でかなり苦痛を味わいます^^;
さらにこの章だけメインキャラが変わります(最初の一話あたりを除いて)まあ、何故かは本編でお楽しみ頂けると幸いです。
ではではwww
196
:
ライナー
:2011/10/25(火) 18:49:24 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
第4章
26、森も村もゲームのように
闇の中に啓助は立っていた。
「また、か……」
啓助にとっては「また」だった、最近はよく意識が飛んで闇が現れる。
と言うのも異能力を持ってからなのだが、どうも変な幻覚が見えるようで、上から目線で訳の分からない言葉を浴びせられるのだ。
すると、2つの鋭い光が飛び込んでくる。
「もうだいぶ慣れてきたが、俺の意識の裏に何でいるんだ?」
啓助の声は狭い部屋に隔離されたように闇に反響した。
「これは貴様の空想のようなものでしかない。これを打ち切るには貴様の異能力による迷いを消すのみ……」
闇の声は、再び意味になっていないクイズのヒントのように訳の分からない言葉を残した。
そして、啓助が口を開こうとした瞬間、光が啓助を埋め尽くした。
「う……ん」
啓助は枕からソッと頭を浮かす。
「夢、か……」
ベッドの温もりを恋しく思いながらも、啓助はゆっくりと上体を起こした。
目を半開きにしたまま、パジャマ代わりのTシャツを脱いで隊服へと袖を通す。
隊服に袖を通しながら啓助は思った。これからまた、任務だと。
背伸びと欠伸(あくび)を同時にし、自分の個室を出て行く。
ゆにおん廊下を歩いているときもとても眠かった。悪い夢は見るものではない。
「はよーっす」
チームルームのドアを開け、いつもの挨拶を口にする。
「ハイ、5分遅刻ー!」
そして、いつもの麗華の厳しいタイムカウントが告知された。
「啓助は精神的に8ダメージ受けた▼」
「どこの大作RPGよ!」
最後にいつものバカみたいな遣り取りを交わす。
すると、乃恵琉が本を閉じて啓助に言う。
「では、全員揃ったようなので任務へ行きたいと思います」
「全員?」
全員というのは何とも久しぶりな響きだった。
啓助が今までチームメンバー全員で熟(こな)した任務など、金持ちお嬢様の護衛しかなかったからだ。
何となくその事を思い出して、啓助はボーっとしている。
それを見ていた乃恵琉は、「話を聞け」とでも言うように咳払いをし、眼鏡を掛け直す。
「今回の任務は指名手配犯の板東 鋳央沙(ばんどう いおさ)の件です」
板東鋳央沙……
最近、ユニオン中の噂となっている凄腕の盗賊異能力者(アビリター)だった。
今まで板東に挑戦してきたユニオン隊員はザッと数えて40人程。それを板東は、返り討ちと言うには惨(むご)過ぎるくらいに血だらけにしてユニオンに送りつける戦闘鬼なのだ。
現在ではその強さを耳にして、板東の手下となるものが多いとか何とか。
「その板東が今、潜んでいるアジトを襲撃しろとの事で……」
乃恵琉の言葉がそこで詰まった。
そんなにも危なっかしい場所にあるのだろうか。
「その場所が、グランドツリーだそうです」
言葉を詰まらせた訳がようやく読めた。
グランドツリーとは、その名の通り大規模な木なのだ。あの啓助が最初に巻き込まれた異獣事件の時に謎の自然現象で生まれたものと人は推測している。
そのグランドツリーは、木層という空洞があり人は勿論のことロケットでさえ余裕で入れるほどの大きな空洞があった。
ここまで来て分かるであろうが、その木はあのエベレストの高さを超える木だった。
「皆さん、心の準備はできましたか?」
「冒険の書に書き込んでいれば……何とかなる!」
「何ですか、そのいきなりやられるマイナス思考……」
197
:
ライナー
:2011/10/25(火) 21:43:53 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
第3番隊B班一行は、現地に向かうため転送システムを利用した。
「でかいな、木……」
転送による光が消え、早々に啓助が声を漏らす。
啓助の視線は、地面と垂直になって上を向いていた。しかし、啓助の目に入ってきたのはグランドツリーと呼ばれる巨木の木の幹だった。
真上を向いても見えるのは幹、グランドツリーとの距離1000㎞辺りでやっと天辺が見えるらしい。
恵なんて体を反り過ぎて尻餅をついている。
そんな光景の後に危険が迫っていた。
「伏せて下さい!」
乃恵琉の言葉に、全員は急いで地面に腹を付ける。
すると、メンバーの頭上では一筋の電流が走り、轟音が一足遅れて響き渡った。
その音が止むと、今度は啓助達のいる森林の木が木の葉を擦り合わせながらガサガサと音を立てる。
「くっそ! 何だ今の!?」
啓助は途端に立ち上がり、背に背負った『氷柱牙斬(つららげざん)』を素早く鞘から抜く。
「啓助君、まだ立っては駄目です!」
乃恵琉の発言は大きな足音に掻き消され、啓助の目には巨大な鋼の角を持った闘牛が突進してきた。
「あれは『メター』の能力を持つ綱角牛(こうかくぎゅう)です! 気を付けて下さい!」
そう言う乃恵琉は、いつの間にか茂みの方から顔を出して言葉を放っていた。
「いや、何で人に戦闘任せてんだよ!?」
「それは、選択肢に ・攻撃 ・魔法 ・防御 ・逃げる と言うのがあったので、「逃げる」を選択させていただきました」
「こんな所まで本格RPG引っ張り込んで来なくていいんだよ! っていうか「魔法」って何!?」
よく見ると、乃恵琉の後ろに全員隠れている。
「よりによって何でみんな「逃げる」選択してんだよ!? どんだけ平和主義者なんだよ!?」
すると乃恵琉が茂みの方からメガホンを持って啓助に伝えた。
「よく見て下さい! 洋は「逃げる」でなく「防御」です!」
茂みの奥を見てみると洋は1人自分の手を丈夫そうな盾に変化させている。
「いやどっちでも良いんだよ! ってか茂みにいる時点で「逃げる」だからね! アイコン2つ同時に作動しちゃってるからね!」
そんな状況の中、綱角牛は物凄い勢いで突進してきている。
「コノヤロッ!」
啓助は綱角牛の角に薙ぐように刀身をぶつけ、その動きを止めた。
しかし、相手は異獣とは言えアビリティを抜いても闘牛。その勢いに啓助は足を擦らせながら後方に飛ばされる。
啓助と綱角牛の間が空くと、再び綱角牛は前足を大きく振り上げ突進して来た。
「{凍突冷波(とうとつりょうは)}!!」
突進してくる綱角牛を相手に、啓助は剣先から伸びる冷気を強く放つ。
その冷気は綱角牛の角を凍らせ、頭部全体を凍らせた。
だが、その足は動きを止めていない。
啓助は歯を食いしばり、力強く横に走り出した。紙一重で通り過ぎた綱角牛は前が見えないのか、ターンもせずに真っ直ぐと走り去った。
「啓助は綱角牛を避けた▼」
麗華が茂みから呟く。
「どーせ倒してねーから経験値貰えねーよ! お金も貰えねーよ!」
しかしこの時、啓助だけが忘れていた。
一番最初の危険は何だったか、一筋の電流だ。
突然に啓助の後ろから電流が走る。
「グッ……!」
そして、その方向の茂みから出てきたのは、雷蜘蛛だった。
「啓助は15ダメージを受けた▼」
麗華が状況構わず言い放つ。
「いや、麗華……もう良いんじゃないかな……」
恵が心配そうにして麗華を見つめる。
しかし、3人は一向に動く気配がない。何か考えがあるのだろうか、洋を除いて。
少しずつ啓助に迫る雷蜘蛛を見て、イライラしながら恵は乃恵琉と麗華を睨む。
やはり動かない。
「もう! 私はいくからね!」
等々痺れを切らした恵は、茂みから勢いよく飛び出した。
198
:
燐
:2011/10/25(火) 22:52:16 HOST:zaqd37c5e4d.zaq.ne.jp
ライナーs>>コメします!!!
最近・・小説を読む気にならない日々が続いております。
本当にごめんなさい(-_-;)
何か最近、自分の小説に没頭してるせいか・・
全然眠れない日が続いているので・・←関係ないやろw
でもいつか絶対読むのでよろしくお願いします!!!
目のあたりのくまっぽいのが治れば・・。
199
:
ライナー
:2011/10/26(水) 21:17:47 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
燐さん≫
コメントありがとうございます!
そうなんですか……少し残念です^^;
そうですね〜。一度自分の小説から離れて他の作品に目を通すのも良いと思いますよ?
週に何度も書込みをして凄いとは思いますが、文章を考えてよりよい構成にするためにも必要なことです!
是非やってみて下さいね。
ではではwww
200
:
燐
:2011/10/26(水) 21:21:39 HOST:zaqd37c5e4d.zaq.ne.jp
ライナーs>>イエイエ。
そうですか(-_-;)
他の作品ですか・・・。
何かつい進めたくなってしまう人なもんで;;
書く時は書く!人なもんでw
分かりました。
出来るだけそうしてみます。
でも、小説は更新しまくるので(p_-)
そこらへんよろしくです。←何て自己中なんだw私はww
201
:
燐
:2011/10/26(水) 21:27:34 HOST:zaqd37c5e4d.zaq.ne.jp
後、200スレおめでとうございます!!!
これからも読者ファンとして居させてもらいます!!!(@^^)/~~~
202
:
ライナー
:2011/10/26(水) 22:52:08 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
「あれで良いの、乃恵琉?」
茂みの中で、麗華が呟く。
「まあ、良いんじゃないですか? 啓助君1人で強化トレーニングを兼ねようとしていたのですが、啓助君今動けませんし……」
乃恵琉は眼鏡を掛け直しながら言った。
このような任務中でもやはりスパルタは健在だった。
一方、茂みから飛び出した恵は『エナジーボント』の銃口を雷蜘蛛に向けながら、睨み合いをしていた。
「えーと、雷蜘蛛は『エレキ』のアビリティを持っているから、ダイヤルをスペシャルに合わせなきゃ」
呟きながら、恵はグリップのダイヤルを回す。
『エレキ』は電気を操る異能力なので、同じ特殊エネルギーを持ったスペシャルの銃弾で打ち消そうという魂胆(こんたん)だ。
こういう時に恵の武器は便利だった。銃に付いているダイヤル次第で、戦う相手に合わせた戦闘が出来る。
恵がダイヤルを合わせ終わると、その隙を突くように雷蜘蛛が素早く電撃を放った。
「アッ!」
その電流は後から静電気のような音を上げ、恵の2丁の銃の一つを上空に打ち上げた。
上空に回転しながら舞う銃に気を取られていると、さらに雷蜘蛛はその隙をも突いてくる。恵の腹部目掛けて、再び電撃を放たれたのだ。
上を向いたまま、恵は全身に電撃が走り絶叫を上げた。
「作戦変更です!」
乃恵琉が茂みから飛び出す。
「ガンガン攻めるに変更かしら?」
次は麗華が颯爽(さっそう)と飛び出してきた。
が、洋は茂みの奥で盾を作っている。
「洋アンタいい加減にしなさいよ! どんだけ怖いのよ! まだ遊び人の方が勇気100%よ!」
麗華が大声上げて洋に怒鳴りつける。しかし、洋は動かないのではなかった。
茂みに隠れているのに関わらず、気絶している。
「………」
「もうほっときましょう、麗華」
2人は呆れながらため息を吐くと、雷蜘蛛に視線を合わせた。
雷蜘蛛は口の部分を奇妙に動かし、様子を伺(うかが)っている。獣とはあまり頭脳が発達していないが、危機察知能力はあるようだ。
「行きますよ!」
乃恵琉は足を踏み出し、走りながらナチュラルランスを発動させる。
そして、走りながら3本に割れた槍先を振り上げると、雷蜘蛛に向かって勢いよく振り下ろした。
振り下ろされた矢印のような槍先は、紙一重で雷蜘蛛を逃し、地面を剔るように叩き付ける。
緑の槍からは、地面を通じて棘の付いた蔓が雷蜘蛛を襲う。しかし、雷蜘蛛は正(まさ)しく雷光のように身軽に躱し、複数の蔓を電撃で焼き切って行く。
「麗華! そっちに行きました!」
「任せなさいって!」
麗華は待っていました、と言うかのように『白鳥夢掻(しらとりむそう)』6本を全て握り、待ち構えていた。
すると、飛び降りてくる雷蜘蛛相手にナイフの刃先1つ1つに白い念動を纏わせ、跳び上がり勢いよく掻き付ける。
雷蜘蛛に網目(あみめ)状の傷を深く付けると、サスペンションのように足を着地させた。
これがチームプレイというものなのか、2人で上手く異獣の隙を作った。
「フー、雷蜘蛛って話は聞いてたけど、案外早いのね」
麗華がナイフの刃先を柄に織り込むようにしまい、一息吐く。
「異獣1つを1人で倒せないとは……僕も知識だけでなくトレーニングを増やさなければ……」
乃恵琉は早速戦闘の反省を上げて、自分にも厳しいらしい。
そして2人は渋々と、洋、恵、啓助を1人ずつ起こすのだった。
「おいおい、俺らの異獣やられちまったぜ?」
「キルブラックとかの落とし物は案外使えないな、板東さんに報告しとくか」
啓助達のいる所より少し離れた茂みで、早々と作戦は行われていた……
203
:
ライナー
:2011/10/26(水) 23:00:36 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
燐さん≫
文章の構成は僕としては、プロットを作り、そこに乗っ取ってよりよいものにする方が文章力も上がりますよ?
一度プロットに書いた文章は一日おきに確認すると、そこでこうした方が良くできる。ここの辺りはおかしいから修正しようなど、変えられるところは沢山あります。
読者により楽しんで貰えるよう、心がけてはいかがでしょう。
それと、思いついたアイディアは短く予告編っぽく書きまとめれば内容の変更もしやすいですよ^^
最後に、コメントするときはなるべく1つのレスにまとめて下さいね。
応援ありがとうございます! 全部目を通してくれる日を楽しみにしております!
204
:
燐
:2011/10/27(木) 17:20:38 HOST:zaqd37c5e4d.zaq.ne.jp
ライナーs>>構成はノートに書いてるだけなんですよね。
プロットなんて作ったら親に何て言われるか。
しかもコピー機が家に無くて・・・。
買いたくても親には「コピー機なんて買って何に使うんや?」って言われるもんなので・・。
買えないんですよね・・。
予告編っぽくですか・・・。
う〜ん。それは私の小説になかった一つですね(p_-)
・・考えてみます。
205
:
ライナー
:2011/10/27(木) 18:01:47 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
燐さん≫
ノートで充分ですよ!
ノートの切れ端などに、その回の話を分けて書いたりするんです。
コピー機と言ってもコンビニにあるようなのでなくて良いですよ^^;プリンターって事ですよね?
予告編と言っても、メモ程度で書込みは別の方が良いですよ!
206
:
燐
:2011/10/27(木) 18:05:45 HOST:zaqd37c5e4d.zaq.ne.jp
ライナーs>>そうなんですか!?←良かった・・;;
そうです。プリンターですね。
予告編って・・小説に書き込んでもいいんですかね?
何か不安で・・;;
207
:
ライナー
:2011/10/27(木) 20:13:53 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
「ウゥッ……!」
啓助が頭を抱えながら起き上がる。
「何だか腕が痛くて、体が痺れて、あれ? 頬が痛いんだが……」
確かによく見てみると、頬の晴れが目立っていた。
乃恵琉が啓助の傷を見て眉間にしわを寄せる。
「戦闘中はそんな場所に打撲受けていませんでしたよね? 外見から推測すると昨日の夜あたりに出来たものでしょうか?」
その瞬間、麗華の顔が引き攣(つ)る。
「昨日……? ああ、そう言えば…」
「{白羽刈剔(しらはがいてつ)}!!」
啓助が言い掛けた時、麗華の『白鳥夢掻(しらとりむそう)』の刃が胸部を襲った。
「グハァッ!」
巨大な吃音を上げて、啓助の全身は勢いよく地面に叩き付けられる。
そして、地面に啓助が倒れると、麗華はそこに駆け付け連続で平手打ちを嚼(か)ます。
「いや、あの、れ、麗華……?」
乃恵琉は冷や汗を流しながら麗華達の方を見る。
10秒経った今、麗華は恨みを込めたような顔でひたすら啓助の頬を平手打ちしている。啓助はすでに声も出せない状況になっている。
30秒経って、やっと麗華の動きが止まる。
「……啓助君、訂正します。昨日ではなく、今日に直して冒険の書に記録しておきます」
眼鏡を掛け直しながら、乃恵琉は呟いた。
暫くして……
恵と洋を起こし、再び第3番隊B班一行は歩き始めた。
「あのさ……」
恵が森地の地面を踏みしめながら言う。
「何で啓助君グッタリしてるの?」
啓助の方を見てみると、麗華に隊服の襟を掴まれたまま、体を地面に引きずらしていた。
「いや、恵が気を失う前もグッタリしてたじゃないの!」
麗華は、無理矢理と言っても過言ではないくらい笑顔を作っている。
「でもさっきより怪我が多くなっているみたいなんだけど、特に顔辺りに」
そう言葉を発してから、恵は「黒沢君知ってる?」と、乃恵琉に問う。
乃恵琉は説明しようと口を開こうとすると、麗華の方から途轍(とてつ)もない殺気を感じた。
自分の動物的本能に、乃恵琉は心の中で目一杯感謝した後、「攻撃」でストレートに伝えるのでも無く、「魔法」で巧みに言い逃れする訳でも無く、さらに「防御」でオブラートに包みながら話す訳でも無く、「逃げる」で言う事を拒んだ。
「済みません、僕としたことがその部分の記憶が消えてしまったようです。恐らく一時的なショックで嫌な記憶をシャットアウトしているものかと」
と、理に適(かな)っていない言い訳を並べその場を凌(しの)ぐ。
「そ、そっか……」
恵達のそんな会話の向こうで、洋は空腹で腹を鳴らしている。
「も、もうボク駄目かも……」
洋が嘆くように呟いていると、木に囲まれた世界が腫れた場所に出た。それは木造の家が立ち並ぶ場所。
村だ。
その瞬間、洋は真っ直ぐ伸びる木のように背筋を伸ばした。
「ボク、飲食店行ってくるから後宜しくお願いするよ!」
そう言い残すと、洋は太った体には似合わないスピードで走り去ってしまった。
すると、啓助がゆっくりと起き上がる。
「何か地獄を見ていたような……そんな気がする」
208
:
ライナー
:2011/10/27(木) 20:20:03 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
燐さん≫
あまり書き込まない方が良いかもしれませんよ?
途中で書こうと思った本文が、内容変更できなく何てしまうので、自分的にはお薦めしません。
209
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/10/28(金) 18:40:41 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
コメントさせてもらいますね!
まず、200レスおめでとうございます!
相変わらずツンデレな麗華を可愛い、と思っていますが、流石に叩きすぎだろ……。
恵も頑張らないと、啓助くん取られちゃうぞー。
今では麗華も恵みも応援しています(恋愛的な意味で)。
さてさて、新しい敵の坂東さん。
坂東と聞くと、どうもゆでたまごが出てくるのはさておいて、啓助くん達は勝てるのでしょうか。
早速三人がやられてたから、とても不安です…。
それでは、頑張ってくださいね^^
210
:
ライナー
:2011/10/28(金) 20:22:28 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
「って、ああ? 村かここ?」
啓助がズボンの土を払いながら立ち上がる。
「ねえねえ! ちょっと村で休んでいきましょうよ!」
麗華も先程の洋と同様に何かのやる気が溢れていた。
「そうですね…… まあ、万全の準備をしてからの方が良いですよね。 では、明日グランドツリーに出発と言うことで、明日まで自由行動です」
乃恵琉の許可が下りる。 ユニオンの決まりでは、4人以上の行動にはリーダーを付けるようになっていた。
今回のリーダーは乃恵琉と言うことになったが、やはりスパルタ健在で休憩はほとんど与えられなかったのだ。
「それじゃ、私は宿屋に泊まるわ」
麗華はそう言い残すと、素早く走り去る。
「では、僕はこの呪われた武器を取り外して貰うために、教会に行ってきます」
乃恵琉は、発動させたナチュラルランスを片手に言い出した。
「いや、もうそれ完全にド○クエだろ! しかも緑の3本槍は、お前が大事に持っているだけだから! ってかリーダー!」
同様に、乃恵琉去る。
「………」
「ま、まあまあ啓助君。 じ、自由行動なんだしさ、良いんじゃないかなぁ……? あ、それと、もし暇なら私と一緒に……行動出来たら、なんて……」
恵は少し赤面し、手を揉みながらさり気なく言ってみる。
啓助としても別にやりたいことは無かったし、精神的にも参っていた頃だろうと思い、恵の誘いをオーケーした。
「んじゃ、行くか」
「え! 良いの!?」
そうして、村見物(本来の目的ではないが)がてらに恵に付いて行く。
今啓助が達いる村は『円林村(えんりんむら)』と言って、グランドツリーを円状に取り囲んだ林の中にある事からこの名前が付けられた。
しかし、この森林とグランドツリーはあの異獣事件による異常気象で生まれたものらしいから恐ろしい。
にしても今まで啓助がいろんな場所を見て来て思ったのは、異獣事件が日本の価値観を変えてしまったことだ。運命もまた恐ろしいとその時感じた。
すると、付いていった恵の足があるところで止まる。
「ん? どした、恵」
下を向いて歩いていた啓助は、ふと前を見上げた。
それは店の目の前で、さらに啓助は上を向く。
看板に書いてあった文字は、カタカナで「カジノ」と書いてあった。
「……え?」
「いやぁ、腕が鳴るな! 実はユニオンに入る前にお小遣い足りなくて、ビリヤードで一回賭けたんだけど、それが切っ掛けでついつい趣味になっちゃって」
恵が賭け事好きだとは知らなかった。いや、ビリヤードに惹(ひ)かれたと言った方が合っているようだ。
だが、学校などでも修学旅行にトランプは持って行って良いものの、花札は賭け事を連想させるため駄目なんだとか。
「(にしても恵がよくビリヤードの出来る賭博場(とばくじょう)に入れたな……)」
そう考えている内にも、恵はその入り口を開け入っていく。
中にはいると、煙草を咥えて厳(いか)つい顔をした男達が屯(たむろ)っている。
啓助はその状況に怯んでいると、それを余所に恵はズカズカと足を進めていった。
そして恵は、ラシャ張りの長方形のビリヤード台で立ち止まる。
「お嬢ちゃん、お財布スッカラカンになるぜ?」
恵と台を挟んで向こう側にいる男が言ってきた。
「そうなるのは、勝負が付いてから……」
そう言って、恵は台に置いてある棒(キュー)を手に持つ。
一言の合図で、勝負の相手は決まったのだ。
ゲームを開始して約15分、勝負は付いていた。
「クッ……この俺が負けるなんて」
男が4つんばいになり、悔しそうな声を上げている。
「いいからお金出して下さい」
恵が棒(キュー)の先端を拭きながら言った。
黙って男は恵に金を差し出す。
「足りない」
急に恵の声が冷たく、鋭さを帯びた。
「……って何の現場だよ! 恵もう止めろ! あの人涙目だから! あっちの方が財布スッカラカンだから!」
啓助は急いで恵の腕を引っ張り、外に連れ出す。
「ど、どうしたの急に連れ出して……」
恵の声は元に戻っている。
しかし、啓助は迂闊(うかつ)だった。 第3番隊B班のメンバーは1癖も2癖もある。
それは啓助自身、人のことは言えないのだが止めなければ他方に迷惑が掛かるだろう。そう思って啓助は急いで足を走らせた。
211
:
ライナー
:2011/10/28(金) 20:37:18 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
竜野翔太さん≫
コメントありがとうございます!
麗華はまあ、自分の手が痛くなるほど叩いてますね^^;
恵も恵なりに頑張っているんですけど、ちょっと押しが足りませんよね! 押しの強い女性は大好k((殴
いやでも、大人しくて大和撫子な女性も好k((殴
板東さんは、読み切りっぽい感じなので、勝つか負けるか改心するか……
3人は軽い怪我なんで、頑張らせますが^^;
ではではありがとうございましたwww
212
:
ライナー
:2011/10/30(日) 16:27:06 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
27、突撃! グランドツリー
啓助は最初に、麗華のいる宿屋に向かった。
宿屋まで足を走らせると、真っ先にそのドアを押し開ける。
すると、受付には麗華の姿があった。
「(間に合ったか……!)」
しかし、啓助の見た麗華の姿は後ろ姿で、何故か後ろで片手に持った3本の『白鳥夢掻(しらとりむそう)』の刃をギラギラと光らせている。
一気に啓助の嫌な予感バロメーターがマックスになった。
「もっと宿賃負けなさいよ……!」
そう、麗華がしていたのは脅迫だった。
「麗華ー! もう止めたげて! 最近不況だから! 宿屋の主人涙目だから!」
啓助は何とかその場を落ち着かせ、黒いオーラを放った麗華にしっかり宿賃を払わせる。
そして、なるべく後ろを振り返らないようにして、今度は乃恵琉のいる教会へと向かった。
「呪われた武器を取り外して貰うため」という言葉は冗談だとは思うが、嫌な予感バロメータがマックスになったまま止まらない。
とりあえず教会の入り口前にまで辿(たど)り着く。
拳を強く握り締め、乃恵琉がいなかったときの恥ずかしさを吹っ飛ばして教会の扉を開けた。
教会には乃恵琉が聖書を広げて、その本の字を目で追っていた。
「どうも、啓助君」
そして普通に挨拶をされ、啓助は自分の嫌な予感バロメーターを無視することにした。
やはり自分の予感まで中途半端になってくると、啓助自身嫌気が差して来る。
「大丈夫なら大丈夫で、何だか空しい……」
「こんな所まで冗談引っ張ってくるわけが無いじゃないですか。 本当、バカですね」
その瞬間、「バカですね」という言葉が啓助の心に矢になって突き刺さる。
少し抜けている部分がある秀才だが、秀才はイコールで結べば真面目と言うことにもなる。
「今度は俺が涙目にされた……」
ちなみに洋は食い過ぎでぶっ倒れていたので、全員(麗華を除いて)が雪達磨(ゆきだるま)を作る様にして転がしたのだった。
翌日、啓助だけが疲れを残しいてグランドツリーへと向かっていた。
しかし、ここでも洋が足を引っ張り、行動は予定よりかなり遅れていた。
「……洋、早くして下さい」
乃恵琉が冷たい表情で言う。
いつも無表情に近いのだが、この時の乃恵琉は雰囲気だけで苛立ち加減が伝わってきた。
「お、お腹が空いて力が出ない〜」
洋は朝ご飯を、ご飯20杯という驚異的な早食いで食したのにも関わらずもう腹を鳴らしている。啓助は宿を出るときの後ろめたさを、充分に洋に教えておきたかった。
「ホラ! 新しいお腹よ、それっ!」
「いや、何だ新しいお腹って。 パン工場の誰かさんか」
啓助は透かさず麗華のボケにツッコミを入れる。
だが、ツッコミを入れながら思ったのが、全く持って麗華と洋の緊張感が感じられないことだ。それに、いつの間にか啓助がツッコミ要員と化している。
そんなことを考えていると、緊張感とかどうとか言っている場合ではないような自体が起こった。
啓助達の周りに円を描くように、何人もの男が立ち塞がっていたのだ。
その男達は、薄汚れ所々破れた服を着ていた。返り討ちに遭えば「覚えてろ!」とでも言いそうな雰囲気を醸(かも)し出している。
言われ無くても分るが、恐らく板東の手下だろう。
「早速のお出迎えでしょうか、客人はこのようなところで歓迎するものではありませんよ」
乃恵琉は、冷静な表情を浮かべながらナチュラルランスを発動させる。
そして、麗華は『白鳥夢掻(しらとりむそう)』と言う6本のナイフを、恵は『エナジーボント』と言う2丁の拳銃を構えた。
ちなみに洋は茂みの中で盾を作っている。
「何だか1人だけアイコンの選択を間違った奴がいるぞ!」
啓助が背に背負った『氷柱牙斬(つららげざん)』を鞘から出して言う。
「パーティが5人以上に増えると、5人目以降は戦闘に出ている誰か1人がやられるまで馬車に待機ですから」
乃恵琉が啓助に背を向けながら言う。
その時全員が背を向け、目の前の敵を睨み付けていた。
「……んじゃ、茂みという馬車から洋が出てこない内に、いっちょやってやるか!」
啓助の掛け声で全員が動き出す。
213
:
ライナー
:2011/11/01(火) 19:55:06 HOST:222-151-086-012.jp.fiberbit.net
西側にいる敵は、乃恵琉が『ナチュラルランス』のフォークのようになった3本の槍先で薙ぎ払い、東側の敵は恵が『エナジーボント』のグリップを逆手に持ち、トンファーのようにして殴り付けていく。
南側の敵には、麗華が『白鳥夢掻(しらとりむそう)』の刃で引っ掻くように攻撃し、北側の敵は、啓助が『氷柱牙斬(つららげざん)』の刀身に冷気を込め、切っ先を使って大きく斬りつける。
グランドツリーを囲う森林には巨大な吃音が響き渡り、小鳥達が羽ばたく音を残して、一目散に逃げていった。
そして森には再び神聖な沈黙が戻った。
それと同時に、洋が何気ない顔で茂みから出てくる。
「たいちょー、馬車から誰か出てきましたー」
啓助がふざけ半分で乃恵琉に言う。
「洋、戦う気が無いならここにいても意味がありません。 帰るか戦うか、選択肢は2つですが」
ふざけた口調で言った啓助は、乃恵琉の言葉に絶句した。
言った内容に関しては全く間違っていないが、いつもながらスパルタ行為は絶えないようだ。
ここまで出来る人材なのに専攻隊に属せ無いのは何故なのか、ふと啓助は思った。
それと同時に、洋が戦いもしないのに何故アビリターユニオンに属したのかも謎めいていた。
暫くし、洋は結局帰還することとなった。
今回の任務で、「食ってただけじゃん!」と言いそうになるのを堪えて、啓助は任務に専念することにした。
「ここからはグランドツリーに近付くごとに、敵に遭遇(そうぐう)することが多くなるでしょう。体力保存のためにも、隠れて移動することにしましょう」
乃恵琉に言われてからは、全員木に飛び移るようにして移動を試みた。
移動中には会話もサイレントに行われ、当然の如く携帯はマナーモードで、メールでの状況確認が行われたのだ。
「くっそ! いくら敵に見つからないためとは言え、これじゃかなり時間ロスすんぞ!」
啓助は、木の枝から枝に飛び移りながら文句を言い放つ。
言い訳を放っていた啓助は、実のところ全員との距離を取り過ぎはぐれてしまっていた。そのせいもあって、未だに文句を言い放っている。
すると、携帯がバイブ音を上げてメール着信を知らせる。
「こんな時に……まさか乃恵琉じゃ無いだろうな……」
心配しながらも、啓助は携帯を開き着信メールを確認した。
from : 健二
title:無し
本文 :今日空いてたら、飯でも食いに行かないスか?
その瞬間、啓助の携帯を持つ手の握力が強くなる。
「何だコイツ!? 人の気も知らないでスッゴイむかつくメール送ってんだけど!」
啓助は思わず、携帯の画面に向かって唾を飛ばす勢いでツッコミを入れる。
「こっちだって飯食いに行きてーよ! でも任務中! ってか健二のヤツ専攻隊だったよね、どんだけ暇なんだ専攻隊!?」
携帯を閉じ啓助が一息吐くと、嫌な予感バロメーターを復活させるが如く、2度目のバイブ音が響き渡った。
「………」
恐る恐る携帯を開く。
と、それはタダの迷惑メールだった。
「中途半端、か……」
一方、グランドツリー付近の木の上では、乃恵琉達が下を見ながらジッとしていた。
「あーもう、辻の奴何してんのよ」
麗華が小声で呟く。
「大丈夫かな、啓助君」
恵は心配そうに小声で呟く。
「どうしますかね……」
さらに乃恵琉が小声で呟く。
3人は何故小声で呟くのか、それは木の下に大量の板東勢が今か今かと待ち伏せしていたのだ。
「にしても僕達の存在を嗅ぎ付けるとは、それとも別の存在のせいなのでしょうか?」
「ま、ウロチョロしてても仕方が無いじゃない。辻のことはほっといてこの軍勢をサッサと片付けましょうよ、私が見たところ軍勢の中のアビリターは0%」
麗華も戦える事にウズウズしているらしく、恐ろしい悪魔のような笑みを浮かべていた。
「……では、先に行きますか」
乃恵琉がそう言うと、3人は木から飛び降り奇襲を掛けた。
着地の勢いと共に3人は攻撃を仕掛ける。
「オイ! 敵が来たぞ!」
軍勢の1人が大声で言い放ち、軍勢に軍勢を呼ぶ。
そんな状態をものともせず、3人は攻撃を続けた。何せ相手はアビリティも持っていなければ、特別な武器さえ持っていない。
暫くすると、厳(いか)つい男の体と短刀が転がり落ちる。
「では、先に進みましょうか」
そして3人は、一度森の方を振り返ってからグランドツリーの木層へと走っていった。
214
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/11/05(土) 12:14:03 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
コメントさせていただきますね!
さてさて、へタレの洋は置いといて。啓助くんが本気で心配です。
彼の描写になると、不安で不安でしゃーないですw
にしても麗華が可愛くて悶絶しそうなこの気持ちを抑える方法を一緒に考えてはくれないでしょうk((
続きが気になります。
頑張ってくださいね!
215
:
ライナー
:2011/11/05(土) 13:46:24 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
木層の中では、激しい戦闘との応酬だった。
何人もの下っ端が猟銃や短刀を持って襲いかかる。しかし、ユニオンではそんな状況は訓練済みであって、また想定内の戦闘スタイルだった。
ユニオンで訓練を受けるときの戦闘スタイルはこうだ。
短刀の場合は、充分に相手を引き付け、短刀を持つ手を払うように躱す。そしてその隙を利用し、蹴りなどの攻撃を食らわす。
猟銃などの銃系の場合は、隊服を霧吹きなどで充分に湿らす。すると銃弾の貫通率はグッと下がり、躱しやすく、接近しやすくなる。猟銃などは接近戦に弱いので、簡単に倒せると言うわけだ。
そんな戦闘スキルを駆使しながら、グランドツリーの上部へと上がっていった。
「だいぶ進みましたね」
乃恵琉が呟く。
もうほとんど敵は存在せず、木層の中はランプの光が良く通っていた。
「そろそろって所かしら?」
麗華は暇そうに『白鳥夢掻(しらとりむそう)』の6本のナイフをジャグリングしている。
「で、でも油断は禁物だよね。今まで戦ってきた人達も板東って人に倒されたんだから……」
恵は忙(せわ)しなく辺りをキョロキョロと見回している。
ゆっくりと3人は丈夫へと上がって行くが、全く人の気配がして来なかった。
「やっぱり出てきませんね……」
乃恵琉がいつもより真剣な表情で辺りを見張る。
常時あまり表情を変えない乃恵琉だったが、見てみるとやはり迫力が違った。
「そういえば、辻の奴も全ッ然来て無いじゃない!」
麗華が、影の薄い友人をかくれんぼで見つけられないようなイライラした声で叫ぶ。
すると突然、大太鼓を鳴らすような打撃音が響き渡った。
途端に乃恵琉は驚いて、巨大な音のする方へ振り返る。
「れい、か……ッ!」
その時、乃恵琉の目に一番最初に飛び込んできたのは、麗華の姿だった。時が止まったように、何者かの拳が麗華の腹部を剔り込むのが見えたのだ。
時が戻されたように乃恵琉は我に返り、麗華が飛ばされるのを確認する。
「麗華ッ!」
2回目、乃恵琉が麗華の名前を呼んだ時はもう遅かった。
飛ばされたまま、麗華は木の壁に強く衝突し、気を失って木の床へと体を倒している。
木に滲(にじ)む赤、倒れた麗華、硬直する乃恵琉と恵、そして悲しくこだまする衝突音、全ては板東の手によって仕組まれていた。
「つまりはヨォ、灯台もと暗しってこったァ……」
男は麗華の方へ視線を向けて言う。
「……貴方が噂に聞く、ユニオン隊員40人斬りの板東鋳央沙ですか」
乃恵琉は冷静な声調で男に言った。
男はその声で乃恵琉に振り返る。
「ホォ、俺はユニオンの方じゃそんな風に言われてんのかァ? 俺がここまで有名になるわけだなァ。んじゃ、自己紹介しとくかなァ、お察しの通り俺は板東鋳央沙ァ、指名手配犯能力者だぜェ……」
乃恵琉の察した通り、男は板東であることが分かった。
板東は軍勢の長(おさ)らしく体型はガッチリとした筋肉質、服装はダメージ加工を施(ほどこ)してあるGパンと黒い革ジャンと、ヤクザ者のボスのようだ。
名が明かされると乃恵琉の表情は一気に厳しさを増し、『ナチュラルランス』を発動していた。
「話を戻すがァ、何故灯台もと暗しか分かるかァ?」
眼(がん)を付けながら放たれる問いに、乃恵琉は無視するように槍を構える。乃恵琉に握られた『ナチュラルランス』は3本の槍先が板東を睨むようにギラリと光り、乃恵琉と同調しているかのようだった。
「んな怖い顔すんなってェ、まだお話してんだからよォ」
板東は冷たく笑って、言葉を続ける。
「灯台もと暗しの意味は、手近の事情がよく見えないってこったァ。つまり灯台の光は上も向かない、これで分かったかァ?」
乃恵琉は、表情に出さないで気付いた。板東の言葉から推測すれば、乃恵琉達の戦闘を木層の高い天井からずっと見ていた事になる。
その時、乃恵琉は自分の迂闊(うかつ)さを責めた。
自分の判断ミスで、麗華を危険な目に遭わせてしまったのだ。
「……そうですか、戦闘までの読み合いは僕の負けですね。しかし、麗華のお陰で分かることも増えましたよ。貴方のアビリティは『マッスル』、身体力向上能力」
再び、板東は不穏な笑みを浮かべた。
「当ったりィー! んじゃよォ、そろそろ始めようぜェ!!」
言い切る前に、板東の拳が乃恵琉へと飛ぶ。
乃恵琉は咄嗟に『ナチュラルランス』の槍先で防ぐ。しかし、相手のアビリティは『マッスル』で武器よりも途轍(とてつ)もない破壊力が襲った。
力負けして、乃恵琉は後方へと足を擦らせる。
すると、板東の拳はすぐそこまで押し寄せてきていた。
216
:
ライナー
:2011/11/05(土) 13:54:12 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
竜野翔太さん≫
コメントありがとうございます!!
そうですね、洋はヘタレの中のヘタレですがこの後頑張らせるつもりでいます(まだラフにも書いていませんが^^;)
啓助君は……まあ全体的に不幸ですからね。努力で実を結ぶタイプだと思います(焦)
え、えーと麗華は≫215で結構凄いことになってしまいましたが、こんな姿もまた可愛いんでしょうか?
華のあるキャラクターはどんな姿でも華がありますからね〜(そんなキャラ作りが出来ているだろうか^^;)
抑えなくて良いんですよ!爆発させて下s((殴
これからも頑張らせていただきますので、応援宜しくお願いします!
ではではwww
217
:
ライナー
:2011/11/05(土) 14:17:50 HOST:222-151-086-004.jp.fiberbit.net
訂正です。
≫215の15行目の「丈夫へ」は「上部へ」です。
そしてまたついでに作者通信やらせて貰います(笑)
〜 作 者 通 信 〜
今回で何度目でしょうか。作者通信です(面倒臭いので今度数えます^^;)
第4章の序盤ではかなりギャグ要素が多く、グダグダ進行になってしまったと思います(しかもギャグが面白く無かった^^;)
この章では今まで出てきた登場人物が多目に出ます、ですので途中の方も楽しめるはずです(?)
さて、今回は異能力(アビリティ)の事について語りましょう。
今まで出てきたアビリティを上げてみると、
・フレイム(火を操る) ・アクア(水を操る) ・フリーズ(冷気を操る) ・エレキ(電気を操る)
・サンド(土を操る) ・フェザー(翼を司る) ・ファスト(運動速度向上) ・マッスル(身体能力向上)
・タイム(時を操る) ・サイコキネシス(念力使用能力) ・メター(物質鋼変化能力)
こんな感じですね。
数えてみると11種と200スレ越えのくせにあまり出てきていませんね^^;
武器が目立っているからでしょうか?
まだまだ一般的な特殊能力しか出ていませんが、今挙げた11種を合わせて42種ありますので是非楽しみにしていて下さい。
ちなみに1つ補足すると、良く場所移動で活躍する「転送ルーム」ですが、テレポート(空間移動能力)を持つアビリターで成り立っているんですね。
最後に設定をこじつけてしまいましたが、楽しみにしていただければ幸いです。
ではではwww
218
:
ライナー
:2011/11/06(日) 18:28:50 HOST:222-151-086-024.jp.fiberbit.net
28、迷いと変わること
板東の拳は乃恵琉の『ナチュラルランス』の柄頭を押し上げ、乃恵琉の手から槍が離れた。
「ナッ……!!」
乃恵琉が放り上げられた『ナチュラルランス』に目を奪われていると、板東のもう1つの拳が顔面を襲う。
拳は、乃恵琉が声を上げる暇も与えず、眼鏡のレンズにヒビを入れた。
レンズの結晶が宙に飛びながら、乃恵琉は後方に飛ばされる。
「黒沢君!」
恵が叫ぶと、乃恵琉は木の壁に頭を叩き付けていた。
そして乃恵琉は、擦(かす)れる声で「大丈夫です」と一言言うと、頭から流れる血を手で押さえながら立ち上がる。
「足りねェなァ……」
すると、高く飛び上がった『ナチュラルランス』が槍先を下に向け、板東の足下に刺さった。
「こりゃ、50人……いや、100人斬りも夢じゃねェよォ……?」
板東の強さは、圧倒的だった。
戦闘を計算式のようにし、計算を解くように敵を倒すような乃恵琉に、計算の隙を与えなかったのだ。
しかし、プライドの高さからなのか、乃恵琉はまだ戦う気である。懐から、常備していたエアライフルを取り出していた。
「んな、ちゃちなオモチャ俺にゃ効かねェよォ。それよりも、大事なオモチャが俺の手にあるぜェ……」
足下に刺さった『ナチュラルランス』を、板東は軽々と片手で抜き取る。
「ぼ、僕は……負けま、せん……」
乃恵琉は、両手で持ったエアライフルを肩の高さまで持ってくる。この時点で、すでに乃恵琉は限界を達していた。
震える手の中で、エアライフルの引き金が引かれ、その銃口からは空気の銃弾が放たれる。
しかし、その銃弾は板東の耳元を通り過ぎ、当たることはなかった。
「メガネが壊れちゃ、使いモンにはなんねぇぜェ!」
そう、乃恵琉は攻撃を受け眼鏡にヒビが入っているのに気付いた。その事に気付かないくらいダメージが溜っているらしい。
足をふらつかせている乃恵琉に、板東は素早く走り寄る。
そして、『ナチュラルランス』の柄で腕を、片足で乃恵琉の脛(すね)を攻撃した。
「グッ……!!」
呼吸をするのも苦しそうな声で、乃恵琉は再び叫びを上げる。
叫びを上げながら、乃恵琉は飛ばされ背を壁に打つと、倒れた瞬間から動かなくなってしまった。
「ああっ!」
恵が口を手で抑えながら悲鳴を上げる。
倒れた乃恵琉は、攻撃された腕と脛を変な方向に曲げていた。どうやら骨を折って、大きく曲がってしまったのだろう。
返り討ちと言うには惨(むご)過ぎるくらいに血だらけにして、ユニオンに送りつける戦闘鬼。ユニオンの噂は写真に撮ったようにそっくりそのままだった。
さらにここで新たに浮かんだ状況は、恵しか戦えないと言うことだ。
「ユニオン隊員だろうがァ、女なら顔に傷作りたくねえだろォ? 好きな奴がいるならよォ、ここで引き返すんだなァ……!」
板東は、脅すように指の骨を鳴らす。
「もし、顔に傷を作ったとしても、ここで逃げたら、もっと多くの、もっとたくさんの傷や仲間を失う」
言いながら、恵は『エナジーボント』の銃口を板東に向ける。
「そんなの絶対に、嫌だから!!」
恵の目は、いつも戦闘で天然癖の出るような目ではなかった。
ただ、仲間を助けたい。そんな思いが一心に込められている、そんな力強い目だった。
言い終わり、恵は隊服のポケットからマガジンの形をした機械部品を取り出した。
「(絶対に、嫌だから……)」
219
:
ライナー
:2011/11/13(日) 14:03:15 HOST:222-151-086-022.jp.fiberbit.net
それは、任務前日の事だった。
恵が、乃恵琉の部屋のドアを軽くノックする。
「啓助君の部屋なら隣ですが……?」
乃恵琉はドアを開けた早々、恵にとっての爆弾発言を言い放つ。
「い、いや何それ!? そうじゃなくて、黒沢君に用があるんだけど……!」
「恋愛系の話は、僕の知識能力では不十分ですが……?」
眉を顰(ひそ)めて乃恵琉は呟く、少しふて腐れたような声だった。プライドが高いからか、自分の答えられない問いは聞きたくないようだった。
「そ、そうじゃなくてぇー! 武器の事についてなんだけど……」
恵は赤面して言う。
「それならお答え出来ます。立ち話もなんなので、どうぞ」
乃恵琉の表情は少し軟らかくなり、恵に部屋に入るよう勧めた。
とりあえず、同じチームという面識があるので、恵は少し躊躇(ためら)ってから入った。
乃恵琉の部屋は、落ち着いた焦げ茶色と白のシックなインテリアで、辺りに置いてあるプランターの植物が妙に目立った。
「お茶でもどうぞ」
そう言って、乃恵琉は恵が座ったすぐ側にレモンティーを差し出す。
乃恵琉はコーヒーを注いで、恵と向かい側に座った。
どうやら、来た客人ごとに出す飲み物を変えているらしい。流石は乃恵琉と言ったところだろう。
「で、武器の話とは一体如何なもので?」
コーヒーカップに口を付けてから、乃恵琉は言った。
「あ、それなんだけど、最近銃の調子が悪くて……」
そう言って恵は『エナジーボント』を床に置く。
「トリガー部分がまた緩んじゃって……最近ずっとこうなんだ」
乃恵琉は床に置かれた『エナジーボント』を拾い、工具箱を取り出してきた。
「なるほど、強い攻撃ほどトリガーが緩みますからね」
『エナジーボント』に目を向けて、ドライバーを使いながら分解していく。
銃を分解してからは一瞬だった。壊れたパーツを素早く入れ替え、一瞬にして組み立てた。
「これで大丈夫です」
「ありがとう、助かったよ。でも、何でいつもこうなっちゃうのかな……」
恵は『エナジーボント』を受け取りながら呟いた。
「……武器は時に人を選びます。武器の調子が悪い時、それは武器が主人の力に付いて来ていないのか、または主人が武器に見捨てられたのか」
乃恵琉の言葉が恵に突き刺さった。「主人が武器に見捨てられたのか」……
恵の表情が、凍てつくように凍り付いた。
すると、それを見た乃恵琉が後付けするように言った。
「実のところ、僕も最近使いにくい訳では無いのですが、どうも苦戦しやすくてですね……」
乃恵琉は『ナチュラルランス』の収納系になった黄色の珠を見て、軽くため息を吐く。
「……そう言えば、黒沢君って『ナチュラルランス』の方より、『エレクトリックナイフ』って方を使うことが多いよね」
「!」
恵の言葉で、乃恵琉は頭に電撃が走るようにひらめいた。
このところ乃恵琉は、ピンチになるといつでも第二形態の『エレクトリックナイフ』で戦っていた。思い出せば、水野家のメイドと戦った時もそれで戦っていた。しかし、それが間違いの1つだった。
戦闘を主とする職業にとって、一番大事とされているのは機動力だ。
機動力とは、その場の状況に応じて機敏に動く能力の事。つまり、乃恵琉がピンチの時『エレクトリックナイフ』を使うと言う事は、自らの考える力、機動力を奪っていたのだ。
「………」
乃恵琉は下を向き、厳しい表情で考え込んでいた。
恵はそんな乃恵琉の姿を見て、悪いことでも言ったかなと、少々焦った表情になる。
「……では、良い意見を貰ったお礼にこれを」
『ナチュラルランス』を発動させた乃恵琉は、ドライバーで柄の部分を開き、何かを取り出す。
そして、恵に差し向けたのは、銃のマガジン部分のような機械部品だった。
「これは、『エレクトリックナイフ』の心臓部分と言える帯電出力モーターです」
220
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/11/13(日) 16:38:57 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
コメント失礼します。
坂東さんが意外とかなり強かった。
麗華ちゃんはどんな姿でも可愛いです。それがたとえやられてる時でも((
そういえば乃恵琉って眼鏡してましたね。いきなりパリーンなんですけど……。
残りは恵だけなので、頑張って欲しいです。
あ、勿論啓助もねw
221
:
ライナー
:2011/11/19(土) 12:54:48 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
竜野翔太さん≫
コメントありがとうございます!
そして、少し遅れまして申し訳ありません。
麗華さん……そろそろ出番無くなると思います^^; でも変わりに竜野さんが待ち望んでいた展開を入れる予定であります!
眼鏡の存在が薄くなるのは、やはり自分の力不足ですね(焦)
啓助はこの展開でどう出てくるのか不安ですね、恵……ガンバ(作者だろ)
ではではwww
222
:
ライナー
:2011/11/19(土) 14:06:58 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
「そ、そんな大切な物貰えないよ」
恵は乃恵琉のモーターを持つ手を押し返し、断る。
「いえ、これは僕にとっても大切な一歩だと考えています。僕は今まで、技にバリエーションを持たせることが良いと思っていました。しかし、それでは何もかもどっちつかずと言うことを教えられました」
乃恵琉は、押し返された手を押し返す。
「お互い変わろうじゃありませんか、新しい武器の領域に」
緑に輝く乃恵琉の瞳は、偽りのない澄んだ瞳だった。
その瞳に何か逆らえないオーラを感じ取りながら、恵は躊躇(ためら)う気持ちを抑えて受け取った。
不安な表情を隠せぬまま、恵は受け取ったモーターを見つめる。
変わる、新しい武器の領域。
その2単語が、恵の不安を泡のように掻き立てた。
「人間とは、日々変わるものです」
恵の不安そうな顔を、覗き込むようにして言った。
「新たなことに挑戦すること、それは大きく言えば自分自身を変えることと言えます。しかし、人目を気にして変わることを恐れること、高い目標を持ちすぎてそれを断念した人は大勢います。でもその中で変わることの出来た人は、きっと素晴らしい物を手に入れられるでしょうね」
話を聞きながら、恵はキョトンとした表情になる。
「変わるための仮定って、以外と大事な物ですよ」
「(変わる……大切な武器で、大切な物を守るために!)」
恵は、銃のマガジン部分を捨て、乃恵琉から貰った物を差し込む。
それと同時に、銃身の電光板の色が輝く白から、雷光のような眩い黄色に変わっていった。
『エナジーボント』の構造は、改良されていった。いや、もう『エナジーボント』と言うべきではないだろう。
恵が付けた『エナジーボント』の新名は―――。
「(今からこれは、『電磁干銃(ヘルツライフル)』!!)」
『電磁干銃(ヘルツライフル)』は、2つの銃口を板東に向けた。
その2丁の銃は、微かに揺れるランプの光を纏って黄色く光った。
「絶対に、負けない。負けられないから!!」
もしも『ナチュラルランス』一筋で乃恵琉がやられたなら、恵には重大な責任がある。
そして、仲間を守るために恵は重大な役目を背負わされた。
汗の滲む手で、グリップを強く握り締める。
その時の銃の引き金(トリガー)は、妙に軽かった。
223
:
ライナー
:2011/11/19(土) 15:03:52 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
29、『電磁干銃(ヘルツライフル)』
銃口からは、電気の銃弾が音を上げて放たれた。
しかし、電気の銃弾は少し狙いを外して、板東が手を腰に当てて出来た三角形の隙間に吸い込まれる。
「おおっと? お嬢ちゃん、物騒なモン向けてくるねェ」
板東は銃弾が外れることを知っていたかのように、余裕の表情を見せる。
「職業には逆らえないよ、私の選んだ道だから。それとオジサン、私を舐めて掛かると痛い目見るよ」
224
:
ライナー
:2011/11/19(土) 15:03:51 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
29、『電磁干銃(ヘルツライフル)』
銃口からは、電気の銃弾が音を上げて放たれた。
しかし、電気の銃弾は少し狙いを外して、板東が手を腰に当てて出来た三角形の隙間に吸い込まれる。
「おおっと? お嬢ちゃん、物騒なモン向けてくるねェ」
板東は銃弾が外れることを知っていたかのように、余裕の表情を見せる。
「職業には逆らえないよ、私の選んだ道だから。それとオジサン、私を舐めて掛かると痛い目見るよ」
225
:
ライナー
:2011/11/19(土) 15:05:43 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
223≫、224≫はミスです。申し訳ありません。
とりあえず、224≫と考えて続きから掻かせていただきます。
226
:
ライナー
:2011/11/19(土) 15:58:36 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
今回の恵はいつもと一味違った。
何か信念を抱えて、戦場へと降り立った1人の姿だった。
その目にいつもの迷いはない。その目にいつもの慌てはない。
仲間を守るため立ち塞がる、たった1人の戦人だった。
「オジサンじゃなくて、お兄さんと呼んで欲しいモンだなァ。自重してオジサマでもいいぜェ?」
『ナチュラルランス』を手元で回しながら板東は言う。
しかし、恵は動じない。
「ヘッ、問答無用って訳かァ。そんじゃあヨォ、その痛い目ってモンを……」
板東は『ナチュラルランス』を大きく振り上げる。
「見せて貰おうじゃねェかッ!!」
『ナチュラルランス』の3本に分かれた槍先が、恵を目掛けて飛ぶ。
恵はそれを伏せて躱すが、矢印のように尖った槍先に、髪を束ねていた赤いリボンが攫われる。
「おおっトォ……リボンが八つ裂きだなこりゃァ……」
帯のような赤いリボンは、板東の力故に八つ裂きに裂けた。
一方、恵は白銀髪のポニーテールから、白銀髪のストレートへと髪型が変わる。
すると、『ナチュラルランス』の効果で刺した部分から植物が生える。
だが、いくら状況に応じた植物を生み出す事が出来るとしても、木に生み出す事は出来ないはずだ。
「(あの植物は一体……!!)」
確かに木の幹に生える植物は存在しない。が、木に寄生する植物は存在した。
宿り木。
恵は宿り木から急いで距離を取る。
しかし、宿り木の速度は恵の反応よりも素早く、恵の体に巻き付いてきた。
「んっ、くっ……!」
瞬く間に恵は、腕も足も全ての動きを封じられた。
「こりゃあスゲェ! 最近のガキはこんな大層なモン持ってるとはなァ。俺が有り難く貰ってやるよ」
板東は武器の効力を知ってしまった。
これどういう事か、それはただ打撃で押しても辛いのに、さらに効力まで知ったらこれ以上不利な事はないだろう。
相手とは武器を変えても、徹底的に力の差があった。それをさらに広げられたのだ。
極めつけには、恵自身が行動できないのが不利であろう。この時点で負けを認めざる負えない。
「(そ、そんな。ここまで来て……)」
動けない状態で、恵は絶望の淵に立たされた。
宿り木に縛られ動けない恵に、板東はゆっくりと『ナチュラルランス』を振り上げた。まるで打ち首をする侍のように。
恵は、ランプの光で何重にもなる『ナチュラルランス』の影の下で思った、申し訳ない悔しい気持ちで。
仲間を守りきれなかった事を。
自分を変え切る事が出来なかった事を。
そして、今も森で迷っているであろう啓助の事を。
今ここでやられれば、間違いなく全員皆殺しだ。
悔し涙を浮かべながら、恵は腕の力を抜く。
銃が床に滑り落ちた。
「(啓助君……)」
板東が、涙を浮かべる恵に近付く。
『ナチュラルランス』の槍先は、ランプの光を帯びて光る。何かを強く睨み付けるように。
「(啓助君……)」
そして、『ナチュラルランス』は真っ直ぐ恵の首筋へと振り下ろされた。
「(助けて、啓助君……!!)」
「これで終わりだァ!!」
瞬間、恵の首筋で激しい金属音が響き渡る。
激しい金属音は、木層の中で大きく反響させて、その場の空気を凍り付かせた。
そう、氷のような冷たいオーラで。
「大丈夫か、恵」
恵の頭上で、聞き覚えのある声が聞こえた。いや、恵にとっては聞き覚えのあるでは収まりきらないだろう。
その声は、啓助の声だったのだから。
227
:
ライナー
:2011/11/19(土) 17:35:39 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
「啓助君!?」
恵は思わず声を上げる。
啓助は歯を噛み締めながら、恵に笑顔を見せている。しかし、相手の押しが強いためかその笑顔は一瞬で消えた。
『マッスル』のアビリター相手に、啓助は押し返される。
「グッ……!!」
「お仲間とは、闇夜の灯火ってのはこの事だなァ」
板東は突然の事態に、まるで全てを理解していたように余裕だった。
言葉の後に、虫と人間の力比べをしているような圧力が啓助を襲う。
「……ッ、仲間なら当然だぜ!」
なおも啓助は余裕に振る舞う。木層の床に足を埋めつつも、まだ余裕に。
「俺のアビリティは『マッスル』。さらに武器を持った鬼に金棒な俺に、力押しは効かねェよ!」
『ナチュラルランス』は板東の手元で、啓助に圧力を加えていった。
啓助の足下で、木層の床が吊り橋が大きく軋むような音が鳴る。
「ッ……! 何でテメェが乃恵琉の武器持ってんだ!?」
すると、木の床が軋む音を止ませる。
「サッサと返しやがれ!!」
叫びと共に、板東の足下を氷の粒が襲った。
「何ッ!?」
氷の粒は足に直撃し、何かに躓(つまず)いたように板東を転倒させる。
その時、板東に隙が出来た。
それを突かんとばかりに啓助は動き出す。しかし、動き出したのは板東の方向ではなかった。
踏み出した方向は恵の方だった。
「え……?」
恵が呆気に取られていると、啓助は少し慌てた様子で恵に駆け寄る。そして、剣の切っ先で恵を捕らえていた宿り木を切り裂いた。
「よし、これで大丈夫だな」
宿り木を取り払って、啓助は恵の手を取る。
啓助と一緒に立ち上がった恵は、感謝の文字と、今まで募(つの)っていた思いが高ぶるのを感じた。
「ありがと……」
恵の口が「と」の形になったまま、硬直する。
何故なら啓助の頭上に、板東の振り上げた『ナチュラルランス』が影を作っていたからだ。
言葉を失ったまま、恵は『ナチュラルランス』が振り下ろされる瞬間を目の当たりにした。
途端に、啓助は木の床に頭からのめり込む。それと同時に、木屑が辺りを雪のように覆った。
「中々の判断だったがァ、一度やられそうになった仲間を助けるなんざァ、明後日を向いたなァ……」
今度こそ恵を救ってくれる者はいない。それどころか、自分のせいで啓助がやられてしまったと、恵は深く後悔した。
あの時、声を掛けていられれば……
しかしそうも言ってはいられない。恵はそこらの女子学生とは違い、アビリターユニオンの1人の隊員であり、目の前の敵に立ち向っていかなければならない。それに、もし啓助が恵の犠牲になってしまったのだとしたら、恵は啓助の分まで戦わなければならなかった。
「じゃあ……」
恵が手から滑り落ちた『電磁干銃(ヘルツライフル)』を拾い上げる。
「じゃあ、啓助君の判断が、本当に明後日を向いてたか教えてあげる!」
啓助が明後日を向く、見当の違う答えを出したか、それを導き出すのもまた恵の役目だった。
「良いだろォ、教えてもらおうじゃねぇかァ!!」
言葉と同時に、『ナチュラルランス』を握らない方の手の拳が向かう。
その攻撃を、恵は左肩に擦らせるようにして受け流し、敵の懐へ足を走らせる。
恵は走りながら銃をトンファーのように持ち替えた。そして、ハンマー部分を板東の鳩尾(みぞおち)目掛けて打ち込む。
「ヌッ……!」
板東は低い厳つ声を上げて、ランプの灯る後方へと微かに足を擦らせた。
すると、あたかも板東が足を擦らせ起こったように、木層に飾られたランプが怪しく炎を揺らした。
228
:
ライナー
:2011/11/20(日) 17:56:37 HOST:222-151-086-003.jp.fiberbit.net
「……クゥ、やるねお嬢ちゃん。まさかとんでもねェアビリティを、持ってるんじゃねェだろうなァ」
くぐもった声に、恵は2つの銃口を向ける。
一応、恵も『ヴィーナス』という心を動かす能力を持っている。だが戦闘には全く関係ない能力で、それを板東に教えるのもまた別の話だった。
そう、今は自分の生まれ変わった武器を頼るしかない。
恵はトリガーを握り締め、銃口から電気の銃弾を撃つ。
電気の銃弾は、まさに光の速さと言っても過言ではないのだが、板東の手に握られる『ナチュラルランス』に帯電し攻撃が出来ない。
電気の銃弾が効かないとすれば、エネルギーの銃弾も効かないであろう。すると、恵に残された攻撃方法は、打撃。しかも恵の場合だと「銃拳術(じゅうけんじゅつ)」と呼ばれる、トンファーを使うような接近戦だけになる。
しかし、簡単に接近戦と言っても、恵より『マッスル』のアビリティを持っている板東の方が有利と言える。遠隔戦が唯一の頼みの綱だったのだから。
そんな絶対不利的状況の中、容赦無く板東が振り下ろす『ナチュラルランス』が恵に襲い掛かる。
「今度は逃がさねェ!!」
咄嗟に恵は銃身を槍先に向け、直接的な攻撃は防いだ。もし躱しでもしたら、また宿り木が襲って来るであろう。
激しい金属音を痛々しく思いながら、恵は『ナチュラルランス』を放り上げる。
『ナチュラルランス』が板東の片腕と一緒に上げられた。その瞬間、板東の胸部に隙が出来、恵はその中へ飛び込むように走った。
グリップを透かさず持ち替え、ハンマー部分で再び板東の鳩尾(みぞおち)を打ち込む。
しかし今度は、板東に変化が無い。
「……?」
恵が疑問符を上げていると、板東の右膝が恵の腹部を激しく突いた。
「……ッ!!」
瞬く間に、恵はくの字に曲がりながら後方へ飛ばされる。
空中でバランスを取り、何とか足を地に着かせ、口元の血を拭った。
「へヘッ、同じ手は食わねぇんだなァこれがァ……」
同じ手が通用しなくなった今、攻撃する度にその攻撃パターンを一々考えなければならない。だが、そこまでのバリエーションがあるかどうか、その攻撃で何回ほどで倒せるか分からない。場合によっては全て効かずに攻撃のバリエーションも無くなるかもしれないのだ。
「きっと素晴らしい物を手に入れられるでしょうね」
「仲間なら当然だぜ!」
自分を守ってくれた仲間の声が、恵の頭を過ぎる。
「(みんなのために……!!)」
恵は板東の方へと走った。
板東は待ってましたと言わんばかりに、素早く3本の槍先を突き出す。
「サッサとくたばれあぁッ!!」
一見、恵の走りはただ何も考えず、相手に向かっているだけのように思えた。しかし、それは違った。
突き出された槍先は、先程と同じように『電磁干銃(ヘルツライフル)』の銃身によって防がれる。
「だから、同じ手は効かねえって……!!」
板東の口は「て」の形を保って、それ以上発せられることはなかった。
何故なら、恵は『ナチュラルランス』を押さえていたからだ。
『ナチュラルランス』の矢印のような槍先に、『電磁干銃(ヘルツライフル)』の銃身を引っかける。そして、槍の長い柄に膝を重ねた。すると、最後に銃身を思い切り下に下ろす。
「ナッ……!?」
これにはある原理が利用されていた。
梃子の原理。
膝を支点、銃身を力点として、恵は板東の方に向けられた『ナチュラルランス』の柄頭を上げた。
シーソーのように上がった槍の柄頭は、勢いよく板東の顎に当たる。板東は柄頭を顎に乗せて動きが取れぬまま、アッパーを受けたように大きく宙を舞った。
瞬間、板東の手から『ナチュラルランス』が離れた。と言うことは……
「(電気を防ぐ物は、もう無い!!)」
透かさず、恵は『電磁干銃(ヘルツライフル)』の銃口を板東に向け、トリガーを引いた。
「{電圧波動(ボルトサージング)}!!」
恵はそう言うと、銃口からは球体の形をした電気が勢いよく流れる。そして、そのまま板東に向かって一直線に放たれた。
その速さはまさに雷光の如く速さで、2つの銃口から放たれた2つの電気の弾は1つに重なる。1つになった電気の弾は周りの物を蹴散らすような勢いで、板東の体を捕らえた。
「何イィッ!!」
激しい電気の轟音は、グランドツリーを突き抜けた。
229
:
ライナー
:2011/11/22(火) 23:04:04 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
グランドツリーの木層内。
木層内の一部は嫌に黒みを帯びて焦げていた。まるで、その部分だけが闇に囚われたように。
恵は銃口を下ろし、トリガーから指を離す。
「う……あァ……」
黄色掛かった白い電気閃光を帯びながら、板東は倒れ、微かな唸りを上げる。
恵の息は荒かった。銃を持つ手は震え、澄んだ紫の瞳は泣き寸前の子供のように雫を溜めていた。
震える手を押さえるように銃のグリップを握り締め、ゆっくりとベルトのカバーに収納した。
―――勝ったのだ。
無力に感じた自分の力で、不安が襲った新たな武器で。
勝ったのだ、様々なプレッシャーに足下を崩されながらも。
途端に、雫を溜めた両目から涙が流れる。不安と言う鎖を破って、恵はいつの間にか、いつもの自分に戻っていた。
あがり症な自分に、少し気弱な自分に。しかしその中にも揺るぎない自分があった、仲間を守りたいと思える自分だ。
それでも涙は止まらない。嬉しいのか、悲しいのか、それさえも分からないくらいに。嬉しさや悲しさ、そんな感情を涙が全てを洗い流すように。
隊服の裾で、顔全体に散らばった雫を全て拭い取った。
ぐしょ濡れになった裾を少しスカートに擦り付けて、隊服の懐から携帯を取り出す。
「グランドツリー、板東鋳央沙捕獲任務、遂行しました。回収お願いします。それと、負傷者3人の手当の方もお願いします」
僅かに震えた声で、オペレーターに任務遂行を告げた。
「了解しました。すぐに回収の者を派遣いたしますので、そこまでの切り盛りを宜しく願いします」
恵が携帯を顔から離す前に、向こう側から通話を切った。
不通音を3回ほど耳に入れ、やっと恵は携帯を離す。
人の変わる時。
何だかその一瞬だけ、その言葉を自分のものだと思えた気がする。そんな恵だった。
「あ、応急手当てしなきゃ!」
パトカーの妙に間延びしたサイレンが、先程までの緊張感を和らげるようだった。そしてその座席には、手錠を掛けたボロボロの板東を乗せていた。
「えっと……啓助君、大丈夫なの?」
僅かに俯き、顔を赤くしながら、恵は言う。
「ああ、頭にちょっと打撃を食らっただけだからな」
啓助は頭に包帯を巻いただけで、他はあまり支障は出ていないようだ。しかし、恵には自分の応急手当がまともだったか、不安でたまらない。
恵と啓助のやりづらい間に、タイミング良くユニオンの救護班が乃恵琉と麗華を運んで行く。
「「………」」
救護班が去った後、結局同じ結果が待っていた。
「あー、あのさ、恵」
沈黙に耐えられなくなったのか、啓助が頭を掻きながら話しかける。
「な、何?」
「良く倒せたな、あんなゴツイ奴」
我ながら普通すぎる話題だな、と啓助は思う。
「う、うん。新しい武器が、役に立ってくれたから」
言いながら、恵は『電磁干銃(ヘルツライフル)』の銃身を見つめた。
「そうか。まあでも、前より頼もしくなったな」
「ど、どうかな……」
2人はそれぞれ微妙に視線をずらしている。合わせようと思っても、合うのが何だか恥ずかしいのか、磁石のS極同士が触れ合おうとしてはね除けるかのような光景だった。
「本当に安心して、背中預けられるって感じだな。これからも頑張ろうぜ!」
恥じらいを振り切るようにして、動くことを躊躇(ためら)った首を無理に恵の方へ向ける。
その時調度、恵も同じように顔を向けていた。
「う、うん!」
230
:
ライナー
:2011/11/23(水) 14:21:07 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
30、危機は迫った
何とか任務を成功させた啓助達(恵が成功させた)は、チームルームに戻っていた。
「簡単に手足を折られるとは、情けないです……」
腕と足に、それぞれ片方ずつ包帯を巻き、松葉杖を脇に挟んだ乃恵琉が椅子に腰掛けていた。戦闘で眼鏡を割られたせいか、今日は眼鏡越しに見える緑の瞳がそのまま見えた。極めつけには、眼鏡がなくて髪を解かす余裕がなかったのか、旋毛の部分にアンテナのような寝癖が立っている。
「私なんてもっと最悪よ、姿さえ拝めなかったんだからね!」
膨れっ面でご機嫌斜めな麗華は、乃恵琉と同様に椅子に座っている。しかし、その肩はガッチリと固定されていて、それは麗華の肩に怪我がある事を示していた。
2人は重傷で暫く安静にしていたが、病室で使える体の部位を鍛えていたらしい。乃恵琉と麗華の2人はプライドが高かったため、余程負けが悔しかったのだろう。
それを察しながら、啓助はユニオン隊員40人斬りなんだから仕方ねーよなー、なんて考えて、自分の登場の中途半端な悔しさを紛らわしていた。格好良く恵を守って、格好良く板東を倒せれば啓助にとって問題無いのだが、倒れてしまっては元も子もない。
「辻、苛つくから20回蹴らせなさい」
突飛な言葉が啓助の耳に届く。いや、麗華ならば突飛ではなくこれが普通なのかもしれない。
どちらにせよ、恵が戦闘状況を話し、その話の中で蹴りという言葉が多く使われていたためだろう。まあ、そう考える前に、麗華の両肩が使えないと推測する方が的を射ているだろう。
「苛つくのはカルシウムが足りていない証拠だ、牛乳でも飲んでろ」
麗華は体の疲れとプライドの崩壊が限界に達したのか、それ以上何も言わなかった。
無論、そんな麗華を気遣う余裕は啓助に残っていない。プライドを除けば、乃恵琉と麗華の2人の半分ダメージを負っているのだから。
「………」
しかし、その会話が切れると、深海のような沈黙がチームルームを包んだ。唯一の音源、井上洋は、運悪く食堂でまだ食事をしているらしい。
「ただいま〜」
暢気な声がチームルームの沈黙を救った。
全員が静かなものだから、ユニオン所属直後のせっぱ詰まった空気に啓助は押しつぶされそうになっていた。
一切会話がなかった恵もチームルームに居るには居るのだが、啓助との帰還途中で、一言も喋れなかったことが今に至った。
啓助がホッと一安心すると、それを打ち消すように放送が入る。
〜お知らせします。第3番隊B班所属の辻啓助隊員、20階研究室までお越し下さい、霞浦隊長がお呼びです。繰り返します……〜
「よ、呼び出しぃ!?」
放送が終わる前に、啓助が叫びを上げる。
いつもユニオンにいる時は運が無いな、と啓助は感じる。それに呼び出し人が第2番隊隊長霞浦と言うと、水中訓練以来だ。今でもあの姿が怖くてならない、薄紫色のショートカットという髪型、細い目の中に光る青い瞳……
とにかく、乃恵琉や麗華よりも苦手意識に駆られて、疲れ切った表情で溜息が出てしまうほどなのだ。
「呼び出しですか。呼び出しと言えば、駄目隊員に説教をするためにしかやりませんが……」
乃恵琉の言葉が啓助を駄目隊員と言っていることは、薄々啓助も感づいていた。それはそうだろう、啓助は今までまともに勝ちを収めたことが無く、やっと勝ちを収めたと思えば、それは自分のアビリティが暴走をしていたときのみなのだから。
啓助は、恰(あたか)も行きたくないと言っている重たい足を動かして、渋々チームルームを出て行った。
チームルームがある階は3階で、20階はとても遠い距離にあった。遠いと言っても、エレベーターを使えばそんなに時間が掛からないじゃないかと一見思う。しかし、不運なことに今日のこの時間帯はエレベーターの点検があると言うから面倒臭い。
流石にユニオンで厳しい修行を熟していると言っても、17階の差は中々に辛いものだ。啓助は15階当たりまで全速力で走ったが、息が続かない。ビルなどより、ユニオンはそこまで甘くない。大きな敷地を利用しているために、ユニオン自体がそもそも大きい。そのため、階段の四角い螺旋も大きく、むしろ梯子で登っていきたいと思う人間もいるという話だ。
行きたくないと言う感情よりも、もう持たないと言う感情が啓助の足を思わせる。
「つ、着いたーっ!」
棒になった足で20階に着き、啓助は1人寂しく歓声を上げる。気分はもう、フルマラソン42、195キロメートルを走り終えたランナーのようだった。
しかし、そのハイなモチベーションも、説教が待っているかも知れないと思い出すと、一気に右肩下がりに変化する。
重たい足をゆっくりと手を添えて運びながら、研究室の方へ移動する。
231
:
ライナー
:2011/11/23(水) 16:28:00 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
「(嫌だー、訓練生に降格とか言われたらどうするよ、俺!?)」
本来、ユニオン正式隊員になるには、入団試験を受けて、訓練生になる。そしてある程度の成績で、正式なユニオン隊員になれる。その上には専攻隊、即ち特別専攻部隊というものがあるがそれは置いておいて。啓助は緊急時の入団で訓練生を飛ばして、いきなり正式なユニオン隊員になったのだ。事態が落ち着いてきた今、啓助が正式隊員になる確率は極めて低い。
しかし、啓助が訓練生になりたくない理由は何なのか。それは今の訓練生の現状を見れば一目で分かる。
訓練生はほぼ不良じみた者が多く、体も心も弱い奴は即パシリされるという噂が立っているからだ。
「辻、早くしなさい」
啓助がそんな気持ちを過ぎらせていると、それを覚まさせるように第2番隊隊長霞浦の声が掛かった。
初めて見る、青いラインの入ったゴアテックパーカーに硬い表情を見せながら、恐る恐る歩みに寄る。
「じゃあ、研究室の方で話があるから、入って」
堅い動きをした啓助の背を押して、ゆっくりと研究室の方へ入って行った。
中に入ると、研究室っぽく機械チックなイメージな部屋だ。啓助はその部屋の中をぐるりと見渡して、思い出した。確か綱板町付近の路地裏で、キルブラックの幹部に出会い、気を失って、目覚めたらこの研究室に居たのだ。
思えば、何故あの時初めて入った研究室を出て、医務室に辿り着くことが出来たのだろうか。
「じゃあ、そこに座って」
霞浦が勧めた席は、これまた機械チックなデザインで、座っているだけで何でもしてくれそうな便利グッズに見えた。
啓助は言われた通りにその椅子に座り、テーブルを挟んで、霞浦と向かうように座る。
「突然だけど、貴方は『ディシャスアビリティ』って言葉はご存じかしら?」
霞浦の澄んだ声は、戦闘部隊の隊長とは思えない様な声だった。
しかし、それも啓助には恐ろしく聞こえ、緊張したまま言葉が耳に届く。耳に届いたのは良いが、言葉の意味自体啓助は知らない。『ミクロアビリティ』があるなら『ディシャスアビリティ』とは何の事だろうか。
くしゃみが出る寸前のような、可笑しな疑問系の顔に啓助の顔が変形する。
「……知らないって顔してるわね。『ディシャスアビリティ』って言うのは『ミクロアビリティ』の一種で、異能の力が強いために、持ち主の体にも大きく影響するものなのね」
霞浦は啓助用に分かりやすい説明をしたつもりだったが、啓助はあからさまに疑問符を浮かべていた。
コイツは本当に日本人か、そう霞浦に思わせて、啓助はやっと分かったような顔になる。どうやら、言葉を理解するのに時間が掛かるらしく、それが階段のせいだと言うのは霞浦には知るよしも無かった。
啓助はやっと頭で理解して、頭脳の整理が着くと、いつかの麗華の言葉を思い出す。
「アビリティは頭脳を持つとドンドン強くなっていくけど、宿っている体の免疫や身体能力よりも強くなると、その体を乗っ取ろうとするのよ」
しかも再現された中で、「アンタは弱いからすぐ殺されるだろうけど」と言う毒舌も、啓助の記憶の箪笥(たんす)から蘇った。
「この間の検査で、貴方のアビリティが『ディシャスアビリティ』だと分かったの」
霞浦がそう呟くと、啓助の座った機械チックな椅子から錠が出てくる。
「……ッ!?」
啓助が声を上げたときは、肘掛けと椅子の足が啓助の両手両足を錠で縛っていた。
「悪いとは思っているわ。でも、貴方のアビリティ暴走すれば、ミクロアビリティの事で国家を揺さぶる事になる。そうならない内に、貴方のアビリティを抜き取る。つまり……」
席から霞浦が立ち上がり、、指を鳴らす。
「死んで貰う」
霞浦が言い終わると、啓助を繋ぎ止めていた椅子は、収納されるかのように下へ沈んでいく。
考えてみれば不審な点が1つあった。
何故、研究室で話す必要があったのか。
そうだ、何で研究室で話す必要があったのか、話すだけなら会議室と言われる任務の会議をする場所でも充分出来たはずだ。何故研究室が必要か、それは、辻啓助という危険人物をこの世から追放するためだ。
殺したくなくても、アビリティを抜き取る事で必ず死に至る。これは仕方がない事だったのだ。
だが、啓助にとっては関係無い事では無い。自分の生死に関わるのだ。
まさか偶然飲み込んだアビリティが、そんな危険なものだったなんて……
啓助はそんな感情を乗せて、機械チックな椅子と共に床の下へ完全に沈んでいった。
232
:
ライナー
:2011/11/23(水) 17:09:49 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
〜 作 者 通 信 〜
久々のオマケじゃない作者通信です(笑)
啓助君が今回かなりのピンチと言うことで、この後の展開にご期待下さい。
さて今回は、武器のことについてです。
今までに出た武器を挙げてみます。
『電磁干銃(ヘルツライフル)』、『ナチュラルランス』、『エナジーボント』、『氷柱牙斬(つららげざん)』、『白鳥夢掻(しらとりむそう)』、『リモートユニット』、『ファイアブローム』
うーん、数えても7つと言うアビリティとのバランスの悪さ^^;
これからも武器の方も増えますので、よろしくお願いいたします。
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