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避難用作品投下スレ3

638(さむいっス)/Song of tundra:2008/05/17(土) 07:20:03 ID:kJC83fK60
 暑い。

 なんとなく、まーりゃんこと朝霧麻亜子はそう思っていた。
 山頂で怪物と戦った際にしたたか打ち付けた部分が熱を帯び、頭もまだぐらぐらする。

 咳は出てない。お医者さんにかかる必要なし。
 すんごく痛くもない。手術する必要もなし。
 人は……殺せてない。

 はぁ、と麻亜子はらしくもないため息をつく。巳間良祐を殺害して以降、全く戦果が上げられていない。
 愛を語る男女(芳野祐介と長森瑞佳)には逃げられる。柏木兄妹も、実質的に殺害した(可能性がある)のは篠塚弥生。
 そもそも、山中を練り歩いていたからかもしれないが、人に出会えてない。

「ぬーん」

 首を捻りながら、麻亜子は己の不調を考える。
 ――誰かに不運でも移されたかな?
 そう言えば、と巳間良祐は途中から返り討ちにされることが多くなった、と言っていたのを麻亜子は思い出す。

「ティンときた」

 間違いない。奴の不運を貰ってしまっているのだ。

「ふんっ! 亡霊のタタリごときにこのまーりゃんが屈すると思ったか! 退かぬ、媚びぬ、省みぬー! ……あいてて」

 気合を入れようとしても空回りになってしまう。日常でもありえるような鈍痛の連続が、麻亜子の気を削いでしまう。
 銃傷や、刺傷ではないのだ。本来とは別な意味での『リアル』な痛みが否が応にも麻亜子に日常を思い出させる。
 ただ馬鹿をやって、笑って、楽しかった日常。殺し合い、なんて考えるはずもなかった。
 ふと、麻亜子は疑問を持つ。


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