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ストレンジ

7ドウミ・モンド:2011/01/26(水) 16:44:26 HOST:nttkyo907138.tkyo.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
「まったく、あの人には困ったもんだよ」
ぶつぶつ言いながら、女将さんは厨房の隅に置いてある薪を数本かき集め、かまどに入れた。
「ただでさえうちの店には、魔道警察の目がきいてるってのにさ」
女将さんは次に、かまどのそばに置いてあるわらの山から、一掴みわらを取るとこれかまどに放り込んだ。そして、エプロンのポケットから『炎虫』とラベルの張ってある小さな小瓶を取り出すと、さかさまにして、赤くきらめく粒を一粒、手のひらに落とす。よくよくみると、それは、テントウムシのような虫だった。小さな足を動かしちょこちょこ女将さんの手の上を這い回る。女将さんはそれを見ていくらか気分が落ち着いてきた。ほっと一息つくと、虫をつまみ上げ、かまどに放り込む。
『虫よ 虫よ 小さな赤い星を見せておくれ 小さな身を焦がして踊っておくれ 小さな奇跡を起こしておくれ』
女将さんが、かまどのぽっかり開いた口に向かってゆっくりとそう呟き、三回丁寧にお辞儀をした。すると、小さな赤い光がポッと姿を現し、やがて、その小さな小さな火の粉はわら全体にいきわたり、大きな炎へと姿を変える。
「そういえば、あの子・・・」
女将さんは、厨房に行く前にちらりと見たのだ。あの少年の青い制服の襟のところに、ほんのぽっちりの点だったが、はっきりと確かに血がついていたのだ。
「恐ろしいもんだ。世の中は、どんどん魔法使い中心になっていく一方だね」
女将さんは何かしら考え込んだ後、『炎虫』の瓶から今度は五匹ほど虫を手のひらにのせた。
「あたしは魔法使いじゃないけどさ、あんた達、あたしの言うことくらい分かるだろう?頼むよ、うちの宿が危ういんだ。こうなったら魔道警察でも何でもいいからさ、誰か人を呼んでおくれよ。あの子、バーキス様の名前を、うちの店に来たと気に入ったけどさ、うちの主人が取り合わなくて。そしたら、あたしらが殺されかねない状況になっちまった。ね、頼むよ、命あっての人生だからさ。こうなったらもう、魔道警察がこようとどうでもいいわけなのよ」
虫たちは女将さんの話を聞くと、羽を広げて手のひらから飛び立った。


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