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Il record dell’incubo〜悪夢の記憶〜

75霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2012/01/04(水) 00:52:12 HOST:i114-183-46-33.s04.a001.ap.plala.or.jp
 蓮の言葉と同時に銀の光が湊の周りを漂った。ゆらゆらと不自然に揺らぐ光はゆっくりと人間のシルエットを作り上げていく。そして一際まぶしい光を放ったかと思えば、光は完全に刹へと姿を変える。刀の柄に手をかけて片膝をついた状態で、瞼はしっかりと閉じられて……。湊が驚いたように目を見開くのをよそに刹は動かない。変わりに、とでも言うように蓮が笑う。その笑みに、何の反応も示さずに片膝をついたまま瞼を閉ざす刹の姿から湊は目を逸らせずにいた。美しいと思ったわけじゃない。……狂気だ。湊はそう呟いて、身震いする。言いようのない不安と、恐怖。
 どうするのが正解か、どんなことをしたらいけないのか、上手くこの場を切り抜けるには? そんな考えが雪崩のように押し寄せては消えていく。唾を飲み込み、蓮と刹がどんな行動に出るのかを窺う。ゆっくりと刹が目を開いて、辺りを見回すのを見て思わず身構えてしまって、湊は深くため息をつく。大丈夫だと言い聞かせてまっすぐ刹を見つめる。目を離すとすぐ切りかかられてしまうような、そんな気がして……。

 「ふぅん……契約は成立ってことでいいのかな? 蓮」

 しばらく自分の手を見つめていた刹がフッと蓮に顔を向けて問う。わざとらしく考えるようなしぐさを見せた後に、蓮は小さく頷く。唖然とする湊に向かって「死霊召還。普通の召還術師は絶対に手を出さない系統の召還さ。それこそ頭がイカレた愉快な奴がやることだ。まぁ、召還物が生きている間に契約を交わす必要があるんだけどな」なんて言って、再びフェンスに腰掛ける。僅かに顔を顰めた湊に刹がいつの間にか抜き放った刀の切っ先を向ける。
 その状態でしばらく硬直。何かを請うように蓮を見つめていると答えるように「好きにしろ。こっちに被害が出ないようにしろよ」と蓮がいう。その言葉を聞いた瞬間、刹の唇は弧を描き一気に刀を引いて構える。その瞳は鋭く湊を捉えて動かない。慌てて刹の動きを封じようと植物の蔓を伸ばす湊。それに絡めとられて、身動きを取れなくなっても刹は焦るどころか楽しそうに笑みを浮かべるだけだった。

 「ねぇ、湊? 覚えてる? あの日以前にお前がしたことを」

 甘い声。それとは酷くかけ離れた刹の冷たい表情に湊は息を飲んだ。刹を捉えるその瞳が不自然に揺らぐ。それを見て刹は満足そうに笑って「覚えてるみたいだね。じゃあ今すぐ償え」と吐き捨てる。目だけが決して笑っていない笑顔と、驚くほど冷たく、低い声。その姿が、声が、全てが不気味で……。
 刹那、炎が舞った。炎の赤は鮮やかに揺れて蔓を燃やしていく。咄嗟に蔓から離れた湊は、フェンスに寄りかかるようにして、バランスをとる。炎の中心に立つ刹を見て声を上げる。必死に「あの頃の僕がしたことは、確かに軽率でした。……で、でもあの頃の僕は無知で……」と叫ぶかのように……。そんな湊を炎の中心から刹は冷たく、ただただ冷たく眺める。

 「無知は免罪符にはならない。僕たちは、お姉様はお前のことを信用していた。……でもお前は裏切った。なんでもないような顔で輪の中に加わるお前を何度引き裂いて、ばらばらにしてやりたいと思ったか……」

 冷たい声。ずるずると力なく座り込む湊に刹はゆっくりと近づく。一歩一歩を確かめるように、しっかりと湊に向かって歩く。カタカタと小刻みに震える湊を見下ろして刹は首をかしげた。意味が分からないというように。静かに振り上げた自らの刀をぼんやりと眺めた後、ため息をつき、刀を鞘へと収めて笑う。そして先ほどの冷たい声が信じられないくらいに明るい、無邪気な声で「昔話をしましょうか?」と言った。
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書けば書くほど読み難さが進化していく。
読んでいる人がいるのか不安になってきたけど、僕は書き続けます((


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