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避難用作品投下スレ4
301
:
Act of violence
:2008/12/11(木) 02:36:03 ID:SPIb/JNo0
自分とて人のことを言えたものではないと思うが、それでも逃げ出していないということは胸を張って言える。
現実逃避に甘んじることなく、死んでいった者たちに報いるために、考えて考えて考え抜く。
愚順で無知だとなじられても、絶対に逃げ出さない。逃げ出したくない。
逃げ出してしまっては、本当に掴みたいものがつかめなくなってしまうから。
だから、こんなところで……殺されるわけにはいかないんです!
全身をバネにして、風子は力を振り絞り、銃を向けていた彰の腕を力任せに引っ張った。
いきなり伸ばされた風子の手に反応できず、男がバランスを崩し倒れ掛かってくる。
風子も引っ張った際の反動を利用して、男がダラダラと血の川を流す源の、額へ全身全霊をかけた頭突きをブチ当てる。
頭突きした風子の脳にも火花のようなものが見えたような気がしたが、痛みに構っている暇はない。
よろよろと立ち上がり、再び逃走を試みる。
だがぐいと引き寄せられる力にそれを為すことはあっけなく拒否された。
髪の毛を引っ張られたと思った瞬間、ガツンという堅い衝撃が風子の背中を突き抜け、痛みを全身に伝播させた。
銃把で殴られたのだと理解したときには、風子はごろごろと坂道を転がり草いきれの匂いを再び味わうことになった。
土に指を掻き立てるようにして転がるのを抑えたものの、止まった瞬間には男の足が風子の体を強く踏みつけ、ぐりぐりと足裏で擦り付ける。
「……諦めが悪いんだよ、戦いから逃げ出した臆病者の癖に。そんなに死にたくないか」
暗澹とした、陰惨な憎悪を増して見下す男の声が降りかかる。
風子がここまで抵抗してもそれだけの価値を認めようともしない、優越感のみで己の意義を見出そうとする声。
負けたくないという強い思いは相変わらず風子の中に堅く存在していたが、力が伴っていなかった結果が、今の有様という冷めた感想も持っていた。
この島に厳然として我が物顔で居座り、何をしても許されるという力の倫理。
どんなに覚悟を持って、傷つき、傷つけるのも厭わない勇気があってもそんなものをあっという間に押し潰す、やられる前にやるという暴力の嵐。
それに対抗するだけの本当の力が、自分にはないのか。
悔しくてならなかった。もっと力があれば、自分が無力でさえなければ。
やりきれなくなった思いを、風子は全身で声にしていた。
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