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日本大陸を考察・ネタスレ その148

399六面球:2018/11/09(金) 15:16:01 HOST:ipbfp004-030.kcn.ne.jp
では第三試合の投下開始します

※弥次郎様、日仏ゲート世界 「ご挨拶」の剣牙虎のお話からフランスと剣牙虎の交流の部分、引用させていただきました。事後報告ですみません。


【ネタ】日仏世界・武術交流事情中編その3




「なかなか面白くなっておるのう」

 アンリ4世の隣に座る日本人が楽しげに呟く。

 どこか神経質そうな、理知的な雰囲気を持つ老いた男だった。
 一見すると華奢だが、若い頃は鍛え上げていた事が伺える肉体は老いてもしなやかな強さを感じさせ、鋭い視線は知性と明晰な記憶を伺わせた。
 灰色になっているが眉は太く力強く、目つきは鋭く日本人にしては目も大きい。
 白人種の血はあまり感じられないが鼻筋は通って高く、輪郭も鋭い。 
 髭は蓄えているが、こちらも灰色がかってよく手入れされている。

 そして、アンリ4世が後に彼を思い出す度、印象に残ったものとして挙げるのが彼の手指だった。

 武芸の鍛錬で鍛え上げ、ところどころが節くれだっているのに、どこかほっそりとした優美さと何やら得体の知れぬ怖さを持った指だった。
 荒くれ武者でも農民でも、ましてや聖職者でもこんな指の持ち主はいない。
 この指の持ち主がそれを振るえば、万を超える者が想像を絶する責め苦の挙げ句に殺されもすれば、逆に多くの者が希望を与えられ生かされる。
 生殺与奪をほしいままにする者の中で、たまにこんな指を持つ者が現れる事がある。

 あるいは、宗教画に出てくる天使や悪魔も、また。



「そう思わんか? アンリ殿」



 そう、織田幕府の先代将軍である織田信長は楽しげに、少し訛りの強いフランス語で繰り返した。

『相変わらず底の読めない御仁だ』

 対するアンリ4世の方は未だ覚束ない日本語で応えようとするが、上手い言い回しが思いつかず口澱んでしまう。

「おや、アンリ殿。恥ずかしがるのは芸事の上達の一番の邪魔になりますぞ。もそっと話されよ、儂に人の鍛錬を笑う趣味はありませんでな」

 からからと屈託なく笑う日本最大の権力者にして、統一政権を一代で打ち立てた英傑が昨年までフランス語が喋れないどころか、フランスの文化すら知らなかったと
言われて信じられる者はいるだろうか。

 日本とフランスを結ぶ門が現れ、両国の政権が交流を持つことを決断してすぐ、この日本の先代将軍はフランス語を覚える事を決め、家臣でフランス語を知る者を召し
出して四六時中話しまくって会話を覚える事に専心したのだった。

 噂によればオルレアンにお忍びで出かけ、子供に小遣いをやって話し相手にして会話を覚えたとも。
 一度決断すれば、並々ならぬ熱意と恥ずかしげなど微塵も感じずに実行に移す行動力は未だ健在と言えた。

 今年で六十七歳。

 この世界の歴史を先読みするならば今年の内に亡くなる筈なのだが、まるでその事を感じさせないほど生命力に溢れたエネルギッシュな人物。

 それがアンリ4世が後年、どれだけ記憶が曖昧になってもハッキリ思い出せる、織田信長という人物だった。


『なかなかに良い塩梅の空気になって来ておるわ』


 アンリ4世の視線に気づくか気づいていないか、信長はそんな事を思いながら大広間を見渡す。
 忠明が相手を全滅させてしまい、早くも試合は第三試合になろうとしている。
 既にフランス側の空気は最悪なものとなり、宗教的な災いなのではないかと思い始めている者もいるだろう。

 こうでなくては。

 ここからさらに混乱して追い詰められてくれなければ、面白くない。
 そうしなくては、彼の思惑通りになってくれない。

『あの者達なら心配はいらんしな』

 長年に渡り無理を言って織田家に留めてしまった景兼は勿論、今ここにいる代表たちの武勇を疑う余地は無い。
 彼らが何をやり遂げるつもりであるのか知っている身としては、ただ見守り、フランス側に暴走する者がいないよう目を光らせるだけで良いのだ。

 それが、

『ま、片棒を担いじまった儂の仕事よな』

 ここまで長く生きるとは自身でも思っていなかった信長にとって、これは見ておかねばならない事でもある。

『仕事はこなす故、せいぜい楽しませてくれよ』

 楽しげにうそぶく信長の視線の先で、第三試合が始まろうとしていた。


 さて、第三試合以降であるが、多くの記録では一試合ずつが筆を多く割かれ、他の試合は特筆すべきものがないというのが多い。
 実際に多くの記憶に残る試合であったのも確かで、今回はそれに忠実に記していく事とする(長くなってきたんで、巻に入ってるんだろとか言わない)。
 とにかく第三試合の開始である。




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