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避難用作品投下スレ3

846(先行不安)/Chaotic Island:2008/07/20(日) 13:15:03 ID:4wBxa5pU0
 そこまで行くと、最早推理ではなく、妄想の域に入ることに気付き弥生はそれ以降の考えを打ち止めにする。
 そんなことより今、問題にすべきなのは……
 『すまん、ちょっと外の空気吸ってくるわ』
 と青褪めた顔色を必死に隠すようにして、怪我しているにも関わらずふらふらと無学寺の外に出て行った、神尾晴子の姿だった。

 潰れてくれなければ、いいのですが……
 懸念しつつも、しかしどこかで晴子が自棄を起こし弥生に襲い掛かってきたときのことを考慮し、対応策を考えている冷ややかな自身の頭に苦笑する。
 どこかで人を物のように考え、どう利用すれば最善の結果を導き出せるかばかりを考えている。
 生来の性だ。変える気はないし、この場では存分に使える思考体系である。

 ……でも、それじゃ寂しいですよ。

 ふとそんな事を言う藤井冬弥の顔が弥生の頭に浮かんだ。
 いつだったか、黙々とマネージャーの仕事を続け、仕事ばかりしていて、由綺の先のことばかり気にして大丈夫なのかと尋ねてきたときがあった。
 弥生は当然のように大丈夫だと言い、それに由綺をアイドル界のトップに、スターダムにのし上げることこそが生き甲斐なのだと話した。
 それ以外は何も必要ないとも。
 その時にぽつりと冬弥が零したのが、今の言葉だった。

 何を思って、そう言ったのかは今でも分からない。問い質そうにも既に彼はこの世からは……弥生自身が手を下して、消えた。
 寂しい。何が、寂しいというのか。
 別にそのような批評を向けられたことに対して怒りや不満を抱くわけもなかったが、弥生にはそう言われる理由が分からなかった。
 目的を見つけて、それに生き甲斐も持っているというのに。

 詮無いことだと思い、その疑問に対する考えを中断させる。
 そもそも、どうしてこんな言葉を思い出すのだろう。
 今の自分にも、行動にも後悔はない。
 ……それとも、まだ気付いてないだけで……

「愚問、ですね」


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