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エクスクラメーションマーク

7初婁:2010/12/27(月) 13:00:04 HOST:baid201b4d0.bai.ne.jp
 父親の研究は表ざたにはまだ知られていないが、それは所謂「人体実験」という非人道的な代物だった。
 父親と数名の研究者達が人や様々な物のデータを集め、融合し、研究する。
 兄妹は―母親を救う為だけに、自分達の手で「異形」を作り上げ、そしてその異形で父親をこらしめようとしていたのだ。
 丁度その頃、母親と父親は別居状態にあったが―母親も科学者である為、そのための資料は有り余るほどあった。
 父親は子供が自分の研究を盗んでいるとはいざ知らず、ただ研究を進めている。
 
 そして今現在、母親を助けるべく―
 自分達が目の当たりにした「異形」を用いて、その実験を繰り返していた。
 

           *

「沙夜さんだ、間違いない!」
「え、ちょ、しょ……」

 雪那が言葉を完全に発する前に、翔は自分の家とは間逆の方向へと走り出していった。
 ―間違いない。あの髪は―あの肌は―沙夜さんの物だ。
 彼女がなぜ逃げているのかと言う事を考えるのも忘れて、ただひたすらに翔は走り続ける。

 しかし―
 高層ビルの角に来た所で、翔は沙夜に似た人物の後姿を見失った。
 膝に手を置き、息を必死に整えながら―翔は考える。
 ―沙夜さんは、本当に―殺人鬼なのだろうか。
 先日まで自分が憧れていた、あの美人な同学年の少女が。

 ―いや、そんな筈は無い。
 翔はぶるぶると首を横に振り、その考えを振り払った。
 そして―翔は思いつく。
 それは、ある意味危険な思いつきだった。 

 ―逃げているならば、俺が捕まえて沙夜さんが殺人鬼じゃないことを―証明してやる。
 
 一人の少年も巻き込んで― 
 エクスクラメーションマークの物語は、密かに動き出す。


           *

昨夜 公園

 都内の昨夜―
 そこは本来殺人鬼のダンスの舞台―となる筈だった場所だ。
 
 殺人鬼は、いつも通りに公園で「百一人目の犠牲者」を出すべく、静かに待ち構えていた。
 いつも通り、全てがいつも通りの筈だった。
 そして―その男は姿を現す。
 身長は大柄で、服は黒で統一されており、顔にはサンマ傷―一般人の少女が立ち向かっても、歯も立たないような大柄な男。
 しかし―殺人鬼の場合は違った。

「―さようなら」

 小さいが、よく通る澄んだ声。
 しかし、彼女は気付かなかった。
 その男は一般人ではないことを。
 科学をやっているだけではなく、少しの武術も兼ね備えている事も―

 「……怖いな、殺人鬼ってやつは」

 ただ、一言。
 ―……なんだろう、このひ……
 そこで彼女の意識は朦朧としてきた。
 そして彼女は気付く。
 ―ああ、私―

 この男に、負けたんだ。

「安心しろ、殺しはしてない」

 彼女は視界の端に、銀色の輝きを見つける。
 殺人鬼に襲われることを、男はしっかりとわかりきっていたのだ。つまりは囮―自分の身を囮に使い、自分を始末しに来た。
 しかし、どうやら峰打ちだったらしく、死んではいない。
 それもそのはず、男の目的は「始末」ではなく「利用」なのだから。
 
 彼女は走馬灯とも感じ取れる過去の映像を思い出しながら―
 静かにその意識を閉じた。


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