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避難用作品投下スレ4

22十一時三十分/鳳麟、影と咲き誇れ:2008/08/21(木) 17:18:04 ID:Gdz35eDw0
「やって、くれんじゃないの……!」

乱暴に足を振って穴の空いた靴を放り捨てた郁未が、爛々と光る眼で巨人を睨みつけながら喉を鳴らす。
肉食獣が怒りを抑えきれずに漏らすような、暴力に満ちた声。
破り捨てるように脱いだ靴下も背後に放り投げる。
裸足になった足先は火に炙られて、ぐずぐずとリンパ液を染み出させながら膨れている。

「郁未さん……!」
「ぶっ殺すッ!」

離れた場所から響く葉子の声への返事代わりに、それだけを叫んで駆け出す。
端的な殺意の表明はしかし、郁未の短絡を意味するものではない。
走り出したのは第二波の標的となることを避けるためである。
その頭脳にあるのは沸騰するような殺意と同居する、氷の如き冷徹な分析。
教団崩壊後にも幾多の危機を迎えた天沢郁未をして、それが死線を潜り抜けさせてきた要因だった。
先刻の砲撃。
額に正対することを避け、脇から回り込む動きを取った郁未の、その正面から光が来た。
巨人が如何に常識外の存在であれ、その体型が人を模している以上はあり得ないはずの位置からだ。
その不可解の正体を、しかし郁未はその目でしっかりと見極めている。
巨人の反対側から見ていた葉子も、当然理解しているはずだった。

「お洒落に気を遣うお年頃ってわけ……?
 だからって普通は手にコンパクトなんて縫い付けないけどね……!」

冗談めかした呟きを聞く者はいない。
その表情にも一切の笑みはなかった。
脳裏に浮かぶのは砲撃の瞬間。
視界が白く染まる刹那、そこにあったのは巨人に残された片手、その開かれた掌であった。
人間のように掌紋すら刻まれていたはずのそれが一瞬にして変化するのを、郁未は見た。
肌色と桃色と血管の青で構成された皮膚から、透き通るような硬質の硝子様の物質へ。
それは正しく反射鏡だった。
閃光の生み出す膨大な熱に耐え、それを任意の方向へと射出するための部位。
巨大な裸身の少女が、単に膨大な質量を誇る人間などではなく、人を模した兵器であることの証左。


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