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避難用作品投下スレ3

692アイニミチル (3):2008/06/05(木) 15:18:13 ID:6nsg70320
 
目を見開き、飛び起きようとして、痛みに顔を顰める。
身体が、動かなかった。
金縛り―――否、手首に感じるのは冷たく硬い感触。
どうやら拘束されているようだった。
何が起こった。一体どうなっている。私は私に問いかける。
『青』が、違う、それは夢だ。過去の悪夢だ。思考が混濁している。
ぼんやりとした視界が次第にクリアになっていくのを待つ一秒がもどかしい。
状況を整理し思考を展開し現状を把握しろ、と自分に言い聞かせる。

思い出せ。
頼りない記憶の糸を手繰る。
美佐枝の血。紅い雨。
その光景を思い浮かべた瞬間、嫌な汗が全身からじくじくと沁み出すのがわかる。
晴香。巳間晴香。仇敵。
べったりと張り付いた肌着が冷たい。
蒼の世界。命の燃える色。マナ。
断片的な映像だけが、ぐるぐると脳裏を渦巻いている。

「―――お目覚めですか」

乱れた思考の麻を断ち切るような、怜悧な声。
まだはっきりとしない目を向ければ、そこには赤い光に照らされた、影二つ。

「……あま、の……?」

ひりひりと痛む咽喉からは、掠れた声だけが出た。
ぼやけた視界の中、捉えた顔には見覚えがあった。
天野美汐。強いGLの力を持ちながら、GLに与しない女。
重く雲の垂れ込める曇天の如き瞳が、弓のように細められて私を射貫いている。
微笑の形に歪んだその唇から、薄い舌がちろりと伸びた。
天野の舌が嘗め上げたのは、淡い曲線を描く肉付きのよい身体。
それが、びくりと震えた。


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