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避難用作品投下スレ4

357萃まる夢、想い:2009/01/10(土) 02:00:38 ID:OSmySDaI0
「勘違いせんでや。アンタがええ手を思いつかんなら、勝算はないて納得しただけや。
 アンタだって尻尾巻いて逃げる気なんてさらさらないんやろ? 目がそう言うとる」
「そう見えますか」
「見える。……癪やけどアンタの言う通り、『本質的には同じ』みたいやからな、ウチらは」

 以前に弥生が晴子に向けた言葉だった。
 疑問の返答をそれで締めくくると、晴子は黙って車の外へと視線を集中させ始めた。
 特に返す言葉もなかったので弥生も無言で晴子に続く。

 本質的には同じ……大切な人のためならどんな絵空事だって信じられる、どこまでも愚直な部分。
 最初からこのように人殺しに身を堕としていたわけでもない。人殺しがしたかったわけでもない。
 ただ愚直に過ぎた。そのひとのことを想って突き進んでいこうと欲した結果だ。
 退く事を知らず、省みる事を知らず、己の筋を通そうとしただけの自分達。
 肯定も否定もするまい、と弥生は思う。その方法さえ知らないのだから……

 気付くと、連中の姿は分岐点に差し掛かり、氷川村の方角へと足を向けているようだった。
 そろそろか、と弥生はハンドルを切り、アクセルを踏み出す。
 徐々に車の加速度が上がり、それなりのスピードを以って追走を始める。
 氷川村に入り始める頃が勝負か。弥生はそう目算をつける。
 建物を遮蔽物として使えるような場所であれば、小回りの利きにくい車でも有利に立ち回れる。
 彼らが入ったと同時、この車が出しうる最大速度で突っ込む。あわよくば轢き殺せる。
 次々と戦術を構築していく弥生に、横から晴子がひとつ声をかけてきた。

「任せるで」

 不敵な笑みを浮かべた晴子の表情は信頼さえ感じさせるものがあった。
 頷き返した弥生の頭にも、確かな自信が生まれてくる。
 本質を同じくする人間が二人。一方が大丈夫だと言えば、もう片方だってそう思えてくる。
 やはりこの女とならやっていけそうだ。ニヤリと笑った弥生のアクセルを踏み込む足の強さが大きくなった。


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