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避難用作品投下スレ5

62来客予報:2009/06/14(日) 00:30:44 ID:Sd7UWGMg0
「遅いな、初音ちゃん。すぐ戻るって言ってたのに……」

そわそわとした様子で、視線を辺りに彷徨わせながら長瀬祐介が呟いた。
彼が今座っている椅子の正面、少し前までそこで朝食を摂っていた少女はここにはいない。
支給された食べかけのパンは、そのままの状態で放置されていた。

時刻は午前七時を回っている。
第二回目の放送が行われてから、一時間の時間が経った。
放送はこの民家に滞在していた三人に、大きな衝撃をもたらすことになる。
まずその人数。
第一回目の放送時に流れた名前の倍以上の人数が、今回の放送にて発表された。

そこには祐介にとって、馴染み深い少女達の名前も並ぶことになる。
心を許した愛しい彼女達との永遠の別離、実質上祐介が元からの知り合いで心を許していた人間は、これで零となった。
顔見知りである太田香奈子や月島拓也の存在を、無視するという気が祐介の中にある訳ではない。
しかし心理的に祐介が最優先する存在が、二人を置き去りにした状態のままここで浮上したことになる。
それが彼女、柏木初音だった。

『ごめんなさい。大丈夫。大丈夫だよ……』

顔面蒼白の少女が呟く。
声は小さく震えていた。初音の動揺が、そこには直に表れている。
三人の姉を含む親族達と共にこの島に放たれた初音は、姉妹の中でも末っ子である四女だった。
しっかりしているものの、根は甘えん坊であり誰かに縋ることで自己を回復している面が、初音にはある。
そんな彼女は、このたった一晩で多くの家族を奪われた。
初音は結局、血を分けたかけがえのない姉妹達と再会することが叶わなかったのだ。
金輪際、未来永劫。
この争いにより大切な身内を失った初音のことを思うだけで、祐介は胸が締め付けられそうになる。


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