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避難用作品投下スレ3

840アイニミチル (7):2008/07/15(火) 13:16:44 ID:myea85cE0


微笑む女が、底知れぬ老いと疲れとを孕んで、それでも微笑んだまま、語る。

 ―――たとえばの話をします。


***


たとえば明日、世界が滅びるという日に。
それでも林檎の木を植えることを、私は赦しません。

私には力がある。
理不尽を覆すだけの力が。
私たちにはあるのです。
運命に抗うだけの力というものが。
私に力があり、私たちに力があり、ならば私は命じます。
己が刃を振りかざし、抗い、抗い、抗い続けよと。
明日という理不尽に抗えと、私は私以外のすべてに強いるでしょう。
夜に怯えるすべての我と我が子らに、私は命じます。
抗えと、打ち破れと、薙ぎ倒し叩き伏せよと、夜を越えよと私は命じます。

陽は沈み、夜は長く、それでも朝は来るのです。
ならば打ち続く剣戟の、その飛び散る火花で目映く夜を照らしなさい。
地を震わせる鬨の声で眠ろうとする者を揺り起こしなさい。
貴女の願う明日を切り開くその足音を、微睡む世界に響かせなさい。

いつか来る夜明けを、歓喜をもって迎えるために。
その朝を、続き続く明日を、ただ幸福が支配するように。
涙を打ち払う剣を取って夜に抗いなさい。
かつて幼子であったものの義務として、明日の幼子のための道を切り開きなさい。

昨日を踏み拉き、今日を振り払って明日へと至りなさい。
顔を上げ、声を限りに叫んで歩を進めるその先に、夜は明けるのです。
誰も届かなかった明日に手をかけ、抱き寄せてその唇を奪いなさい。
既に昨日は喪われ、今日という日は終わりを迎え、それでも明日は来ると、貴女が叫びなさい。
夜の向こうへ轟く声で、まだ見ぬ朝陽を引きずり出しなさい。

明けぬ夜の頑冥を突き崩す剣を、遥か稜線の向こうに輝く日輪へと届く刃を、
私は、私たちは、その腕に、その心に、その声に、その命に、持っているのです。

命持つ私は、ならば命持つ貴女に命じます。
越えなさい、何もかもを。

その道の果てに―――明日を築きなさい。



***


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