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中編以上のネタの書き込み【架空戦記版】 その10

980ひゅうが:2014/09/27(土) 15:56:43


【アドーア・スキャンダル】


国産機開発決定で万々歳、めでたしめでたしでエンドロール、ということにはならない。
開発を担当することになった三菱重工では頭を悩ませていた。
敵のレーダーをかいくぐるための低空侵攻と、大重量の搭載量、そして戦闘半径の実現がまずは問題だった。
機動性の確保は、高翼構造デルタ翼の前方にカナード翼を設けるというアイデアや徹底した風洞実験によって目途がつきつつあった。
だが、航続距離と搭載量の両立が問題だった。

安全性の問題から、機体は双発が望ましい。
さらには燃費上の問題から、ターボファンエンジンを採用することもまた同じである。
だが、当時実用段階にあったエンジンとしてはロールスロイス「アドーア」ターボファンエンジン程度しか小型軽量で燃費のいいエンジンが存在しなかったのだ。
しかも、ライセンス契約を締結し導入したエンジンは、アジアの高温多湿環境で不具合を続発。しかも先行量産型のために性能も安定しなかった。
これを用いれば、確実に推力不足に陥り搭載量を削減せざるを得なくなってしまう。
そうなると、いざという時の山桜ミサイル搭載という開発目標が達成できないばかりか格好の獲物をソ連軍に提供するだけである。

と、ここで救いの神が現れる、
水面下において米国のエンジンメーカーであるGEが新型のターボファンエンジンの提供を申し出たのだ。
とはいってもこれはまだ開発中。
実現できれば見どころのあるものになるとは思われたが、現時点では「限りなくターボファンエンジンに近い」というYJ-101ターボジェットエンジンが試験中であるくらいである。
航続距離的には微妙だったが、それでも魅力的であることには変わりない。
条件もまた良好だった。
先の一騒動を受けて戦闘攻撃機計画に対する米国メーカー出入り禁止状態となっていた状況を問題視した国防総省の助け舟である。
彼らは、日本メーカーとの共同開発とライセンス生産を提案してきたのだ。
破格の待遇である。

倉崎技師は、空軍当局にある提案を行った。
練習機型については「アドーア」エンジンを採用するとともにロールスロイス社に対して、推力向上を含む改良型を独自設計し提案。
戦闘攻撃機型についてはGEの提案と二股をかける。
設計にはあらかじめ将来的なエンジンの改良や発展の余地を残していたためにできたことだった。
試作機用に試験購入した「アドーア」エンジンのテストでは日本の仕様にあわないために改良点が多々あると判断されたことからこの提案は実行に移された。
どちらにせよ、エンジンの推力が向上した上でモノになれば日本の利益となるし、GE社のまだ完成していないエンジンに賭ける必要がなくなるためである。

練習機型として開発が先行していた機体が1969年10月に初飛行し、良好な性能を示していたこともこの判断を後押しした。

しかしロールスロイス社は、実質的に唯一の供給源であることを強みとして、後世に残る愚行を冒してしまう。
図面だけを受け取り、改良型のエンジンを日本側に供与しようとしなかったのだ。
改良型のために別料金というのが彼らの言い分だった。
彼らは、日本側の足元をみていた。
すでに航続距離と米国メーカーとの顛末は彼らの知るところとなっており、自らを絶対的な強者であると判断していたのだ。
先行量産品の粗悪品を掴まされ、さらには独自改良を加えた改良型をまた別料金で買わされるというボッタクリすれすれのやり方に、さすがの空軍当局者も怒り、ロールスロイス社と進めていた攻撃機型のライセンス交渉を白紙撤回。
練習機型として計画されていた70機分で契約を解除し、GE社との間で新型ターボファンエンジンの共同開発を行うことを通告した。

この、世に云う「アドーア・スキャンダル」は、数か月後にどこからか新聞にリークされて日本はもとより欧米のマスコミに面白おかしく書き立てられることになった。

この時点で練習機型となるT-2は初飛行を済ませており、さらには航続距離が若干低下するもののYJ-101エンジンは良好な性能を発揮しつつあった。
改良型となるYJ-102-mod.Jターボファンエンジンも試験に入りつつあり、驚喜した空軍当局者は推力4トンに達する高性能エンジンのライセンス契約を締結していた。
さらにはのちにF-404となる発展型の開発すら開始されていたのである。




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