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避難用作品投下スレ3

632アイニミチル (2):2008/05/13(火) 14:09:41 ID:Iuv4GIu20
 
それにしても、と頬に手を当てたまま秋子が呟く。

「こういう場合、私はどういう反応をすればいいのでしょう。
 一度は誘いを断った方が、私たちの大切なゲストを連れて儀式の場まで侵入している、なんて」

困ったような口調だが、その目は笑っている。
悪戯じみた気安さが浮かぶ言葉に、美汐もまた微笑んで軽口を返した。

「悪の女帝が正義のヒロインを迎え撃つのです。
 ここは大仰な演説から、最後は高笑いで戦闘に突入するシーンではないでしょうか」
「困りました、スピーチの内容を考えていません」
「手下の幹部に命令するのも手ですね」
「あなたが連れてきて下さったのが、その幹部ですよ」
「困りましたね」
「ええ、困りました。……あとは戦闘、でしたか」

そこまでを言い合って、互いに視線を交わすと、二人は破顔する。
静かな、しかし温かな笑い声。
まるでうららかな陽射しの下でティータイムを楽しんでいるかのような、和やかな空気が流れていた。
やめておきましょう、と笑みを収めぬままに言ったのは美汐である。

「秋子さんの力は私に通じない。私の力もまた、秋子さんには届かない。
 お互い、嫌というほど判っていることです」
「そうですね。……それを理解するまでに何度『繰り返した』か、今では思い出すこともできませんけど」

ふと漏らしたようなその言葉は、笑みの延長線上にはない。
岩肌に沁み入るような細い声は、確かな翳を帯びていた。


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