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避難用作品投下スレ3

73見届けよう、悲しみに満ちた星の、終焉の日々を:2007/12/05(水) 04:25:12 ID:y9FfNGyY0
ああ、と犬飼は己の身勝手を笑う。
歪むから、世界は終わる。
ならば歪みを矯正し啓蒙し、終わらぬ世界を作ろう。
そんな考えが、どれほど傲慢であったか。
歪む世界は滅びて当然と、神ならぬ身の誰が断じられるものか。
そんなことを、歪み、滅ぼされる側に立って、初めて思うのだ。
身勝手以外の、何者でもなかった。

道化の英雄は、ここで死ぬ。
世界の導き手がそう決めたのだ。
栄光に続くはずの道は、閉ざされた。
次の世界では、次の道化が踊るのだろう。
いつか来る、綻びのない世界のために。
無数の道化が、屍の山を築くのだろう。

せめて今は、やがてこの星に生きるすべての命の上に訪れるであろう破滅が、
幾許かの慈悲をもって与えられんことを祈ろうと、思った。

「無駄だよ」

それをすら見越したように、少年が笑う。
少年の指が、キーの上で止まっていた。

「世界は苦悶の果て、原初に戻る」

それが破滅の引き金であることを、犬飼だけが知っていた。
審判の槌は、世界の誰にも知られぬまま、振り下ろされようとしていた。
目の前の景色が、歪んでいく。

「さよなら、犬飼」

別れの言葉と共に。
細い指が、キーを叩いた。


***


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