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避難用作品投下スレ3

347十一時十五分/i've been here, BattleJunkies.:2008/03/11(火) 03:18:09 ID:5RrSK1jw0
綾香の目が見開かれ、しかし完璧な空中姿勢からは文字通り手も足も出せず、その首筋から
剥き出しの岩肌へと吸い込まれていく。
次の瞬間、鈍い音が響いた。
大地に叩き付けられた延髄、掌底の衝撃を殺せずに砕かれた鼻、そして真っ直ぐに膝で貫かれた腰椎。
人体の要衝である三点に対する同時打撃。
相手を再起不能に追い込むことを目的とした破壊的な攻撃に、綾香が悶絶する。
かは、と綾香が小さな呼気を漏らすのを聞くより早く、葵が動いていた。
右膝を腰の上から腹部へとずらし、左の足を伸ばして膝を床から浮かせた、ニーオンザベリーの体勢を取る。
ぴったりとしたボディスーツを着込んだ綾香の襟は取れない。
故に左手で綾香の髪を掴み、延髄への衝撃で一瞬だけ意識を飛ばした綾香が回復するより前に右拳を固め、
正拳ではなく拳の側部、第二中手骨を叩き付ける様に、破裂したように血を流す綾香の鼻と目の間を目掛けて、
躊躇なく振り下ろす。
一撃、鮮血が飛び散る。
ニ撃、粘液が糸を引く。
三撃、音が、消えた。

「……!?」

固い手応え。
ごつ、という重い音と共に拳と岩肌の間で跳ね回っていた綾香の頭部を打ち砕かんとする三撃目のパウンドは、
その着弾の寸前において、止まっていた。
綾香の両の腕が十字の形をとって、葵の拳を受け止めていた。
ガードの向こう、綾香の目が己をねめつけているのを、葵は見た。
眼球の毛細血管が破裂したか真っ赤に充血した、それでも爛々と輝く瞳の力強さに、葵の背筋が凍る。
まずい、と直感する。
葵がその半生を賭けて打ち込んできた闘争の経験が警告を鳴らしていた。
体制を立て直そうとした瞬間、伸びきった葵の右腕が、がっちりと綾香の両手に掴まれていた。
迂闊、と後悔にも似た思考が過ぎった刹那、葵の視界が唐突に黒く染まる。
重い感触が葵の顔面を薙ぐと同時、ぐらりと重心が揺らぐ。
掴まれた右腕を軸に、円を描いて巻き込まれるような感覚。
警告。警告。警告。危険。危険。危険。
葵の脳裏に数秒後の自身の姿が浮かぶ。
見事なスイープから腕十字。折られる右腕。敗北。


***


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