したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

避難用作品投下スレ3

715永遠の旅人:2008/06/11(水) 20:48:29 ID:e2cva8jo0
 初めての家族。
 自慢の家族。
 共に歩む昼。
 寄り添って眠る夜。

 暇があるときは、母が人形劇を教えてくれた。
 母は根気強く教えてくれた。

 俺もそんな母に応えたかった。
 笑わせたかった。
 初めて、人を笑わせたいと思うようになっていた。
 そうしてある夜、努力が実ったのか、はたまた『思いが通じた』のか人形が動き出した。手を触れることなく。

「うまくできたね」

 頭を撫でてもらったときの感触がひどく優しかったのを思い出す。
 初めての充足感だった。
 こんなにも胸が躍るのは、生まれて初めてだった。
 もっと笑う顔が見たい。
 それだけを願って人形を動かし続けた。

 だが……
 母はいなくなった。
 俺をひとり残して、忽然と消えてしまった。

 その直前まで、母が何を語っていたのかはおぼろげにしか思い出せない。
 ただ教えられた言葉の欠片は断片的に残っていた。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板