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避難用作品投下スレ3

656雅史アフター:2008/05/27(火) 23:47:21 ID:T.XnXA1I0
「……佐藤雅史、か」

そこに、決定打が雅史の心を打ちつける。
斧を脇に抱えた少女が、どこか左手を庇うようにしながら一冊のファイルを取り出したのだ。
ぱらぱらとめくり、雅史の顔とファイルを交互に見ながら少女は何かを確認する。
少女が口にしたのは、雅史の名前である。勿論雅史は、彼女に名乗った覚えなど無い。
少女が雅史の名を知ることができたのは……彼女の手にする、ファイルによる情報に他ならない。
そんなファイル、雅史が知る限りでは一つしかないはずだった。

―― 小屋の中にいるはずの、椋が持つ参加者の写真つきデータファイルだ。

何故、彼女がそんなものを持っているのか。
雅史の鼓動がさらに加速度を上げる。
増幅した嫌な予感が、雅史に警告を吐き続ける。
雅史の嗅覚がそこに信憑性をさらに上乗せし、必死に何かを伝えようとしていた。

真っ赤な少女。
漂う匂いの正体。
いまだに小屋から出てくる気配のない、椋。
その答えは。

「うわああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

フラッシュバックするは三つの遺体、温度の消えた少女達の面影が全て椋に塗り替えられる。
雅史は意図することなく、目の前の少女から逃げるよう方向など考えることなく走り出した。
死にたくないというただ一心、雅史の胸中を満たす思いはそれに他ならない。
背後を振り返ることもなく、とにかく前だけを見て雅史は足を動かした。
……心の中で、ひたすら椋に謝りながら。

「ふん、逃がすものか」


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