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避難用作品投下スレ3
590
:
Trust
:2008/05/05(月) 17:17:13 ID:rjytJX2E0
「柳川さん。そちらのほうは何かありましたか?」
「いや、目ぼしい物はなにもない。……率直に聞きたい。例えば、ここで戦闘が起こったとする。それも結構大きな騒ぎだ。その場合、逃げるとしたらどうする?」
聞いて、これは今後の指針を決める質問に違いないと、有紀寧は目を細める。さて、どう答えるべきか。
有紀寧にしてみれば今は人が少ないこの村に留まることは、安全でもないが危険なわけでもない。寧ろ危険性だけで言えばここから移動を開始する方が明らかに危険だ。
仮に動くとしても平瀬村方面に行くのは避けたいところだ。
何故なら、平瀬村に通じるルートはいくつか存在し、分岐点も多い。即ち人の往来もまた多い、ということだからだ。
現状のメンバーだけで十分だと考えている有紀寧にはこれ以上の接触は困る。動くにしても、人がいなさそうな方向へ上手く誘導できればいい。
少し考えて、有紀寧は口を開く。
「……わたしなら、東の方角に逃げます。人が多いところで襲われたのなら、また人が多い村の方面に行こうとは思わないので……
ですが、もし一人だったとしたら、一人で行動するのも危険ですし、不安になります。
ですから、そんなに目立たないところで、でも少しくらいなら人がいそうなところ……例えば、灯台とか、神社とかに行きます。
事実、わたしはそう考えて神社の方へと向けて北上していましたから」
ふむ、と柳川は眼鏡の微妙なズレを直しながら、有紀寧の意見について考えているようであった。
「成程な」
柳川が尋ねたのは、実質藤林椋がどこに逃げるだろうかということについて他ならない。見たところ大した力もなさそうな宮沢有紀寧とは、ある意味で同種だと考えたからだ。
集団に襲われたら逃げ切れる確率は低くなる、が一人くらいなら振り切れる可能性は高い。共に行動するにしても大人数よりは少人数の方が裏切られる可能性は少なくなる……藤林椋も、そう考えるだろう。『微妙に人間がいそうな方向に逃げる』とはそういうことだ。
結論を出した柳川は、こう告げた。
「灯台の方向へ向かおう。神社から下ってきて、誰とも会わなかった……なら、誰かいるとすればそこかもしれない。少々遠いが、そっちはまだ大丈夫なのか。もう夜近くなっているが」
「まあ、そこに行けるくらいには……」
「有紀寧お姉ちゃんが大丈夫なら、私も大丈夫だよ」
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