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没作品投下スレ

51峰不二子の溜息 1/2  ◆S8pgx99zVs:2006/12/25(月) 23:23:32 ID:XQz63kTg
走り去った電車の速度は速くなかったが、他の人間に見つかることを警戒して慎重に移動したことと、
思いのほか路地が複雑で回り道せざるを得なかったために、峰不二子が駅に着いたのは黎明を
過ぎて早朝に入ろうというところだった。
そして今はその駅の前、入口がよく見える物陰に潜んでいる。

夜が明け始めていて明るいとは言わないまでも、もう闇の中とは言えない。
全身を黒く覆った革のツナギは闇の中では自身を隠してくれたが、これから先はそうではないだろう。
そして、目の前にある駅は外からでもけっこう見通しがいい。現在は人の気配は感じられないが
万が一、駅を探索中に外から見つかるようなことがあれば……
後ろ向きすぎるか。どれだけ確率が低かろうと賽を振らなければ勝負は始まらないのだ。
ただ篭っていても打てる手が減っていくだけでジリ貧だ。

峰不二子は気を奮い立たせ、目の前の道路を素早く横断し駅の中に静かに駆け込んだ。

券売機を横目に無人の改札を抜ける。事務員室や売店、他にも気になる所はあるが真っ先にホームを
目指した。万が一にも電車がホームに残っている可能性があるからだ。

だが、残念ながらホームに電車は残っていなかった。
代わりに見つけたのは銃弾を撃ち込まれた自販機とホームに落ちた一つの電灯。
戦闘があったのかも知れない。だが血痕はどこにも見当たらなかったし、銃痕も他には見当たらなかった。

ホームに屈んで落ちている薬莢を見る。そしてそこから撃たれた自販機を見やる。
落ちている薬莢の数と銃痕の数は一致する。そして銃が使われた痕跡はこれだけだ。
牽制……または誤射か?銃に慣れていない誰かが誤って撃ってしまったのかも知れない。
落ちている薬莢の種類と数からしておそらくサブマシンガンの類いだろう。

そしてもう一つの痕跡は落ちた電灯。
奇妙なのはその切り口だ。まるで初めからそうであったように綺麗に切られている。
……思い出すのは鉄をも斬る刀を持つ一人の男――石川五ェ門。彼の斬鉄剣ならばこういった
芸当も可能だろう。だがしかし、天井を見上げるとけっこうな高さがある。
跳んで斬ったのか、何のために?

よくわからない状況だ。
一人だったのか二人、いやそれ以上だったのか。殺しあったのかそうでないのか。

峰不二子は一つ溜息をつくと、情報だけを頭に入れホームを降りた。


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