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没作品投下スレ

69我らが誓いは主の為に 5/5:2007/02/13(火) 02:01:28 ID:swV8ddKI


 擦れ違ったシグナムにそれきり視線を送ることもせず、カズマはヴィータに歩み寄った。
「おい、起きろよ」
 そっと抱え起こすと、未練そうに薄目を開いたまま静かに時を止めていた。
 性格の割に白い肌が、皮膚の下に消失の色を湛えている。
「ちぇ、バカ野郎……」
 何を思うでもなく、しばらく顔を見ていた。
 人差し指と中指で目を閉じさせ、得物にしては華奢な体を抱き上げる。
 葬る場所は、皮肉にもすぐそばにあった。
「じゃあな。かなみと君島に、よろしく言っといてくれ」
 小さな水飛沫を上げて、赤い姿が陰鬱な水の中を鮮やかに流れていく。
 その色が海に消えるまで、カズマはじっと見送っていた。
「Sie」
「あん?」
 ふと呼ばれた気がした。辺りを見回してみるが、カズマに語りかけるようなものは何もない。
「Nehmen Sie mich」
 傍らの鉄槌以外は。
「なんだあ?」
「Nehmen Sie mich,sie」
 間違いないと見て取って、柄についた血痕にそっと手を当ててみる。
 消えていくヴィータの体温が、手のひらに触れた。
「なんかのアルターか……? つれてけって言ってんのか」
「Ja」
 ヴィータの体ほどもある長い柄をまじまじと見る。
「そうかい、お前もこのままじゃ納まらねえか。そうだよなあ……!」
 カズマの言葉に応じるかのように、ハンマーは自ら縮んでいく。
 最終的に、手のひらに収まる程度の小さなハンマー型のフィギュアになった。
「へへ、気が利くじゃねえか」
 それを拾い上げれば、もう落ちた橋の他に何も残っていない。
「行こうぜ。このままほっとく気はねえんだろ、お前も!」
「Jawohl」
 小さくなったグラーフアイゼンをポケットにねじ込み、カズマは橋に背を向けた。
 進んで、ふと振り返る。
 水面が、小波を立てて静かに流れていく。


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