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無題という名の短編集

25旧作:2011/06/11(土) 20:55:16 HOST:245.129.70.222.broad.xw.sh.dynamic.163data.com.cn
>>24続き



 兄ちゃんの部屋に居る間僕たちは大抵お互い最近学校で起きた事や嬉しかった出来事とか
 とにかく今までちゃんとまともに話せなかった分、たくさんお喋りするんだ。
 取り合えずお互いひとしきりお話しあった後、兄ちゃんは僕に対して申し訳なさそうな顔を向けながらも其の日の分の勉強を始める。

 其の間僕はやる事が無く、退屈だ。
 そんな時兄ちゃんは何時もは「耳が悪くなるから駄目」と言って絶対に貸してくれないMP3プレイヤーを「ちょっとだけな」と言って特別に貸してくれる。

 いつか大きくなったら欲しいな、と思ってるMP3プレイヤーを貸して貰えるのはとても嬉しい。
 でも僕はどっちかと言えば兄ちゃんとお話してるほうが好きだ。
 けれど其の事を口に出したらきっと兄ちゃんに迷惑を掛けてしまうだろうから僕はただ黙って音楽を聴きながら兄ちゃんの勉強が終わるのを大人しく待つ。

 一時間位経つと、流石に音楽を聴くのに飽きてきて本棚を探ったりする僕に兄ちゃんはそろそろ寝るか、と声を掛けてくる。
 それを聞いて僕はすぐさま首を縦に振る。

 だって、兄ちゃんと同じ空間に居る仲で僕は一緒に寝るときが一番好きだったから。
 先ず兄ちゃんは寝る前に必ず僕に一冊絵本を読んでくれる。
 前までは僕がずっといい子にしてた日とか学校のテストで良い点が取れた時とかは特別に三冊読んでくれる時とかもあったけど、今年に入ってからは何をしても一冊しか読んでくれなかった。
 其れでも、僕は良かった。

 僕の大好きな兄ちゃんが僕の好きな絵本を読ませてくれる。これ以上に嬉しいことは無い。

 それに兄ちゃんも一冊しか読んであげられないのが申し訳ない、と思っているのか一冊と言ってもなるべくページ数が多く読み応えの有りそうで僕の好きそうな絵本を選んでくれる。
 クラスの子達にこの事を知られたらこの年にもなって未だ絵本なんて読んでもらってるのか、なんて言われるかもしれない。
 でもやっぱり、兄ちゃんに絵本を読んでもらうのが何よりも好きだった。

 絵本を読み終えたら電気を消して寝る。

 寝る時、パパとママが未だに喧嘩してる時が良く有るから兄ちゃんは余計な音が聞こえないように僕の耳に手を当てて抱き締めてくれるかのようにして眠る。
 其のたびに僕は苦笑しながら「苦しいよ、兄ちゃん」と小さな声でつぶやき、兄ちゃんの背中を軽くたたく。そうすると兄ちゃんは明るく笑い、腕の力を緩めてくれた。

 正直、僕もパパとママが喧嘩するのは嫌いだ。パパは怖い顔して怒鳴るしママは子供みたいにわぁわぁ泣くし
 でもこの瞬間、兄ちゃんと一緒に居る間だけはそう言うのもなんだか全部如何でもよくなるような気がして

 僕は兄ちゃんさえ居れば其れでいい。それ以外、何もいらない。僕はそう思ってた。


 だから、なのかな。そんな事を思ったから俺が今お父さんと喧嘩したときみたいに甲高い声で泣き叫ぶお母さんに殴られてるのは。

―――――――――――

何度「兄ちゃん」って言ったのか数えてみたい位兄ちゃん兄ちゃん煩ぇなコイツ


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