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堕天の歌-La canzone ai cieli-

2霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2011/04/04(月) 14:08:47 HOST:i121-116-177-173.s04.a001.ap.plala.or.jp
序章 始まりの歌

 静かな歌声が辺りに響く。歌声の主は、ノエリア=クローチェ……この国で一番の美声を持つ、と有名な歌姫である。透き通った水色の髪に、神秘的な紫の瞳。背中には真っ白で美しい天使の翼。そんな彼女は薄いピンクのワンピースを着ている。ここ、天空都市エーテレに住む天空人の中でも有数の美しさを持った少女だ。誰にでも平等に接して、いつでも笑顔を振りまいている。いつだって前向きで、一部の者以外に涙を見せることは決してなかった。生まれはエーテレのはずれ、ディゼルターレ……見捨てられた地と呼ばれ、荒れはれた土地にある小さな集落である。
 そんな歌声はいつも疲れきった人々を癒していた。争いの絶えない下界……人間や数多の動物のすむ場の人間達にとって、稀に聞こえてくる彼女の歌声がどれだけ心に響くものだったのか……。ノエリアはそんな人間達を見ては神に祈るのだった。神に近しいといわれる天空人が神に祈るのも少々可笑しいかもしれない、そう思いながらもノエリアは祈ることをやめなかった。実を言うと下界の戦いには天空人も協力をしている。それも人間側に。魔法使いや吸血鬼の人間ではないものに力を貸す、それが正しいとノエリアは思うが、人間は非力だ。そんなことをしてしまえば保たれてきたバランスが大きく崩れることになるだろう。

 「ノエリア……ここにいたんだね」

 寂しげな、少女のような声がノエリアの耳に届いた。気付けば目の前には肩位までの長さの明るい橙色の髪に青の瞳の少年が立っていた。背中にはノエリア同様、天使の翼。少年とは言っても顔立ちはどちらかといってしまえば少女のようで、背丈も小さい。それゆえか、ノエリアと並んでしまうと姉妹のようにも見えてしまう。そんな少年の名前はスピーリト=グランデ。ノエリアと同じディゼルターレの生まれでありながら、ここエーテレの中心部、チェントロにある戦闘、守護部隊の守護者達(ガーディアンズ)の第一部隊隊長を任されている出世頭だったりする。服装は真っ白なスーツ調のものである。この格好で戦いに出たりするのだから人は見かけによらないということだろう。

 「ノエリア……私の部隊の下界入りが決定した」

 その言葉がノエリアにとってどれだけ鋭い武器のようだったものか……ノエリアは実の弟のようにスピーリトを可愛がっていたし、スピーリトも実の姉のようにノエリアを慕っている。そんな家族のような存在が下界での戦争に加わる、というのだ。下手をすれば生きては帰ってこれない。見えるのは絶望……それだけである。死なないで帰ってくるなんて言う希望がないわけでも無いが、隊長クラスの者であれば危険は自然と多くなる。幸い人間は天空人に対して友好的であるし、魔法使いの一族や吸血鬼も天空人に対してそこまでマイナスイメージは持っていない。ただ戦争となってしまうとそれも別である。マイナスイメージを持っていなくても自分たちが生き延びるために天空人を平気で殺してしまう。
 嘘だ……そう叫んでしまいたかった。それでも目の前で静かに笑うスピーリトを見てしまうと、それも許されないようなそんな錯覚に落ちてしまう。対してスピーリトは必死に泣くのをこらえていた。別れたくなどなかった。死ぬと決まったわけではなかったが死ぬのが怖かった、目の前で仲間を失うのが怖かった……。しかしそんなことを口に出せばノエリアは迷わずに政府に乗り込んでいくだろう。それだけは避けたかった。欲望の渦巻く汚い世界などノエリアには見せたくはなかった。天使だ、と人間は自分たちのことを言うがそれは違う、と政府を間近で見ているスピーリトは思う。

 「……私の部隊にはレティアもいる……だから伝えておこうと思って」


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