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避難用作品投下スレ3

566終焉幻想:2008/05/01(木) 18:53:32 ID:997LS.yM0
「……そう」

手を押さえながら呟いたその瞳は酷薄で、笑顔はやっぱり、消えていた。
私の向けた嫌な気持ちが感染したみたいな、嫌な顔だった。
家の中ではごくたまに、それもほんの一瞬しか見せなかった顔が、私をじっと見つめていた。

「なら、いいわ。無理にとは言わない。……少し落ち着くまで、時間も必要でしょう」

言って踵を返した背中を、私はもう見ていなかった。
どこか目に付かないところに行ってくれるというのだから、辟易したような声も気にならない。
嫌な臭いが遠ざかっていく。
大きく深呼吸すると、私の中の嫌な気持ちも小さくなっていった。

「だけど……これだけは聞いて、楓」

立ち止まったような気配に、嫌な気持ちが黒雲のように湧き上がってくるのを感じて、
私はしゃがみ込む。抱えた膝は温かい。
乾いた血がぱりぱりと落ちていくのを眺めていた。
もう、あの人の声は聞きたくなかった。

「私はずっと、待っているから。家族はもう……この世でただ一人、あなただけなのよ」

だから、その言葉の意味が、すぐには理解できなかった。


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