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エクスクラメーションマーク

1初婁:2010/12/25(土) 20:43:19 HOST:baid201b4d0.bai.ne.jp
プロローグ ≪とある少女の独白≫

ああ、あれは――。
あれは、いつだっただろう。

彼女の母親は忙しい―世間一般に言う「リポーター」で、それも結構局の顔の様な存在で―それ故に、リポートしなければいけない事件も多く、「彼女」は幼い頃からいつも一人だった。

―ああ、こんな事を思い始めたのはいつだっただろう―

いつか、「彼女」は彼女の母親の数少ない休みの日に、聞いてみた事がある。
「どれくらいおおきい事件だったら、ママはリポートしてくれるの?」

その時、母親が奇妙な眼で「彼女」の事を見たことを、彼女は今でもくっきりと覚えている。

―ああ、私のこの性癖の始まりは―そこからだったのかもしれない。

薄れ行く意識の中で、彼女は走馬灯とも思える過去を、妙に客観的に見ていた。

まだ幼かった彼女は、次第に疑問を抱き始める。
とても大きな事件は報道される。
小さな事件は気にかけもされない。
当時の少女は幼いので、流石にまだ難しい言葉で表現は出来なかったが―
幼い少女のそんな疑問は、次第に彼女の歪んだ性癖を作り上げる要因の一つとなる。

もし大きな事件を起こせば、
もしその事件がニュースで報道されたら、
母親は自分の事だけ見てくれるのではないか―。

全く持って非論理的な考え。
幼い少女のバカな思いつき。そう鼻で笑うかもしれない。
しかし、そんな思いつきは少女をただ行動に走らせる。

最初は、小さな動物を。
報道されない。
次は、犬猫を。
少しだけ報道された。
人を、一人。
前より報道された。
二人、三人、四人、五人、六人―。

この正体不明の殺人鬼は、次第に日本全土に名を馳せていった。
老若男女関係なく、ある者は十代後半、ある者は中年と呼んで差し支えない年齢―。
そして、その被害者に全て共通しているのは、「外傷が全く無い」という、その一点だった。
まるで眠るように綺麗な死体。今にも起き出すのではないか、という表現がピッタリと当て嵌まった。

それは彼女の「人間」の部分から来る罪悪感からだったのか―
彼女は、傷一つ死体につけることなく人を消す方法を―長い年月をかけて編み出したのだ。
本で、ネットで、調べ上げた。

そして高校生へ成長した彼女は、「百一人目の犠牲者」となるはずだった男に、見下ろされながら―
静かに、その意識を閉ざした。

2初婁:2010/12/25(土) 21:24:41 HOST:baid201b4d0.bai.ne.jp
第一章

「ねえ!ねえ!翔聞いて聞いて!」
「なんだよ雪那……」
 都内の山沿いにある学園、私立碧稜学園(しりつへきりょうがくえん)の高等部2−Bに、全く対照的な二人が談笑?をしていた。
 底抜けな明るさで黒髪の少年に話しかける少女―名執雪那(なとりせつな)は、黒髪の少年―鮎川翔(あゆかわしょう)がウンザリとしていることも無視して、そのまま話を続ける。

「あのね!昨日もまたあの殺人鬼が出たんだって!」
「ホントお前はその手の話が好きだな……」

 二人の親は従姉妹同士であり、家も近いため幼い頃から一緒に遊ぶ事が多く、言ってしまえばそこら辺の高校生の男女より仲が良かった。
 その事でからかわれることもしばしばあったが、二人は特に気にしては居ない。

「でもね……」
「?」

 雪那は、短めの高く結い上げたツインテールを揺らめかせいつもの様に明るい口調で話していたが、唐突に声のトーンを低め、翔に耳を貸すようジェスチャーをする。
 そのジェスチャーに従い雪那の方へ耳を寄せると、雪那は屈んで翔の耳元に自らの口を近付け―
 一つの「噂」を口にした。

「その殺人鬼―昨日、捕まったらしいの!」

         *

「殺人鬼」―
その正体は、未だかつて明かされたことはない。
ただ言われているのは、それが女性の様な体躯で、セミロング辺りの髪型であり―
―いつも、制服らしきものを着ているという事。
しかし、その制服らしきものは近隣では見た事もないデザインであると言われており(暗闇での犯行で細部まで特定できていない)、今だ犯人は特定できていない。
         *

「でね……」

 雪那は声を潜め、話を続ける。
 いつもとは全く違う雰囲気で、
 ただ一つの「噂」を。

「その殺人鬼の正体―C組の、有栖川さんらしいよ?」

          *

有栖川沙夜(ありすがわさや)。
その外見は上の上、と言って良い造形である。
濡れ羽色の今時珍しい綺麗な黒髪を前は長く後ろに行くに連れて短くなる髪型にしており、それと正反対の新雪の様な真っ白い肌のコントラストはの目立つ特徴となっている。
顔立ちは整っており、どこか陰のある美少女である。見た物を不思議な魅力に引き込むような力があり、校内でもファン倶楽部がひっそりと出来ているとか。
浮世離れした印象と人を寄せ付けない雰囲気を持っている所為か、友人はかなり少ない。その為謎も多く、一目置かれている存在である。
しかし、その雰囲気や謎の多い部分に惹かれるファンが多数おり、ちょっとしたアイドルになりつつある。

≪とある新聞部の情報から抜粋≫

          *

「―はァ?」

 そこで翔は素っ頓狂な声を上げた。

3梅干☆:2010/12/25(土) 21:45:08 HOST:p5012-ipad01matuyama.ehime.ocn.ne.jp

面白っ!!がっんばってください!!

4初婁:2010/12/26(日) 14:13:11 HOST:baid201b4d0.bai.ne.jp
梅干☆様>

こんな小説に眼を向けていただき有難うございます^^
面白いですか?有難うございます。
まだまだ未熟ですが、私なりに頑張っていきますので、
長い目で見て下さると嬉しいです。

5初婁:2010/12/26(日) 14:50:09 HOST:baid201b4d0.bai.ne.jp
「沙夜さんが殺人鬼って……何の冗談だよ」

 実をいえば翔も隠れた沙夜ファンであり、その不思議な魅力に取り憑かれた一人だった。
 その言葉に雪那は、唇を尖らせて文句を突きつける。

「翔も沙夜さんファンな訳?……ふーんへーえほーお」
「なんだよその訝しげな目は」

 雪那はじろじろと翔を疑うような目で数秒見つめていたが―急に吹っ切れたような顔になると、いつもの様に明るい笑顔を顔に浮かべた。

「うんっ、そうだよね!男子ってそんなもんだよね!」
「おい、何か若干失礼な事言ってないか、お前」
「べっつにぃー?」
「……はぁ」

           *

≪都内某所 公園≫

「ねーねーねーねー」
「どうした遂に頭がおかしくなったか焔」
「おかしくなったのは兄さんの方じゃない?」

 平和な昼下がりの公園に、その余りに不釣合いな少女と男はベンチに座っていた。
 一人は、いかつい男。顔にはサンマ傷があり、服も全体的に黒で統一され、見るものにはその道の人物に見える事だろう。
 もう一人は、可愛らしい少女だった。13〜4歳だろうか。長い栗色の髪をポニーテールにした、八重歯を覗かせる元気そうな少女だった。あどけなさの残る顔立ちに無邪気な笑みを浮かべている。
 
 可愛らしい少女―薬師寺焔(やくしじえん)は、自分の実の兄である男―薬師寺遠野(やくしじとおの)に、足をばたつかせて話しかける。
 
「ねーねーねーねー、面白いね!」
「何がだ」
「だって、兄さんが今色々お楽しみ検査中の殺人鬼さん、結構有名なんだもん!」
「……むしろ危険だろ」
「えーッ、どこがどこが……」

 そこで焔は言葉を止め、公園の入り口に目を向けた。その顔は今までの子供らしい顔とは一変、周囲を警戒している真剣な表情で―

「へえ……丈夫だね、あの子」

 真剣な表情からまた一変―まるで獲物を見つけた鷹の様な笑みを、ニンマリと浮かべたのだった。
 その視線の先には、つい先日まで世を騒がせていた「殺人鬼」の姿――

            *

 走る、
「はあっ、はあっ……ぁあ」
 走る走る、
「っ、ごめんなさいッ」
 ぶつかりながらも走る、

「―沙夜、さん……?」

 少女とぶつかった黒髪の少年は、唖然とした視線を今しがた通り過ぎていった少女の後姿に向け―

             *

嫌 いやだ いやだよ

 少女は、都会の人混みを掻き分けるように、しかし速度を落さず走り続ける。
 
なんで アイツ ら 私 私 に 勝た った?

 疑問符を、疑問符を。
 ただ、少女は幼い頃に感じていた疑問符とは全く違う疑問を浮べ―

誰か タスケテ たすけて

おかあ さん お母さん 助けて―

 この場に、いやこの世にさえ存在しない者に助けを求め―
 殺人鬼は、都会の昼下がりを、ただただ走る。

6初婁:2010/12/26(日) 15:31:14 HOST:baid201b4d0.bai.ne.jp
           *

「あはは、やっぱり面白い!」
「……お前絶対狂ってるだろ」
「えーっ、女の子の身体を実験対象にするような人に言われたくないなー!」
「……それはお前もだろ」

 薬師寺遠野、焔の兄妹は、有名な科学者の家に生を受けた。
 両親共々科学者であり、並の科学者よりも様々な実績を積んでおり、科学者を志す者にとっては憧れの存在となっていた。
 裕福な家庭、望めば何でも買ってくれた。
 ただ―「買ってくれた」のだ。

 遠野も焔も、幼い頃から両親の愛と言う物とは縁遠い生活を送っていた。
 輝かしい名声などただの仮面。
 父は、母親に暴力を振るっていたのだ。
 そして、そんな中にいる兄妹に対して父親の反応は―ただ、彼等を満足させる為に、望む物をなるべく全て買い与えたのだ。
 そこに「愛」はない。
 彼、彼女等の退屈しのぎの為の玩具を、ただ買い与える。
 しかし、兄妹は父親は恨んでいたが―母親は恨んでいなかった。
 母親だけは。母親だけは、彼女等への愛を忘れずに与えていたからだった。

 『お父さんも……昔は、あんな人じゃなかったのよ』

 どこか寂しげな様子の母親は、それでも笑顔を絶やさず、二人に対して父親との思い出話を語り続けた。
 いつしか、焔は母親の体の傷に気付き、触れた事がある。
 今思えば、それはただ「傷の一部」だっただけなのかもしれないが―
 触れた瞬間、母親はなんと慈愛に満ちた笑みを浮かべて――

 『私は今でも、お父さんの事は好きよ』

 ――そういったのを、二人は今でもはっきり覚えている。
 そして二人は、その日から疑問を持ち始めた。
 
 ―なんでママはあんなパパの事が今でも好きなの?
 ―なんで、なんで?

 そして、ある日―彼女等はその解答に漕ぎ着ける。
 合っているようで、しかしズレた答えを。
 
「お母さんは、お父さんに縛り付けられているから、逃げられないんだ」

 そして幼い兄妹は、母親を自由にする事を心に誓った。
 そして彼女等は歪んだ行動を起こす。
 まず手始めに、父親の書斎や研究している部屋にこっそり忍び込み、そのデータや研究を一心不乱に見つめた。―全ては母親の為に。
 その理由は―彼女等の手によって「異形」を作り上げる為だった。

7初婁:2010/12/27(月) 13:00:04 HOST:baid201b4d0.bai.ne.jp
 父親の研究は表ざたにはまだ知られていないが、それは所謂「人体実験」という非人道的な代物だった。
 父親と数名の研究者達が人や様々な物のデータを集め、融合し、研究する。
 兄妹は―母親を救う為だけに、自分達の手で「異形」を作り上げ、そしてその異形で父親をこらしめようとしていたのだ。
 丁度その頃、母親と父親は別居状態にあったが―母親も科学者である為、そのための資料は有り余るほどあった。
 父親は子供が自分の研究を盗んでいるとはいざ知らず、ただ研究を進めている。
 
 そして今現在、母親を助けるべく―
 自分達が目の当たりにした「異形」を用いて、その実験を繰り返していた。
 

           *

「沙夜さんだ、間違いない!」
「え、ちょ、しょ……」

 雪那が言葉を完全に発する前に、翔は自分の家とは間逆の方向へと走り出していった。
 ―間違いない。あの髪は―あの肌は―沙夜さんの物だ。
 彼女がなぜ逃げているのかと言う事を考えるのも忘れて、ただひたすらに翔は走り続ける。

 しかし―
 高層ビルの角に来た所で、翔は沙夜に似た人物の後姿を見失った。
 膝に手を置き、息を必死に整えながら―翔は考える。
 ―沙夜さんは、本当に―殺人鬼なのだろうか。
 先日まで自分が憧れていた、あの美人な同学年の少女が。

 ―いや、そんな筈は無い。
 翔はぶるぶると首を横に振り、その考えを振り払った。
 そして―翔は思いつく。
 それは、ある意味危険な思いつきだった。 

 ―逃げているならば、俺が捕まえて沙夜さんが殺人鬼じゃないことを―証明してやる。
 
 一人の少年も巻き込んで― 
 エクスクラメーションマークの物語は、密かに動き出す。


           *

昨夜 公園

 都内の昨夜―
 そこは本来殺人鬼のダンスの舞台―となる筈だった場所だ。
 
 殺人鬼は、いつも通りに公園で「百一人目の犠牲者」を出すべく、静かに待ち構えていた。
 いつも通り、全てがいつも通りの筈だった。
 そして―その男は姿を現す。
 身長は大柄で、服は黒で統一されており、顔にはサンマ傷―一般人の少女が立ち向かっても、歯も立たないような大柄な男。
 しかし―殺人鬼の場合は違った。

「―さようなら」

 小さいが、よく通る澄んだ声。
 しかし、彼女は気付かなかった。
 その男は一般人ではないことを。
 科学をやっているだけではなく、少しの武術も兼ね備えている事も―

 「……怖いな、殺人鬼ってやつは」

 ただ、一言。
 ―……なんだろう、このひ……
 そこで彼女の意識は朦朧としてきた。
 そして彼女は気付く。
 ―ああ、私―

 この男に、負けたんだ。

「安心しろ、殺しはしてない」

 彼女は視界の端に、銀色の輝きを見つける。
 殺人鬼に襲われることを、男はしっかりとわかりきっていたのだ。つまりは囮―自分の身を囮に使い、自分を始末しに来た。
 しかし、どうやら峰打ちだったらしく、死んではいない。
 それもそのはず、男の目的は「始末」ではなく「利用」なのだから。
 
 彼女は走馬灯とも感じ取れる過去の映像を思い出しながら―
 静かにその意識を閉じた。

8名無しさん:2010/12/27(月) 19:09:39 HOST:p4182-ipbf3902marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp
あのう・・・「エクストラクラメーションマーク」じゃないですか?
ビックリマークのことをいってるんなら。
違ったらすみません;


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