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Il record dell’incubo〜悪夢の記憶〜

1霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2011/03/06(日) 23:06:24 HOST:i114-180-240-196.s04.a001.ap.plala.or.jp
初めまして、霧月 蓮(ムヅキ レン)と申します。ここでは始めて小説を書かせていただきます。

更新は非常に亀で、誤字脱字も非常に多いですが、生暖かい目で見てくださると助かります。
出来るだけ遠まわしに表現するように致しますが、グロイ表現が多々あります。それでも大丈夫、と言う方はどうぞよろしくお願いいたしますね。

アドバイス、感想等があれば喜んで。

一応、学園、ファンタジー、歪み、と言った感じの者が中心となっています。特殊能力が出てきたり、魔法使い吸血鬼が出てきたりと、多分滅茶苦茶です
非常に駄文で、まとまりのない文章ではありますが……。

73霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2011/12/10(土) 14:38:44 HOST:i121-115-42-103.s04.a001.ap.plala.or.jp
 深く息を吐き、呆れたようにしながら優希は銃の引き金を引く。まさか当たるわけがないだろうと思いながら、刹の反撃に備える。冷たい刃が首に当てられた。不思議とそんな状態になってまで優希は冷静だった。刹が短く息を吐く音が聞こえて、咄嗟にしゃがむ。ぎりぎりで交わすことが出来た刀は、髪をかすめてパラパラと髪が舞う。避けられたことにか、それともわざと遅い動きで刀を振るったのに、ぎりぎりで避けたことに対してか、刹は不愉快そうに顔を歪める。
 優希はしゃがんだ体勢のまま刹の体勢を崩そうと払いを入れたが、音もなく避けられてしまう。静かに刹が刀を鞘へと戻し優希に背中を向ける。どういうつもりだろうか、そう考えて首をかしげる優希をよそに、刹はさっさと歩き出した。刹が向かう方向にあるのは生徒会室程度で、あとは下の階に下りるための階段があるぐらいである。そうなると紅零と合流するつもりかと優希はため息をついて、刹を追う。

 「っち……追ってくんなっての」

 小さな声で刹呟いたかと思えば、いくつもの刃が宙を踊った。キラキラと光を反射しながら飛び交う。あまりにも突然すぎて優希は刃の中へと突っ込んでいった。刃が肌を裂く感覚と飛び交う刃の風斬り音に顔をしかめながらも、足を止めようとはしなかった。追いつかなくてはいけないという妙な使命感が優希を支配していく。何とかして刹と紅零が合流するのを阻止しなければ、何か嫌なことが起きてしまうような、そんな気がして、優希は必死に刹を追う。
 そんな優希を見て刹は呆れたような表情を見せて、前方に見えてきた扉を確認する。流石にここまで連れてきてしまったらどうしようもないと判断したのだろう。優希に向けて使っていた能力を全て解除して、一刻も早く扉の奥にたどり着くことを優先した。そんな刹をみて優希も走るスピードを上げる。差は縮まらないがどうせ一本道見失うことはない。それこそ瞬間移動でも使われない限りは。

 「待てっての!!」

 優希の手から白い光線が放たれる。一か八か刹を怯ませることができれば、と放った自らの力を応用して作った不健康なほどに白い光。その光は音もなく真っ直ぐ飛び、刹の背中へと迫る。刹が気づいた頃には、光は既に刹を貫く寸前で……。咄嗟に体を捻らせた刹の横腹を容赦なく抉った。ボタボタと滴り落ちる大粒の血の雫と刹があげた短い悲鳴に優希は思わず目を見開く。楽に避けられるだろうと思っていた、防がれると思っていた。当たってもかする程度だと思った。だから今目の前で起こっている状況を理解できない。……いや、理解は出来るが、それを認めたくない。
 大きく揺れた刹の身体は、壁にぶつかってそのまま崩れるかのように倒れこむ。荒い呼吸の中に混じった呻き声は耳を塞いでも聞こえてきて、優希は悲鳴を上げる。今は敵でも、仲の良い友人だった……そんなつながりが優希を戸惑わせる。敵なのだからと放っておくべきなのか、それとも友人だからと助けるべきか。答えは出ているはずなのに優希は動かない。動けない。助けたいのにこいつが死ねば被害が減るかもしれないとそう考えてしまって……。その間にもどんどん刹から紅は流れ出て……。

 「あら……遅いと思ったら。刹をそんな風にしたのは貴方?」

 扉を開いて紅零が出てきた。ゆっくりと振り返る優希に柔らかな微笑を向けて。優希が警戒するような、それでも刹を気に掛けるような動作をするのを見れば紅零は嗤う。お前がやったんじゃないかとでも言うかのように、銃を構え冷たく嗤う。唾を飲み込む優希の手は僅かに震えていて、かすれた声で能力の発動を宣言する。刹の傷を塞ぐために現実を歪め、別の現実と繋ぎ合わせる自らの能力。能力が完全に発動されるよりも早く、紅零が引き金を引いた。軽い乾いた音が響き、飛び出した鉛弾は容赦なく優希を貫く。

 「ねえ、さま……?」
 「ごめんね。役立たずは要らないのよ?」

 銃口を突きつけられた刹は虚ろな目で紅零を見上げて、涙を零した。そしてゆっくりとした口調で「ね、さまの役に、立て、なかった……。ごめ、なさい」なんて言って、笑う。弱弱しくて今にも壊れてしまいそうなそんな儚い笑み。それを見て紅零は静かに微笑みその頭を撫でる。今までは十分役にたったとでも言うかのように優しく、静かに……。静かな時間を破ったのは刹の唸り声。僅かに顔をしかめて紅零は引き金を引く。

 「さようなら。……私の可愛い片割れ……」

74霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2011/12/31(土) 20:52:38 HOST:i118-21-88-174.s04.a001.ap.plala.or.jp
 飛び散る赤と、ぐったりと横になる自らの片割れをぼんやりと眺めた後、紅零は静かに歩き出す。頬を透明な雫が伝い、落ちていく。何が悲しいのか、何が辛いのか、紅零には理解できない。いや、理解したくない。雫を拭い、歩くスピードを速める。早くこの場から離れたい。そんな考えが頭を支配していく。そんな考えをかき消すために、まず月華と合流して戦況を確認して、その後は残っている生徒会メンバーを集めて……。そこまで考えて紅零は深く息を吐く。

 「流石に身内を殺すのには罪悪感を感じるのかしら?」


 そんなことを呟いて一人、月華が待っているであろう場所へと急いだ。

             *

 屋上。春の暖かな光の中に湊と蓮はいた。湊はぐったりと横になり、蓮はフェンスに座ってぼんやりと空を眺めていた。罵声の響く校内とは違って穏やかな様子。時々、微かな銃声や爆発音が聞こえるが、そんな音は似合わない光景。ぼんやりと空を眺めながら「あんまりドンパチやってると校舎崩れるんじゃねぇかなぁ」なんて気楽に呟く。ふと湊に目を向けてそろそろ目を覚ますだろうか? なんて考えた。
 ピクリと湊の手が動く。完全に力が抜けていた身体が痙攣したかのように震えて、もぞもぞと動いた。それを見て蓮の口元が弧を描いた。ゆっくりと確実に湊が身体を起こしす。しばらくの間あたりを確認するようにキョロキョロと周りを見回していたが、フェンスに悠々と座っている蓮を見た瞬間に、勢いよく立ち上がった。鋭く蓮を睨みつけて、ポケットに手を滑り込ませ、植物の種子を握る。

 「ずいぶん遅いお目覚めだな。優希、死んだぞ。後は羽音とか言うやつと風雅って言うやつもそろそろ、だ。相変わらず月華は化け物だな」

 声を殺して蓮は笑う。面白いことになったと言うわけではなく、投げやりな笑み。声を失う湊はポケットから手を出して、蓮へと蔓を伸ばしていく。深くため息をついた後小さな声で「サラマンダー、焼き払え」と呟く。瞬間辺りが炎に包まれて蔓が焼け落ちた。湊自身は種子から手を放し、咄嗟に炎の届いていない位置へと避けどうにか無傷。それを確認した蓮はつまらなそうに舌打ちをした。
 隠し持っていた拳銃を取り出して蓮へと向ける。無駄だろうと思う半面、召還を行うのが間に合わなければ、もしかして……なんていう風に考える自分もいて、安全装置を外す。それでも蓮は焦りもせずに、黙って湊を眺めていた。撃てるものなら撃てばいいとでも言うように足を組んで悠々と。鋭く蓮を睨みつけながらギリッと歯軋りをし、湊は引き金に指をかける。沈黙の後に乾いた音が響いた。

 「無駄だっての。この学園じゃそんなもの玩具だろ?」
 「なぜ妹を殺した? 目的は?」

 湊の問いを聞きながら、銃弾を防ぎ、蓮は首をかしげる。しばらく考えるような動作をした後なんでもないことのように「月華の指示さ。宣戦布告をして来いってな」と答えた。湊は凄い速さで蓮の座っているフェンスを蹴る。僅かに目を見開くも、バランスを崩すわけでもない。自分のことを睨みつけている湊を嘲笑ったかと思えば、静かにフェンスから下り、湊の後ろに立つ。

 「まぁ、俺はお前と戦うつもりはねぇし。ゲストに登場してもらうか?」

―――――

スランプ到来orz

75霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2012/01/04(水) 00:52:12 HOST:i114-183-46-33.s04.a001.ap.plala.or.jp
 蓮の言葉と同時に銀の光が湊の周りを漂った。ゆらゆらと不自然に揺らぐ光はゆっくりと人間のシルエットを作り上げていく。そして一際まぶしい光を放ったかと思えば、光は完全に刹へと姿を変える。刀の柄に手をかけて片膝をついた状態で、瞼はしっかりと閉じられて……。湊が驚いたように目を見開くのをよそに刹は動かない。変わりに、とでも言うように蓮が笑う。その笑みに、何の反応も示さずに片膝をついたまま瞼を閉ざす刹の姿から湊は目を逸らせずにいた。美しいと思ったわけじゃない。……狂気だ。湊はそう呟いて、身震いする。言いようのない不安と、恐怖。
 どうするのが正解か、どんなことをしたらいけないのか、上手くこの場を切り抜けるには? そんな考えが雪崩のように押し寄せては消えていく。唾を飲み込み、蓮と刹がどんな行動に出るのかを窺う。ゆっくりと刹が目を開いて、辺りを見回すのを見て思わず身構えてしまって、湊は深くため息をつく。大丈夫だと言い聞かせてまっすぐ刹を見つめる。目を離すとすぐ切りかかられてしまうような、そんな気がして……。

 「ふぅん……契約は成立ってことでいいのかな? 蓮」

 しばらく自分の手を見つめていた刹がフッと蓮に顔を向けて問う。わざとらしく考えるようなしぐさを見せた後に、蓮は小さく頷く。唖然とする湊に向かって「死霊召還。普通の召還術師は絶対に手を出さない系統の召還さ。それこそ頭がイカレた愉快な奴がやることだ。まぁ、召還物が生きている間に契約を交わす必要があるんだけどな」なんて言って、再びフェンスに腰掛ける。僅かに顔を顰めた湊に刹がいつの間にか抜き放った刀の切っ先を向ける。
 その状態でしばらく硬直。何かを請うように蓮を見つめていると答えるように「好きにしろ。こっちに被害が出ないようにしろよ」と蓮がいう。その言葉を聞いた瞬間、刹の唇は弧を描き一気に刀を引いて構える。その瞳は鋭く湊を捉えて動かない。慌てて刹の動きを封じようと植物の蔓を伸ばす湊。それに絡めとられて、身動きを取れなくなっても刹は焦るどころか楽しそうに笑みを浮かべるだけだった。

 「ねぇ、湊? 覚えてる? あの日以前にお前がしたことを」

 甘い声。それとは酷くかけ離れた刹の冷たい表情に湊は息を飲んだ。刹を捉えるその瞳が不自然に揺らぐ。それを見て刹は満足そうに笑って「覚えてるみたいだね。じゃあ今すぐ償え」と吐き捨てる。目だけが決して笑っていない笑顔と、驚くほど冷たく、低い声。その姿が、声が、全てが不気味で……。
 刹那、炎が舞った。炎の赤は鮮やかに揺れて蔓を燃やしていく。咄嗟に蔓から離れた湊は、フェンスに寄りかかるようにして、バランスをとる。炎の中心に立つ刹を見て声を上げる。必死に「あの頃の僕がしたことは、確かに軽率でした。……で、でもあの頃の僕は無知で……」と叫ぶかのように……。そんな湊を炎の中心から刹は冷たく、ただただ冷たく眺める。

 「無知は免罪符にはならない。僕たちは、お姉様はお前のことを信用していた。……でもお前は裏切った。なんでもないような顔で輪の中に加わるお前を何度引き裂いて、ばらばらにしてやりたいと思ったか……」

 冷たい声。ずるずると力なく座り込む湊に刹はゆっくりと近づく。一歩一歩を確かめるように、しっかりと湊に向かって歩く。カタカタと小刻みに震える湊を見下ろして刹は首をかしげた。意味が分からないというように。静かに振り上げた自らの刀をぼんやりと眺めた後、ため息をつき、刀を鞘へと収めて笑う。そして先ほどの冷たい声が信じられないくらいに明るい、無邪気な声で「昔話をしましょうか?」と言った。
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書けば書くほど読み難さが進化していく。
読んでいる人がいるのか不安になってきたけど、僕は書き続けます((

76 ◆REN/KP3zUk:2012/01/04(水) 18:10:43 HOST:i114-183-46-33.s04.a001.ap.plala.or.jp
 今にもなきそうな顔で刹を見上げる湊と、楽しそうに笑みを浮かべる刹。その二人をぼんやりと眺める蓮は、落ち着かないようで足を組んだり、伸ばしたりを繰り返す。そんな蓮を咎めるように刹は一瞬だけ顔を蓮に向ける。僅かに肩をすくめた後、脱いでいたフードを深くかぶり、蓮は立ち上がった。そしてしばらく湊を見つめた後、くるりと背を向けて、屋上から飛び降りた。直前に「刹、リミットは三十分だ。無駄話で時間を潰さないようにな。湊は、もし殺されずに済んだら、俺の教室に来い。ヒントをやるよ」なんていう言葉を残して。
 わずかに面食らったような表情をしていた刹も、やがて聞こえてきた鳥が羽ばたくような音を聞けば、ため息をついて視線を湊へと戻した。あまり時間は無駄に出来ない、そう考えて刹は静かに息を吸い込んだ。さっさと昔話を終えて償いを……。自然と刀の柄を握る手に力がこもる。死んでいても生きている時とほど変わらないものじゃないかと刹は笑う。

 「昔、聖鈴学園は闇と光という区切りではなく一般能力選抜科、特殊能力選抜科と言う区切りで分けられていました。その少年は一般能力選抜に属していながら、嫌われ者だった特殊能力選抜の六人と仲が良く、頻繁に遊んだりしていました。まぁ少年も一般能力選抜の中ではトップでしたしね。……正式名称は長いから次からは略称である一般科と特殊科って言う呼び名を使いますよ? その少年は六人の前ではいい顔をしておきながら一般科の友人の前では特殊科を、特にその中の六人を馬鹿にするような言い方をしていました。絶対に広めないと言う言葉を信じて六人が教えた、彼らの能力の粗を当時、特殊科に攻撃的な行為を仕掛けていた過激派の一般科の生徒に広めた……まぁ信じたほうも信じたほうでしょうか?」

 一気にまくし立てるように言う刹と、耳を塞いで謝罪の言葉を繰り返す湊。それを見て刹は嘲笑を浮べて、湊の腹を蹴る。力なく倒れこんで咳き込む湊の足を踏みつけた。麗らかな春の日差しが幻に見えるような、そんな光景。ガタガタと身体を震わせて、必死に許しを請う湊を始めは嘲笑を浮べながら見ていた刹の表情はどんどんと冷たくなって……。

 「……そしてあの日、事件が起こった。特殊科第一寮の生徒の惨殺……。覚えてるでしょう? 蓮が大暴走したあの事件……って、固有名詞出しちゃったよ。まぁいいか。あんた、桜梨さんが死んで悲しむ蓮を慰めておきながら一般科ではなんて言っていたんですっけ? “人の心を持たない化け物が何泣いてんの? 化け物は惨殺されて当然なのに”でしたっけ? まぁ桜梨さんが死んだのは蓮の暴走のせいだからその責任は問いませんが。事件を起こしたのは貴方が能力の粗を広めた過激派の連中でしたね。だから生き残った過激派の連中に仕返ししようと言ったとき、貴方は勝てないからやめろと言ったのでしょうか? お姉様は事実を知らないから貴方のことを仕返しを諦めた愚者、としか言いませんけど……。ちなみにこの情報は蓮の精霊さんが拾ってきた事実です。と言うか事実じゃなきゃそんな反応しないでしょ?」

 クスリと刹が笑う。スッと湊から離れてくるりと回れば「信じてたのに。バラさないって、克服を手伝ってくれるって言ったのを信じてたから沢山、沢山能力の粗とか教えたのに。しかも貴方も特殊科に来るべき能力を持っていたんですもんね。嫌になっちゃいます」なんて言い放つ。やっと身体を起こした湊は俯いて、涙を零す。フェンスに掴まってゆっくりと立ち上がりながら湊は言葉を紡ぎ始めた。
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プロットが失踪してズタボロorz
そろそろ終焉です

77霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2012/01/04(水) 19:19:10 HOST:i114-183-46-33.s04.a001.ap.plala.or.jp
 「確かに僕は酷いことをしました。あの事件だって僕が原因ですしね。でも、関係ない生徒まで巻き込む必要なんてないじゃないですか。狙うなら僕だけにすればいいのに……ボクにつくという理由だけで他人に攻撃するな」

 刹は答えなかった。無言で刀を抜いて、時計を確認した。残り二十五分、ずいぶん時間を無駄にしてしまったな、とため息をつきながら刹は刀を構える。しばらくの沈黙。風の微かな音だけが響いていた。沈黙を破ったのはやはり刹であった。短い吐息と共に、湊の懐へと一気に踏み込む。性格に湊を狙って振るわれた刀が、湊を切り裂くと同時にその姿は光に溶けて聞けていく。忌まわしそうに「視覚掌握か。あくまで償うつもりはないようだ」と呟いた。
 静かに今までいた位置とは真逆の方向に現れた湊は笑う。涙を零しながら右目に手を翳して「僕は生きることで償うつもりです。死ぬなんて逃げでしかないでしょう? まぁ殺されるのは別にいいですけど」なんて言って。青い瞳は徐々に黒く染まって……。それを見た刹は思わず息を飲む。面倒な奴、小さな声で呟いて刀を振るう。それと同時に無数の刃が現れて湊へと飛ぶ。
 湊は交わさなかった。刃が当たったところからはドロドロと紅が流れ出ていく。それでも焦るようなそぶりは見せずに、湊は涙を拭う。

 「知ってます? 僕の能力の中には事実を正反対にひっくり返すことが出来るものがあるんです。あるをないに、闇を光に、悪意を善意にって具合にね。まぁ結構、血を外に出さないといけないので滅多に使いません。面倒ですしねそんな条件。血出しすぎて死ぬのは間抜けですし」

 湊は笑う。悲しげに、笑って静かに刹を指差した。低く舌打ちをした後、ならば必要な量の血が出る前に殺せばいいなんて結論に行き着いて、刹は一気に湊の懐に踏み込んで刀を振るう。それを見て小さく頷いた後、湊はふらつきながら声を上げる。叫ぶように「小鳥遊刹残された時間があるという事実を、ないという事実に」と。瞬間に刹の姿が霧散して消える。深くため息をついて湊は座り込んだ。一瞬で自らの傷を塞ぐ。

 「はぁ……皆はどうなったのかな」

 よたよたと校内に進む湊が見たのは廊下に転がる死屍累々。原形をとどめているもの、留めていないものがごろごろと転がっている。湊は強烈な吐き気に襲われて口元を押さえて、半歩後ろに下がった。原型を留めているものたちの制服を眺めると光のものだけでなく、闇のものも多くある。遠くの方に呆然と立ちすくむ人影を見つけて湊は走り出す。制服の色は白……光のものだ。放っておいたら危ない、そう考えて湊は走るスピードを上げる。
 近づくにつれてはっきりと姿が見えてくる。腰の辺りまで伸ばした銀の髪、近くに放置された車椅子……。立ちすくんでいたのは楓だった。湊がその肩を叩くと大げさに肩を揺らして、ペタンと座り込んだ。その足元に転がるのは黒い長い髪をした少女とオレンジがかった茶髪の少年……楓が言うのよりも早く湊は二人の名前を呟く。かすれた声で「羽音、さんと風雅、さん?」と。小さく頷く楓の包帯はところどころ赤く変色していて……。制服のあちこちに赤、赤、赤……。

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終わりも近いので一気に更新
次も多分すぐに出せると思います


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