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私立探偵事務所 『向日葵』

12 ◆uXwG1DBdXY:2011/05/25(水) 09:11:29 HOST:KD027082037068.ppp-bb.dion.ne.jp

< 01/黒い探偵と茶色の女の子 >



薄暗い部屋の中、緑色の大きなソファーに横たわる黒い髪の男
もぞりと動いたかと思うと再び寝息が静かに響いた

パチン

何かが弾かれるような軽い音がした後、薄暗さはどこかに消え部屋が明るく照らし出された
部屋の照明がついたのだ。光が灯されたのと同時に扉から焦げ茶色の髪をした少女が部屋に入ってきた

電気をつけても全く起きる気配のない男を見ると少しため息を吐いて、手にぶら下げていた荷物をどすっと音を立ててテーブルに置いた
かなり重いものらしく、白い手には赤い痕がついていた


「先生、ご飯作りますから起きて下さい!」


少女が肩を揺らすと少し声を漏らした後、ゆっくりと重そうに体を起こした
数秒程度ボーっとした後少女の顔を見て脱力した声で言う

「お帰り」
「只今帰りました、さあ、早く退いてください」
「ん」


ソファーから男が降りるとてきぱきと少女はビニール袋から材料などを取り出すと意外と広いキッチンへ歩いていった
一方男は寝癖についた髪をぐしゃっと掻き回すと適当にそこらに有った毛布を被ると再びソファーに寝転がろうとしたが、その寸前でぴたりと動きが止まる。

それに気がついた少女がキッチンから顔を出す


「お客かな」


黒髪の男はふにゃ、と力のない笑顔を浮かべると布団をソファーに置き、少し楽しそうに玄関の前まで歩いていく
扉をがちゃりと開ける。其処にたっていたのは不安そうに此方を見つめる小さな女の子だった

綺麗な赤色の二つ結びの髪に丸い緑色の目
細く小さな腕の中にあるのは小さな子猫、生まれたばかりのようで可愛らしい声で鳴いていた



「何か御用かな?」
「え、あと、えと、ね」
「怖がらなくていいよ」

男が頭にぽんと手を置いて微笑むと女の子は安心したように笑った


話を聞くと腕の中に居る子猫の里親を探しているとのこと
母親に飼いたいとお願いしたらしいが駄目だったらしく、せめて新しい主人を探してあげたいとこんなくらい裏路地に有る胡散臭い事務所まで来てくれたらしい

そう、この黒髪の男は私立探偵を営んでいる。まあまともな依頼がくる事はかなり少ない。
基本的には何でも屋だからだ


女の子の腕から猫を抱き上げると頭を優しく撫で始める

「どうせ里親に出すなら綺麗なほうがいいから洗おうか、ニーナ、お願いできる?」

男が先ほどの焦げ茶色の髪の少女に微笑みかけると、少女、ニーナは少し呆れたような表情を浮かべたが猫を受け取り軽くうなづいた


「分かってます、助手ですから」


「あの、私も手伝う!」


ニーナが風呂場に向かおうとすると女の子が服の裾を掴み、こういってきた。ニーナは勿論と頷いて手を引く。

その間、黒髪の男はどこかに電話をしていた。

13 ◆uXwG1DBdXY:2011/05/25(水) 09:11:50 HOST:KD027082037068.ppp-bb.dion.ne.jp
×

その頃、風呂場では子猫が綺麗に現れふわふわの毛並みを暖かい風になびかせていた


「きもちよさそー」

猫を優しくタオルで拭いてあげる女の子と大人しく拭かれている猫をほほえましく見守るニーナ
かち、とドライヤーの電源を切ると猫の毛にふれ乾いているかを確かめる。大丈夫そうと呟くと猫を抱きかかえ、脱衣所を出た


「先生、終わりました」
「早かったね。お、ふわふわー」


電話はもう終わっていたようで猫に触れると毛の柔らかさに笑みを浮かべた

「あ、それと里親見つかったよ」

「「ええっ!?」」


「い、何時の間に!」

ニーナと女の子が驚くのも無理はない。普通なら水を嫌がる猫を洗うのはかなり難しいことだが幸い子猫は大人しく洗われてくれて、拭くのも簡単だったのでざっと三十分と言ったところだろう
その三十分の間に里親を見つけてしまった、と


「ネットの捨て猫を飼いたいっていう人のブログを手当たり次第電話して、今さっき見つかったとこ。優しいお姉さんだよ。」

そういって男が見せたのは可愛らしい桃色で纏められたテンプレートのブログ


「この子、貰ってくれるの?」
「そう。まあこの子が里親さんとご対面するのは来週になるんだけど、それまで俺が預かってるよ」
「ほんとに、ほんとに?」
「本当だよ、此処からちょっとおうちが離れてるだけだから」

不安げに問いかけてくる女の子の頭をまた優しく撫でると安心させるように抱いていた子猫を手渡す
女の子は嬉しそうに微笑み、よかったねーと猫を撫でた。子猫も嬉しそうににゃあと声を上げる。

「ねえ、これから此処に来てもいい?この子に会いに来たいの」
「俺らは構わないけど、お母さんにはちゃんといいなよ」
「うん!」


それから一週間後、子猫は可愛らしい焦げ茶色の毛並みから「チョコ」と名づけられ貰われていった
ニーナも女の子も少し涙ぐんでいた



「よかった、飼い主さん優しそうだった」
「何件も探し回った甲斐が有ったよ」

「そういえば探偵さん、名前なんていうの?」



「んー、特にないって言うか。まあ、皆からは黒って呼ばれてるけど」



黒吉。
それが黒い探偵の名前



とある町のとある裏路地、其処にある何でも屋みたいな探偵事務所
『向日葵』
×

(一週間名前を聞かずに居られたとかどういう←第一話がこんなんとか…わけわからん仕上がりだ・ω・`長かったのできりました)

14 ◆uXwG1DBdXY:2011/05/26(木) 21:46:58 HOST:KD027082037068.ppp-bb.dion.ne.jp

< 02/絵描き少年と黒の探偵 >


「猫ちゃん、良かったですね。先生」

先週のことをふと思い出しにこりと笑いながら先生、黒髪の男に問いかける

「ん」

短い素っ気無い返事だが嬉しそうな声色と笑みは隠せていない。まあ本人は隠す気もなく、何故か嬉しくなってくすくすと笑みを零した

カラン


唐突にドアベルが乾いた音を鳴らす
扉の向こうに立っていたのは一人の少年


「依頼ですか?」


私が問いかけると少年は数秒たってから頷いた。
間を開ける意味はあったのか、と疑問符が浮かんだがとりあえず先生の座るソファーに座らせキッチンへ向かった
暖かな紅茶の注がれたティーカップをお盆に載せ、戻ってくるとどうやら既に話は終わっていたようだ。相変わらず仕事の早い人だ。

テーブルに紅茶を置くと先生はご機嫌にカップを手に取った
香りを楽しみながら口に運ぶ。事務所においてある紅茶やコーヒーは全て先生が気に入ったものだけを置いていて、別に豆や茶葉に詳しいと言うわけではないらしい。
今日は外が寒い、厚めに入れておいたのだが気に入ってもらえた様子

少年も紅茶を手に取ると口に紅茶を流した


「先生、依頼って…」
「絵の具探しだって」
「…え?」

また探偵からかけ離れた…と呆れつつも、猫の里親探しだって探偵っぽいとはいえない。
何時もの事だと半ば、というより完全に諦めた


「彼は絵描きさんらしくてね、お気に入りの絵の具が切れたらしいんだけど何処にも売ってないんだって」
「へえ…私と同じくらいなのに」
「ニーナだって小説家じゃないか」
「売れてませんけどね!!」

私の声に驚くこともなく、紅茶を飲み干した少年は始めて私の前で声を出した


「…紅茶、おいしい」

ただ一言、そう呟いた
行き成りのことで驚いたが気に入ってもらえたようで、自然と笑顔がこぼれた。お礼を言われて嬉しくない人なんて数少ないもの。


「いえ、お代わり淹れますか?」
「…うん」


紅茶の入ったポットを取りに行こうと再びキッチンへ向かう
そういえば名前を聞いていなかったな。戻ったら聞いてみよう、どんな名前かな、と考えながら戻ると――――


「にゃあ」

部屋は猫だらけ


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