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避難用作品投下スレ3

788アイニミチル (4):2008/06/26(木) 03:31:51 ID:I4YEtknU0
 
暗い洞穴を明るく照らすものがあった。
光。青い光である。

そこに海があった。
深い、深い滄海の湛える色があった。
そこに空があった。
果てなく高い、透き通るような天の色があった。

空と海とが交じり合い、絡まり合って、ひとつの光となっていた。
観月マナという少女の発しているのは、そういう光である。

その中心にいるはずの少女はしかし、空と海とに挟まれて薄ぼんやりと、
影のような輪郭だけを光の中に浮かべている。

あ―――、と。

音が、響いた。
それが少女、マナの発した声であるとその場にいた者たちが気づいたのは、
その音が急激にボルテージを上げ、岩窟全体をびりびりと震わせはじめてからである。

―――ぁぁぁぁああああああアアアアアアアアアアァァァァァぁぁぁぁぁ―――

鼓膜を裂くように高く、臓腑を抉るように低く、少女が哭いていた。
到底ヒトの声帯から生み出されるものとは思えない、それは常軌を逸した音量と音程の、絶叫である。
唐突に現れた光と音が、観月マナという少女が、岩窟という狭い世界を瞬く間に塗り替えていた。
囁き声も、すすり泣く声も、淫臭も、水音も、赤い色も、すべてが蹂躙され、その存在を押し流されていた。
そんな目を灼くような光と耳を劈くような音の波の中で、笑む者がある。

「唸れ、滾れ、美しき青の子―――」

天野美汐であった。
堪えきれぬといった風に笑みを浮かべ、誰にも聞こえ得ぬ声を漏らす。

「定命の身に収めきれぬ青を振り撒き―――神を喚ぶ餌となりなさい」

―――あ、と。
呪詛のように呟かれた美汐の言葉に引きずられるように、マナが吼えた。


***


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