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避難用作品投下スレ3

644(さむいっス)/Song of tundra:2008/05/17(土) 07:22:24 ID:kJC83fK60
 何も言えない。
 矛盾、そう、決定的な矛盾に、彼女は気付いてしまったのだ。
 生き残れるのは二人ではない。殺し合いは最後の一人になるまで続く。
 残ったとして……最後に、あの三人で残ったとして。
 『誰が、誰を殺して、誰を生き残らせるのだろうか』?
 否、殺せるわけがない。『誰も殺せない』のだ。

 手にかけられるわけがない。かけがえのない友人を、その手で引き裂くことなど……あの学校で共に過ごしてきた時間を忘れて、手にかけることは……麻亜子でさえ、殺人を犯してきた麻亜子でさえ想像を絶する。
 たとえ殺す事ができたとして、その先に待っているのは孤独と絶望だ。
 友人を殺害して、死体を前にしながら優勝が決まる。その光景を想像しただけでも、麻亜子の心は壊れそうになる。
 自分でさえこうなのに、それよりも優しいささらと、貴明がそんなのに耐えられるはずがない。

 どの道、待ち受けているのは――破滅なのではないか?

「ぁ――」
 違う、そんなことはない。
 考えるな。朝霧麻亜子……いや、まーりゃんはやるべきことをやればいいだけなのだ。
 二人の為に、殺す、殺す、殺――
 ――殺して、それからどうなるというのだ?

 一度辿り着いてしまうと、もうその考えを打ち崩すことはできない。
 頑なに現実を拒もうとするほど、麻亜子は子供ではいられなかった。
 大人にならなければ、殺し合いに加担することはできなかった。
 故に……朝霧麻亜子は立ち止まる。
 殺し合いを進めることは、破滅だと気付いてしまったから。

「でも、そしたら、あたしは……」


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