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避難用作品投下スレ4

818明日の見えぬぼくたち:2009/05/23(土) 03:53:56 ID:9hfe7kLg0
「高くつくからな」
「……出世払いで頼む」

 難しい顔をして往人はそう返した。金と聞いて顔色を変えるあたり金銭難な生活だったのかもしれない。
 格差社会の弊害というやつだろうか。宗一から見ても中々格好いい男なだけに勿体無いと思う。
 新しい働き口を探していたようでもあったから、コネをいかして今度仕事を斡旋してやろうかと考える。
 意外にホスト稼業なんかいいんじゃないか、と思いかけて、やっぱりやめることにした。
 銃を真剣に見つめている往人の横顔を見れば、今考えるべきことはそれではないことが分かったからだ。

「まーしかしだがしかし、那須っちは銃に詳しいねえ。まるで軍人さんみたい」

 その一部始終をずっと眺めていたらしい朝霧麻亜子が感心したように尋ねる。
 元は往人達とは敵対に近い関係だったらしいが、まるでそんな素振りも感じさせない緩い声である。
 本人は深く語らないが、何人か殺害している可能性はある。
 ……そうでなければ、時折眼の奥に見える哀切に満ちた色があるわけがない。

 この女もまた、仮面を被っている。本当に辛いことや悲しいことを打ち明けられず、一人で自己解決してきた自分と同じだった。
 ただそこに踏み込む権利は自分にはないし、その役目は往人や川澄舞が担っているのだろう。
 麻亜子自身も望んでそうしているようだったから、これ以上は詮索するまいと宗一は思った。

 しかし渚といい、自分といい、麻亜子にしてもこの島には似たものが多いものだ。
 そういう人間だけ生き残ってしまったのかもしれないが――そんなはずはないか。
 自らの空想を消し、宗一は努めて軽い調子で答える。

「一応、軍事マニアなんでね。実際に撃ったこともあるぜ」
「ほうほう、本場のアメリカ〜ンで?」
「イエス。実は英語も喋れる」
「あー、流れ的に英語で質問されそうなのでまいまいにパス」


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