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避難用作品投下スレ3
832
:
それぞれ
:2008/07/14(月) 22:24:50 ID:34hZeGm60
綾香も埋葬するという言葉を伝えたときの宗一の複雑そうな顔が視界の隅にこびりついている。
だからこれまでだ。これが、最後。
大丈夫です。もう迷惑はかけません。後は那須さんに従います。
言葉にすれば、それはあまりにも言い訳がましかった。だから作業は、宗一とは離れるように、黙々と進めていた。
その途中で、友人の死を聞いた。
春原陽平……知り合いの岡崎朋也と、一緒にいることの多かった人間。
朋也は詳しく語ろうとしなかったものの、二人が気心が知れた関係だというのは渚にもすぐ理解できた。
恐らくは、本人達は認め合わないだろうが、親友なのだろう。
その春原が死んでしまった。
朋也はもちろん次の放送でそれを聞いて悲しむだろうし、この報を伝えてくれたルーシー・マリア・ミソラという女の子も辛そうな表情をしていた。
きっと春原はこんな地獄でもいつものように振る舞っては、皆に安らぎの一時を与えていたのだろう。
それに引き換え、自分は……
考えかけて、やめようと渚は思った。自己嫌悪したって春原の死がどうなるわけではない。いつも朋也が言っていた「悪い癖」だ。
大丈夫。ちゃんとまだそれが分かっている。
結論を出さなければならなかった。
この先、何に拠って行動するべきか。
宗一は皆を守りたいから。美凪とルーシーは死んでいった仲間に報いるため、生きるために脱出する。
それぞれがそれぞれの信念を持っている。
あの時戦った郁未でさえ生き残りたいからという理由を持って人殺しをしている(絶対に許しはしないが)。
既に、渚は人殺しをしないという信念を破り捨てている。特別、これといった技能があるわけでもない。
なら、渚に出来ることは体を張る、それしかなかった。
わたしは、盾になる。
皆を凶弾から防ぎ、迫る刃を受け止める盾だ。
どんなに傷ついたって構わない。歩けなくなっても、腕が取れても、死んでもいい。
殺させたくない。誰かがいなくなっていくのは、悲しい。
命一つで皆を救えるなら、渚は躊躇わずに差し出すつもりだった。
それがまた我侭であることにも、自分の死がまた誰かを悲しませることにも気付いていながら。
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