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避難用作品投下スレ3

626Like a dream:2008/05/10(土) 21:08:36 ID:2rboGYVg0
 病的なまでの動作で、手を用いて穴を掘り返している。
 さく、さく。と、爪を地面に突き刺し、ブルドーザーのように土を削り取ろうとして、けれども失敗。
 僅かに土を払うばかりで、一向に穴は大きくならない。
 いや、そもそも人の手で墓を作れるほどの穴を掘れるわけがないのだ。
 まるで、おままごとだった。そしてそれ以上に、作業は永遠であった。

 ここは、どこなのだ?
 そんなわけの分からない疑問が、立ち尽くす往人の頭に浮かぶ。次いで、すぐに状況を表すべき言葉が浮かぶ。
 殺し合いの場ではない。ましてや平和な世界でもない。
 そう、地獄なのだ。咎人が果て無き贖罪を繰り返す、牢獄だった。

 往人は眩暈で倒れそうになる。
 人の赴く場所ではなかった。引き返し、すぐにでも新鮮な生を帯びた空気を吸い込まねばならない。
 こんなところにいては、気がおかしくなってしまう。
 それに目の前の人間は一目見るだけで観鈴ではないと分かる。

 引き返せ、引き返せ。それは逃避ではないのだと、往人の本能が告げる。
 往人の呼吸が荒くなる。胸が苦しくなり、汗が吹き出す。
 これ以上毒気に当たってはならぬ。国崎往人、お前の目的はここに来ることではないはずだ。つまり。目の前の『モノ』は、


 見捨てろ――


 往人の内の声が、そう囁くと同時か、少し遅れて、背後の気配に気付いたのか、虚ろな様子で振り向いた。

 色こそ違えど、腰まで真っ直ぐに伸びている流麗な髪。
 土や血の朱が汚していてもなお、輝きを失わない白い肌。
 深遠を閉じ込めたような、自然を映す瞳。
 少女ではなく、それは、女の子だった。

 身体を絡め取られた往人を一瞥すると、女の子が、口を開く。


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