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避難用作品投下スレ3

655雅史アフター:2008/05/27(火) 23:46:39 ID:T.XnXA1I0
佇む雅史に気づいた少女の口調は、さっぱりしていた。
そこに温度を感じることができず、雅史は絶句するしかない。
少女の表情も、雅史が怯んだ理由だろう。
細められた瞳に宿る意志は強く、彼女が何かしらの覚悟を決めていることが簡単に窺える。
いや、だがもっと分かりやすい要素が、少女には他にも存在していた。

先ほど述べた少女の外見だ。
少女が身につけている制服は椋と同じもののはずなのに、どこか違っている。
それはどこか……ずばり、色だ。
オフホワイトなはずの少女の上着には、赤の絵の具が勢いよく引っかけられたかのような跡があった。

反芻する記憶、つい先ほどの風景が雅史の脳裏に甦る。
背中をずたずたにされた名も知らぬ琴音の傍で絶命していた少女も、今目の前の彼女と同じ制服を身に着けていた。
そして同じように、制服を深紅に染めていた。
勿論それは絵の具なんていう生易しいものではない。
「傷」という分かりやすい形が、亡くなっていた少女には目に見えるものとしてつけられていた。

では、今雅史の目の前にいる少女はどうだろうか。
ピンピンしている。彼女が重傷を負っているようには、到底見えないだろう。
しかし彼女が被ったものは、決して絵の具なはずではない。
臭いの時点で雅史にも理解できるはずだ、いや。
理解しなければ、いけないことだ。

よく見ると目の前の彼女の手には、年頃の少女が持つにはごつい作りの斧が握られている。
それから滴っている液は、恐らく少女の衣服に付着しているものと同じだろう。
可能性は、二つ。
砂浜の上、絶命していた彼女は「被害者」だった。
傷をつけられた側の人間だ。彼女の制服を濡らしているのは自身の血液だろう。
目の前の少女の制服は、彼女の血液だとは思えない。
それならば誰の血か。
彼女は「被害者」に見えない。
それならば、彼女は何なのか。


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