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避難用作品投下スレ3
458
:
誰が為に
:2008/03/26(水) 16:17:44 ID:we92bBF.0
千鶴が、更に力を込めようとする。その真横から、新たに迫る人影があった。
「!?」
気付いて避けようとしたが、既に遅かった。芳野と鍔迫り合いしていたから、というのもあった。
折原浩平が、包丁を抱えて、突進してきていた。
勢いをつけられた包丁の刃が、千鶴に突き刺さる。
「っ……!!」
悲鳴を出すことは流石にしなかったが、日本にかける力が緩んでしまう。それを芳野が見逃すはずはなかった。
一歩下がると、思い切り体勢を低くし、アッパーのようにナイフを振り上げる。
しかし千鶴もさるもの、バックステップを利用しあっという間に数メートルの距離を取る。
「やって、くれるわね」
憎々しげに、千鶴は浩平を見据える。刺された左腕からはとめどなく血が流れ出し、既にウージーは強く握れなくなっている。
どうせ弾切れだ。
千鶴はそれを地面に打ち捨てると日本刀を横一文字に構え、二人に対峙する。
ちらりと横目で見れば、ウォプタルは苦しそうに呻いていて、足としての役割は期待できそうにない。
いいわ。これはハンデにしておいてあげる。真っ向勝負で屈服させてあげるから。
目が、細められる。それは紛れもなく、本気を出した『鬼』の様相を呈していた。
「……さっきは助かった」
「勘違いすんな、これはオレのリベンジなんだ。あいつは……オレが絶対に倒す。ちょっとした因縁もあるからな」
浩平は七海を屠り、杏に大怪我を負わせ、今またあかりを殺害した千鶴に対して絶対的な敵意を向けていた。
そして、またもや助けられ、何もできなかった自分への不甲斐なさ、無力さにも。
どうして、オレはいつもこうなんだ。
誰かに助けられて、理不尽にも当たり散らすだけで、また誰かに助けられて……
ふざけんな。
ここで決別する。
オレは、オレで借りを返せる人間になるんだ。クソガキなオレは、今日で卒業だ。
――えいえんのせかいなんて、ブッ壊してやる。
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