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没作品投下スレ

67我らが誓いは主の為に 3/5:2007/02/13(火) 02:00:28 ID:swV8ddKI
「ベルカの騎士の務めだ! 私情など……!」
 押し返す力が、シグナムにない。
「騎士ならなおさらじゃねーか! はやてがどう思うかなんて、もうとっくにわかってるんだろ!?」
 騎士の誇りは何が大事かなどというのは、ヴィータには言うまでもなく決まっていることだった。
 そこに欺瞞があっては、ならない。
「何を一番大事にしなくちゃいけないか、わかってるんだろシグナムーッ!」
 シグナムの右足がふっと浮いた。
 続く前蹴りの前にヴィータは自ら鍔迫り合いを外し、一旦距離をとってから再びグラーフアイゼンを振りかぶった。
 自分の伝えられる言葉は全て伝えた。シグナムにも伝わるはずだと確信している。
 言葉だけは全てを伝えきれない。だから、この一撃で。
「でやああああああっ!」
 シグナムは完全に後手に回った。
 しかし、ヴィータの狙い通りとはならず、鉄の伯爵は炎の剣に受け止められた。
 そして、ヴィータの思惑の通り、直情の破城槌が、シグナムの理論武装に一撃でひびを入れた。
 槌の衝撃は重い。
 防御ごと砕かれかねない勢いを自ら後ろに飛ぶことで殺し、その勢いで距離をとる。
 ヴィータは追わない。
 10数メートルの距離を取って、シグナムは呼吸を整える。
「レヴァンティンッッ!」
「Bogenform!」
 ヴィータは、自分の狙いが、シグナムを追い詰めたことを知った。
 顔と指先が急に冷たくなっていくのを感じる。
 ボーゲンフォルムから放たれる超高速の魔力弾……シュツルムファルケンは、シグナムの奥の手である。
 確実に仕留める。そういう意味合いを持っている。
 シグナムの技量を持ってすれば、この狭い橋のほぼ全てを射角に収めることが出来る。
 もはや避けるようなスペースは――あった。
「行くぞ、グラーフアイゼン……」
「Raketenform」
 手に硬い重さを伝えながら、グラーフアイゼンが姿を変えていく。鋭く、迅く。
 回避地点はひとつ。発射されたシュツルムファルケンの、側面。
 風より速く前へ出て、撃ち出された矢の進行軌道そのものを避けること。
 余計な魔法で強化している暇はない。普段どおり、回転しているスペースもない。
 まっすぐ、ただひたすらまっすぐに、狙いを定めて槌を振り上げた。
「ラケーテンハンマァァァァ!」
「駆けよ、隼!」
 ハンマーの推進力が爆発すると同時に、非実存の弦が非物質の矢を放つ。
 隼の名の通り、音速を幾つも破った必殺の矢が、放たれると同時にヴィータに傷を与えていた。
 服を裂くにとどまらず、わきの下を灼き肋骨の数本を削りながら飛び去っていく。
 だが、直撃弾ではない。辛うじて競り勝っ――
「Schwertform!」
 状況を見てから剣に変えたのでは、間に合わないはずだった。
 であればこのタイミングでのフォルムチェンジは予定の行動。
 すなわちカートリッジ2発分、レヴァンティン最強のシュツルムファルケンは最初から目眩ましであった、ということ。
 強大な魔力の輝きから視力を取り戻した世界には、既に大きく横に振りかぶるシグナムの姿。
「紫電!」
 撃ち終えた空隙を突くつもりだった。
 レヴァンティンを叩き落として、それでもダメなら少し痛めつけて、負けを宣告して、それで――
 このまま打ち下ろせば、シグナムを殺してしまう。
 一瞬、止まりかけた。
「Raketenhammer!」
 グラーフアイゼンが吼える。
 もはや前進以外に活路はないのだ、と。
「うあああああああああああああああああ!」
「一閃――!」


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