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避難用作品投下スレ3

862アイニミチル (終幕):2008/07/26(土) 16:50:42 ID:ruXzk7n60
「待ってるっていうんならずっと引き篭もってればいい!」
「……ッ!」
「外に出て、誰かに会いたくて、それで何を待ってるっていうのさ!」

刃を突き出した姿勢、茜は剣を引くことができない。
上半身を捻ったマナが頭上に流れた両刃の剣を、今度は開いた茜の背に向けて叩き込む。
咄嗟に身を投げ出した茜の、二つに編まれた髪の先が流れ、剣風に巻き込まれた。
ぷつりと小さな音がして、髪留めが飛ぶ。

「ただ待ってるのが嫌なら、そう言いなよ!」
「……何も知らないくせに!」

飛んだ髪留めが水溜りに落ちて小さな波紋を立てるのと同時。
膝立ちになった茜の刃が、横薙ぎに宙を裂いていた。
迂闊に踏み込めず立ち止まったマナを、茜が憎悪に満ちた眼差しで睨み上げる。

「待ち続ける辛さも、何も知らないくせに……!」
「辛いんでしょう!?」
「―――ええ、辛いですよ!」

ばらり、と茜の髪がその容積を増した。
ゆっくりと立ち上がった茜の、編み髪の一つが解け、波打つ蜂蜜色の海が広がっていた。

「辛いですよ、待ち続けるだけの日々は。
 苦しいですよ、帰らない人のことを想い続けるのは。
 それがおかしいですか? 何か間違っていますか?」

ぶつりと音がした。
茜の手が、もう一方の編み髪を強引に解いた音だった。
乱雑に拡がる豊かな髪が、雨に濡れて茜の肌に張り付いていく。
それを空いた手でかき上げて、茜は叫ぶ。

「寂しいです、息が詰まりそうです、でも、だからどうだっていうんです?
 誰かに近づいたら私の想いは色褪せるんですか?」

匂い立つような艶を醸し出しながら、茜が手にした刃を真横に振るう。
降り続く雨粒が、断ち切られた。

「……そう感じたから、世界を空っぽにしようとしたんでしょう。
 あなたの近づける、誰かのいる世界を」

激情を吐露する、赤光の刃の少女を見据えて、滄海の剣の少女が静かにそれを口にする。
否む強さに縋る少女を断罪するように、肯んじる者が、告げる。


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