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避難用作品投下スレ4

96(最初だけ怖いっス)/Theme of Black Knight:2008/09/21(日) 02:37:02 ID:kZsTBTYo0
 ここまで追い詰めておきながら……と郁未は怒りも露にホテルの奥を見やる。
 どこの誰だか知らないが、余計なことを!
 またもや『予想外』に妨害された郁未はその元凶を始末すべく、鼻息も荒く階段を駆け上がる。
 ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな! どこまでも私の邪魔をして、許さん! 叩き殺してやる!
 郁未の憤りは、もはやこの場全ての人間を抹殺するまで収まりそうもなかった。

     *     *     *

 ホテル三階の構造は、少し特異な作りになっている。
 中央部分に大宴会どころか結婚式の披露宴まで開けそうな大会場があり、その周りを取り囲むようにして廊下が繋がっている。
 他に部屋は殆どなく、披露宴の会場前にエレベーターがあることと小規模な部屋がいくつかと、自販機が数台あるだけだった。
 その廊下を、疾走する二人の女の姿があった。

「あはっあははははっははははっははぁぁぁああぁあぁ、いひ、いひひっひひ、全部全部燃え、燃え、大火事だぁ〜!」
「くっ……まともに近づけない……!」

 荒れ狂う炎の嵐の中、汗と涎、涙で全身をぐしょぐしょにしながらも狂乱の様相を呈して火炎放射器を放ち続ける小牧愛佳と、追う七瀬留美。
 既に三階はあちこちが炎に包まれていた。

 スプリンクラーはまともに機能せず、消火器もない状況で火は燃え広がる一方であった。
 熱気に押されて七瀬はSMGⅡを向けることもできず、放射器の燃料切れを待とうにも一向に収まる気配がない。
 愛佳の動きも徐々に緩慢になりつつあるが足の動きは止まることを知らず、前進しながら炎を撒き続けている。
 実に埒が明かない。七瀬はイライラを感じつつも何も出来ない自分に腹立っていた。

(何よ……なんなのよ、これは。この私が、七瀬留美がこんな小汚い悪党相手に手こずっているなんて……っ!)

 怯え、隠れ、逃げ惑ってこちらを悪だと決め付け、隙を見せれば手のひら返して殺そうするような奴に。
 自らが絶対の正義だと信じている七瀬は狂ってしまった愛佳の心情など意に介しようともしない。
 そもそも彼女と合流しようとしたのだって自分は戦う正当な権利を所有しているのだというお墨付きを手に入れようとしていたからで、愛佳はそのための道具とに過ぎなかった。そんな風に心の奥底で見下していた彼女が人の心情を察することが出来ないのは当然であった。


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