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「のと」本編
5
:
shin
:2006/11/21(火) 17:46:14
一月後、海軍軍務局長堀悌吉少将は、執務室で来客を待ち受けていた。
軍務局長に就任した途端に、厄介なことだ・・・
堀は、机に置かれた書類を再び目を通しながら大きくため息を吐く。
「失礼します。」
扉を開けて入ってきたのは、井上成美大佐だった。先月駐在武官としての勤務を終えて、帰国し、現在は待命中の身の上である。
冷静そうな細面の顔にも、突然の呼び出しに好奇心が伺えないことも無い。
「井上成美、参りました。」
堀は、身振りで前のソファを進めると、手に書類を持ち、向かいに腰を下ろす。
「どうだった、ヨーロッパは・・・」
「はっ、それについては、ただいま報告書をまとめております。来週中にはこちらにも上がってくるものと思われますが。」
井上は堀を探るような表情で、そう答える。
私を呼んだのはそんな事じゃないのでしょうと暗に言っていた。
堀は大きくため息を吐くと、机の上に手にした書類を放り出す。
「これは?」
井上は、大きく丸秘と書かれた書類の閲覧許可が出たものと判断し、それを手にしながら尋ねる。
「先月、浅間丸が遭難したのは知っているな。」
「ええ、東洋一の豪華客船が行方不明ですから、それぐらいは。」
長崎から、横浜に向かって航海中の客船が、何の連絡も無しに行方不明となっていた。
日本近海での遭難に、海軍は多くの艦艇を動員し、捜査を行ったが、結局生存者や遺留品一つも見つからず、謎の海難事故として新聞は大きく取り上げていた。
船そのものの構造的欠陥ではないかと言う、政党筋のコメントまで飛び出し、三菱造船所はそれを打ち消すのに必死になっていた。
「浅間丸は本当に消えてしまった・・・」
井上は怪訝そうな顔で堀を見つめる。
「しかし、別の船が現れた。そうとしか考えられん。」
井上の瞳が少し大きく開く。
流石にこれにはこの男も驚いているようである。
「そこに書いてあるが、状況は別の船が入れ替わったとしか表現しようが無い。」
書類に目を通すように促され、井上は手早く目を通して行く。
どうやら第一発見者が元海兵だったようで、不審船の発見はいち早く、佐世保鎮守府に連絡が入った。
彼は先年除隊したばかりで、知り合いも多い。
すぐさま海防艦が、現地まで急行すると、確かに大型艦艇が漂流していた。
老人は、浅間丸が目の前でこの船に変わったと言っていたが、最初は誰もそれを信じようとしなかった。
しかし、海防艦から不審船に乗り込むと、それは信じられる話に変わっていた。
乗り込んだ海兵達が見たものは、それだけで十分に信じられないものだったから。
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