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避難用作品投下スレ3

816アイニミチル (6):2008/07/04(金) 01:04:09 ID:qK9RljSM0
 
二度、三度、四度。
刃が、既に滅された巨塊を切り刻む。

五度、六度、七度、八度、九度、十度。
寸断され、断裁されて、神であったものが無数の肉塊に過ぎない何かとなり、飛び散って岩窟を汚す。

十一度、十二度、十三度、十四度、十五度、十六度、十七度。
十八度十九度二十度二十一度二十二度二十三度二十四度二十五度二十六度二十七度二十八度二十九度。

巨塊を突き刺していた青の光柱が徐々に薄れ、やがて完全に消えた頃には、巨塊であったものは既に、
辺り一面に散らばった汚らしい肉片でしかなくなっていた。

いつしか、灯火が消えていた。
巨塊の欠片が覆って消えたものか、神を切り刻む刃の風圧に消されたものか、それは判然としない。
確かなのは、広い岩窟を照らすものは何もなくなったということだけだった。

灯が消え、命が消え、神が消え、青が消えた岩窟。
すべてが終わった祭儀場の中心で、唯一つ光るものがある。
赤光。
声もなく笑う少女の持つ、赤の典籍であった。

「流れ込む、この力―――私と真なる赤とに溢れる神の力」

否。
呟く少女は、それ自身が光を放っている。

「何もかもを拒んだ先にある、静かで穏やかな世界―――」

どくり、どくりと。
脈動するように、明滅する少女。

「何も生まれることのない世界―――」

少女の足は、大地を踏みしめてすらいない。
暗闇の中、浮かび漂う少女は、まるで世界から切り離されて在るように。

「私の導く、それこそが―――本当の、永遠の世界」

久遠の孤独に、初めて満ち足りたように。
少女が、笑う。



***


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